縞馬は青い

縞馬は青い

映画とか、好きなもの

夏と死のにおいがした(2021年5月3日)

「ホウ・シャオシェン大特集」(k’s cinema)で『冬冬の夏休み』と『風櫃の少年』を観て、そのあとポレポレ東中野にうつって『海辺の彼女たち』を観た。 1984年に撮られた『冬冬の夏休み』がノスタルジーだけでなくある種の新鮮さを帯びているのは、現代でも廃…

読めないタイ料理(2021年5月2日)

まさかの連休1日目と同じことを繰り返す連休2日目の朝。そうならないようにこれ書いてるのに。観たい映画のチケット取れなくて二度寝して、起きたら雨が降っていた。起き上がれないまま『今ここにある危機とぼくの好感度について』第2話を観る。登場人物を多…

いちばん面白い、を積極的に乱用する(2021年5月1日)

連休はだいたいスタートダッシュをミスる。早く起きてもそのままベッドのなかで映画を観てたらうとうと二度寝をしたくなるし、よっしゃ映画予約するぞっと思ったら満席になっていた。今日はだらだらドラマを観ていただけで時が過ぎ、夕方には激しい雨に頭痛…

乾杯前の一節を言えた試しがない/すきなものノート(2021年3月10日)

「好きなものを書くの。嫌いなものを書いちゃだめだよ。嫌いなもののことを考えちゃだめなの。好きなもののことを、ずっとずっと考えるの」 ーー坂元裕二『Mother』第1話 「最近なんかあった?」と聞かれると十中八九いやな記憶を引っ張り出してしまうたちだ…

“情けない”という、愛おしい情動の顕れ/ユン・ダンビ『夏時間』

子どものころの夏休みというのは、お昼ごはんを食べたら無性にうとうとしてきて昼寝して、気づいたら夕方になっていた。起きたら夜ごはんが用意されていて、それを平らげてしまったらもう瞬く間に夜はふけ、昼寝と暑さのせいで眠くならないものの布団を被っ…

「愛」の映画と「恋」の映画(濱口竜介と今泉力哉についてのメモ)

濱口竜介監督の最新作『偶然と想像』がベルリン国際映画祭で最高賞に次ぐ審査員大賞(銀熊賞)を受賞!おめでたい!『寝ても覚めても』がカンヌで絶賛されながらも賞を得ることがなかったから、ついにハマグチが世界に認められた!という感慨にふけっている。…

先週食べたカルチャー(21年2月3週目)

「湯に浸かったてたらさ、なんかずっと見られてるなぁって思って。もうずっと見てくんの。その人のほう見返してみても、まだ見てて。なんか付いてんのかなぁ?って不思議に思ってたりしたら、マスクつけてることに気づいて。マスクつけながら温泉浸かってて…

「人生を捧げる」ことのできなさ/『花束みたいな恋をした』のラフさvs『劇場』『推し、燃ゆ』の切実さ

麦くんのことを「ファッションサブカル好き」と揶揄する人を見るとイラだちを感じてしまう一方で、実は自分もそうだと思っている。そして自分自身もそうなんじゃないかと恐怖する。彼には、生きていくうえで小説も映画もお笑いも演劇も実際には必要ではなか…

『花束みたいな恋をした』の世界に坂元裕二のドラマがあればどうなっていただろう

2018年1月16日。大学4回生の最後の冬だというのに僕はまだ就職活動をしていた。 それまでサボっていたというわけではなく、ただただ受けて落ちてを繰り返していた。深夜に梅田駅から高速バスで出発し、まだ空が薄明るい時間に東京駅八重洲口鍛冶橋駐車場に降…

先週食べたカルチャー(21.1.1-1.7)

今年は映画を観るときも漫画を読むときも、雰囲気で惹かれない場合は「作品のテーマ」をしっかり理解し興味をもったうえで作品選びをしたいと思う。そういうことを考えてないとすぐにFilmarksの点数に左右されてしまうので…。*1さいきん資本主義の怖さがよう…

2020年のポップカルチャーベスト50《「先週食べたカルチャー」年末編》

bsk00kw20-kohei.hatenablog.com 2020年のベスト映画については別エントリーで書いたので、ここではポップカルチャー全般について振り返ります。 2019年の4月くらいから「ポップカルチャーをむさぼり食らう」というブログを月一で書いていたのだけど、ちょっ…

2020年のベストムービー20選

今年観た映画。そう振り返ってみても、いまいちピンとこないのが正直なところだ。やっぱりどうしたって「これは2020年の作品たちだな」というまとまりがないというか。まだコロナがくる前、1月と2月、3月の前半くらいにとんでもなく傑作映画が集まっていたの…

先週食べたカルチャー(20年12月2週目)

先週摂取した映画、ライブ、ドラマ、演劇などの記録。 12月9日、CSテレ朝で生中継されていたアンジュルムの武道館公演をリアルタイムで観た。船木結さんの卒業コンサート(「アンジュルム コンサート2020 ~起承転結~ 船木結卒業スペシャル」)。「大好き」…

大九明子×じろう『甘いお酒でうがい』- 履き潰した靴に敬意を込めて

数週間前からスニーカーの先っぽに穴が空いていることに気づいていた。しかも右足と左足の両方に。もっというと1年くらい前から空いていた気がするけど、黒い靴に空いた穴を黒い糸で塞いだりしてなんとかやりすごしていた。目立つようなあれじゃないので誰も…

痛みと連帯の同時接続/大九明子『私をくいとめて』

昨日観て抱いた最大限の興奮を忘れないようにここに書いているだけなので、本作が気になっている人はこの後ろは読まずに公開を楽しみにしていただきたい。『勝手にふるえてろ』に続く綿矢りさ原作×大九明子監督の再タッグ作である本作は、刺さる人には刺さり…

