縞馬は青い

縞馬は青い

映画とかドラマとか、好きなもの

映画

東京で“迷子”になる人々/今泉力哉『退屈な日々にさようならを』

「でも、生きてたでしょ?」と何度も問う松本まりかが印象的だ。今はもういないけど、たしかにあのとき生きていて、生きることと死ぬことが肯定でも否定でもなくすべて等価に見つめられている感覚。生と死、双子、福島と東京のふたつの顔、同性愛やバイセク…

ただひたすらに幸せなーー『架空OL日記』が晴らす“月曜日の憂鬱”

YouTuberのモーニングルーティン動画ばりに長尺でみせる〈私〉(バカリズム)の朝の日常風景。例えば、洗面所の蛇口をひねってからトイレに行くという決まりきった日々の動線(用を足している間に水がお湯になっているという算段)に現れているように、どんな…

寄生虫は輪廻のなかを蠢く/ポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』

(※物語の展開・ラストにがっつり触れるレビューなのでどうか観賞後にお読みください) 「計画を立てると必ず、人生そのとおりにいかなくなる。絶対失敗しない計画は、“無計画”であることだ」 本作においてさまざまな人物から発せられた「計画はあるの?」と…

ノア・バームバック『マリッジ・ストーリー』|その言葉で変わってしまうほど過去はヤワじゃないはず

言葉はいとも簡単に過去を改変してしまう。ときに痛々しく、またあるときには優しく包み込むように。そうした「言葉の鋭敏さ」をひしひしと痛感させられるのが、『マリッジ・ストーリー』という映画がもつ魅力(、あるいは恐ろしさ)のひとつだと思う。 ◆言…

My Best Films of 2019

兵庫に里帰りしてもわざわざ京都(みなみ会館)まで行って『象は静かに座っている』(4時間弱の超大作)を観にいったり、実家では今年見逃した作品をストリーミング配信でカバーしたり、2019年は最後の最後まで映画を観切った。鑑賞数はだいたい110本くらい…

言霊と光、心を導いて/中川龍太郎『わたしは光をにぎっている』

確信的な 朝を何度も迎えにゆくために/これからもずっと どうにかしなくちゃ/君をおどろかせていたい/確信的だ 今日は必ずいいことあるはずだ/追いかけたバスが待っていてくれた/かっこいいまま ここでさよなら ーー「Home Alone」 恋しい日々を抱きし…

今泉力哉『街の上で』ーー下北沢という街に生きる人間たちの、“ストレートな想い”の物語

10月13日(日)に開催された下北沢映画祭にて、今泉力哉監督の長編映画最新作『街の上で』がワールドプレミア上映を迎えた。台風によって開催も危ぶまれたなか、一本の映画は堂々と産声を上げながら誕生し、会場に響き渡っていた笑い声や感嘆の声から察すれ…

世界が鳴ってるーー抑圧と開放の映画『蜜蜂と遠雷』

「音楽になったね」 耳をすましてみると、外でポチャンと音がした。なんだか雨が降ってきたみたい。その音に合わせて鍵盤を一音、また一音とはじいてみる。すると心地のいいリズムが、私とお母さんの心が高鳴り出す瞬間を捉える。 いつしか一音は連続して音…

僕たちはどこで生きていく?/ジョシュ・クーリー『トイストーリー4』

おもちゃだって生きる場所を選んでもいい。与えられた居場所に居続けるのもひとつの生き方だし、新しい居場所を求めるのもまたひとつの道。何よりも重要なのは、そこがほんとうの自分の居場所なのかどうか、心のうちがハッキリとしていることではないか。「…

赤い風船=関水渚がもたらす映画の奇跡/石井裕也『町田くんの世界』

いつになく感情的なレビューになります。好きすぎて好きすぎて、どうにかなっちゃうんじゃないかってくらい好きな映画だ。この作品を構成するすべての要素が好きだから、この感想だけですべてを補えそうにはない。特に好きだった、「ファンタジーがもたらす…