流れる涙はほんものだろうか/大森立嗣『星の子』

南先生(岡田将生)の車で家まで送ってもらった夜、ちひろ(芦田愛菜)と親友のなべちゃん、その彼氏を含む同乗した4人はちひろの両親たちがしていた“ある光景”を目撃することになる。それを観て南先生は、「不審者が“2匹”いる」「完全に狂ってるな」と冷酷…

先週食べたカルチャー(20年9月2週目)

涼しい風にさらされると「外でのみてえ」としか思えなくなった。別に悲観的に言ってるわけではなくて、むしろ逆。夜風にあたりながら呑む酒ほど気持ちいいものはない。実はお酒の味って初めて呑んだときからずっと変わらず好きじゃないのに割といっぱい呑む…

先週食べたカルチャー(20年9月1週目)

だいたい先週くらいに摂取した映画や音楽、小説、漫画などの記録。更新できずに丸々1か月くらい経っちゃったけど、8月は夏らしい日々を送ろうと夏らしいカルチャーに必死で触れようとしていた。夏は好きな季節ランキング3位か4位くらいだけど、夏のカルチャ…

先週食べたカルチャー(20年7月3〜4週目)

先週あたりに観た映画、ドラマ、バラエティなどの記録。気づいたら最近またテレビ番組をよく観るようになったなぁと思うのだけど、これはテレビの面白さが再燃してきてるのか、ただ単に僕がここ1年くらい全然観てなくてテレビはずっと面白かったのか、どっち…

沙希ちゃんの瞳にうつる永田を見ていたーー後悔と絶望と祈りの映画『劇場』

「感情に従順である人間を僕は恐怖の対象として見ていたが、そういう人間こそ尊いと思うようになった」 どうしてこういうことを直接声に出して言えなかったのだろう。そんな日常の連続で成り立っているのが、『劇場』という映画なのだろう。本作のモノローグ…

先週食べたカルチャー(20年7月2週目)

先週観た映画、ドラマ、バラエティ、YouTube、コンサート、読んだ漫画の記録。めちゃくちゃ好きな漫画に出合って心が洗われたのと、久しぶりにハロプロのコンサートに行けて幸福感に満たされた1週間だった。 * * * 劇団・ヨーロッパ企画製作の映画『ドロ…

先週食べたカルチャー(20年7月1週目あたり)

先週観た映画、ドラマ、バラエティ、YouTube、ラジオの記録。いじめ加害者を描いた映画『許された子どもたち』とNetflixの『呪怨:呪いの家』にやられた。下に書いてないのだと、霜降りせいやの影響で今さらMCバトルにハマってしまってる。言葉のあんな操り…

先週食べたカルチャー(20年6月4週目あたり)

先週観たバラエティ、映画、ドラマ、雑誌、YouTubeの記録。 * * * 2週だけのかまいたち冠特番『かまいガチ』の1週目が放送されていて(2週目は7月4日深夜)、相手を引き立たせながら自分たちも引き立つという中々かまいたちらしさが出ている番組だった。…

先週食べたカルチャー(20年6月2〜3週目あたり)

「ポップカルチャーをむさぼり食らう」というエントリーを1年以上、毎月やってきたのだけど、1か月のことを一度に振り返ることの難しさを感じつつあったので週一に変えようと思う。先週観て印象的だった映画、テレビ、ラジオ、雑誌、YouTubeの記録。 * * *…

恋の彷徨者たちの足跡ーー今泉力哉作品における“迷子”と“交差点”についての覚書(『街の上で』論序論)

今泉力哉監督の最新作『街の上で』が公開されたタイミングで書こうと思っていたこと、来春以降に延期となってしまったので一旦この機会にまとめてみました。世紀の大傑作映画につながる、今泉映画論の序論的扱いです。それにしても『街の上で』のTシャツ(大…

2020年5月のカルチャー雑記②リモート映像作品の救い

世間で流行りの『愛の不時着』『梨泰院クラス』(第1話だけ観た)には手を伸ばさず、『ハーフ・オブ・イット』も観たけど微妙にハマらなかったり、『鬼滅の刃』も『約ネバ』も『ヒロアカ』もアニメには興味をそそられなかったり、コロナ以前にかろうじて製作…

外を覗くこと、扉を開くこと、書くこと……『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』雑感

『ストーリー・オブ・マイライフ』はさまざまな“関係性”を描いた映画である。僕は若草物語の原作を知らなかったから、最初はその登場人物の多さと人物関係がわからなくてちょっと焦った。でもヒロインである次女・ジョー(シアーシャ・ローナン)を中心とし…

2020年5月のカルチャー雑記①リアリティショーとお笑い

信じられないスピードで情報と流行が入れ替わる現代にあって、今回のコロナは強制的に時流にストップがかかるいい機会だと最初の頃は楽観視していた。でもそんなことはあり得なくて、排水溝をなくした浴槽のなかに水が流れ込み、そして溢れ出ていくのをただ…

ポップカルチャーをむさぼり食らう(2020年4月)

映画館に通えなくなってから早1か月半くらい。それまでは週末に2〜4本の新作映画を観ていた生活が一変し、演劇もライブも軒並みなくなって、世界中の人々と同じように僕も一日中家にこもっている。ふと気づくと1か月以上、対面で知り合いと会ってない。仕事…

東京で“迷子”になる人々/今泉力哉『退屈な日々にさようならを』

「でも、生きてたでしょ?」と何度も問う松本まりかが印象的だ。今はもういないけど、たしかにあのとき生きていて、生きることと死ぬことが肯定でも否定でもなくすべて等価に見つめられている感覚。生と死、双子、福島と東京のふたつの顔、同性愛やバイセク…