境界線を溶かす「音楽」という魔法ーー映画『さよならくちびる』で反復される“不在”と“存在”の意味

「一緒に音楽やらない?」 そういきなり声をかけるハルと、彼女がつくったカレーを食べて涙を流すレオ。あるいは楽屋の椅子を蹴っ飛ばすシマまで。本作が特異的なのは、常に「行動」が先立っていることだ。彼女たち3人の性格や人物背景、生い立ちを知らせる…

山田テルコはひとり静かに越境するーー映画『愛がなんだ』におけるアシ(足)をなくしたテルコについて

「山田さん、うちくる?」 マモちゃんはそうキラーワードを放って颯爽とタクシーに乗り込み、「世田谷代田まで」と運転手に告げる。そして窓越しにおいでおいでのサインを受けたテルコは、エサに飛びつく犬のようにタクシーへと吸い込まれていく。 呼び出さ…

嫌いになり方がわからない/今泉力哉『愛がなんだ』

2019.4.30 テアトル新宿 三角形の上を動く点Pは定理にしたがってずっと点Qを追いかけているけれど、どこまで行っても同じになることができない。速度を変えたり先回りして待っていても、そこに彼の姿はない。山田テルコは一生、田中守にはなれない。 幕開け…

世界が広がっていく感覚/三宅唱『ワイルドツアー』

2019.3.31 ユーロスペース 『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督の最新作は、芸術とテクノロジーを用いた新しい表現を探究する山口情報芸術センター(YCAM)のプロジェクトによって生まれた作品。ティーンエイジャーたちの冒険と恋愛模様を描いたみずみずしい…

手さぐりで愛だけを探してる/濱口竜介『THE DEPTHS』

2019.3.26 下高井戸シネマ わからない。暗すぎて何も見えない。果たしてあなたはこちらが見えているのだろうか。それさえも、何もわからない。出会ったときはあんなにはっきりと、少年が手を離した風船をちょっぴりジャンプして取ってあげるあなたの姿が見え…

人生の豊かさについて/エドワード・ヤン『ヤンヤン 夏の想い出』

2018.6.12 先日報道ステーションに是枝監督がゲスト出演していて、その時に語っていた言葉はどれもが印象的だった。その中でもキャスターからの「どうして家族を撮るんですか」という問いに対する答え。 「家族ってやっぱりおもしろいんですよ。ひとりの男性…

静から動への暴力的転換/濱口竜介『PASSION』

2019.3.17 下高井戸シネマ 半年ぶりくらい2度目の鑑賞だけど、何度見ても理性を失いそうになるくらい惹かれてしまう映画だ。濱口竜介の作品はすべてそう。非現実的な会話の応酬によって登場人物たちが連鎖的に突き動かされ、あるいはそもそも“行動的な人間”…

踊るしかないこんな夜は/二宮健『疑惑とダンス』

2019.3.3/3.10 ユーロスペース 『チワワちゃん』で岡崎京子の原作をセンセーショナルに現代へとアップデートしてみせた平成生まれの天才監督・二宮健がまたやってくれた。あくまでも個人的な意見だけど、2018年の日本映画界が濱口竜介と三宅唱の1年だったと…

好きな三浦透子を集めてみた

出ている俳優で映画を選んでいた時期が僕にもあった。北乃きい、長澤まさみ、吉高由里子が出ている映画を漁っていたのは中学生くらいの時だったろうか。本格的に映画を見るようになってからはだんだん監督で映画を選ぶようになってきて、好きな俳優が出演し…

厚い雲に覆われた日常/片山慎三『岬の兄妹』

2019.3.1 イオンシネマ板橋 上京する1年前にそれまでの22年間住んでいた田舎には、映画館というとイオンシネマ(昔はワーナーマイカルシネマズだった)がひとつだけあった。たいてい大作しかかからないから、シネフィリーをくゆらせだした大学生の終わりごろ…

『クワイエット・プレイス』との対比に見る「家族の生と死」/グザヴィエ・ルグラン『ジュリアン』

2019.1.26 シネマカリテ 『サスペリア』を鑑賞するにはまだ心の準備が足りないので、とりあえず気になっていたこちらを先に観た。それが、家族映画だと思っていたらとんでもホラー映画だったという、サスペリアよりも怖い可能性がある映画『ジュリアン』。こ…

ひかりの道筋をたどって/杉田協士『ひかりの歌』

2019.1.18 ユーロスペース bsk00kw20-kohei.hatenablog.com ひとつの映画について2度ブログを書くのは初めてのことだ。基本的に、一回長文を連ねてしまうとそれで納得してしまい読み直して的を得ていない内容にムズムズしても新たに文を書くなんてめんどくさ…

背景音のささやかさ/広瀬奈々子『夜明け』

2019.1.19 新宿ピカデリー かなり偉そうな批評になってしまいそうな気がするので最初にひとつだけ。舞台挨拶に登壇した広瀬奈々子監督がかっこよすぎて、まるで俳優のような佇まいと低めの美声を持つ姿に見とれてしまった。しかし、映画を撮るにしてはなんだ…

デフォルメされた青春の死/二宮健『チワワちゃん』

2019.1.19 新宿バルト9 あまりにも鮮烈で、めまいがした。青春時代というのはこうも地獄のような禍々しい見た目をしていて、そこに棲む悪魔はこんなにも美しい鮮血を心に垂れ流し続けているのかと考えると、言いようもない感情に襲われ、ただただ何色でもな…

光は乱反射して暗闇を彷徨いながら、やがて必要な場所を照らしだす/杉田協士『ひかりの歌』

2019.1.13 ユーロスペース 性格柄、映画は自分の知らないことや見たことがないものを見せられたときに大きな感動を覚えることが多い。でもこの映画はそれとは正反対で「見たことがある風景」や「知っている感情」で埋め尽くされているのに、ものすごく心に刺…

My Best Films of 2018

今年ももう終わりですね〜。年間ベストを出すために(そして他の方の年間ベストを見てうわ〜わかるわ〜と頷いたり、へ〜そんなん入ってくんねや〜と驚いたりするために)日々映画館に通ってるフシもあるので、この時期はすごく楽しい。今年は個人的にいろん…

まどろみのなかで出会ったふたり/関根光才『生きてるだけで、愛。』

夜を描く映画ってなんだかものすごく惹かれてしまう。直近でいうと『きみの鳥はうたえる』がそうだったように、本作はもうポスターを見ただけで好きな映画なんだろうなと確信していた。結果すごく好きな映画だった。 夜は暗い。ちょっと怖くなるくらいに夜は…

戒めの映画日記ーー薄給社会人1年生のくせに1ヶ月で16本も映画館鑑賞してしまったことへの。

過ぎてしまったことは仕方がない。と、いきなり開き直る。なんかお金の減り方が半端ないなと思って数えてみたら、今月16回も映画館に通っていたのだ。数えるまでは10本くらいだと思ってたのに、まぁそれでもやばいのだけど。これはお母さんが知ったら驚かれ…

“ガール・ミーツ・ガール映画”が救う世界──『少女邂逅』から『カランコエの花』、そして『21世紀の女の子』へ

サムネイルはロロという劇団の演劇で少女2人の物語を描いた作品。 映画以外にもガールミーツガールが暑かった今年の夏 今年の日本映画界、すごくないっすか? 2016年の勢いをもう一度取り戻しているように見えるのだけど、あの時とも少し違うなっと思うのは…

「天才」と「凡人」とその狭間/月川翔『響 -HIBIKI–』

映画『響-HIBIKI-』が意外なる傑作だった。監督は『君の膵臓をたべたい』、『となりの怪物くん』、『センセイ君主』と、漫画や小説原作を実写化してきた月川翔。どれも手放しで絶賛できる類の作品ではないのだけど、キミスイでは過去の思い出と相まってしっ…