縞馬は青い

縞馬は青い

映画とか、好きなもの

先週食べたカルチャー(20年9月1週目)

だいたい先週くらいに摂取した映画や音楽、小説、漫画などの記録。更新できずに丸々1か月くらい経っちゃったけど、8月は夏らしい日々を送ろうと夏らしいカルチャーに必死で触れようとしていた。夏は好きな季節ランキング3位か4位くらいだけど、夏のカルチャーはめちゃくちゃ好きなのだ。

 

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夏の作品といえば今年は真っ先に思い浮かぶのが、さとうもか『GLINTS』だった。“一瞬の煌めき”という意味のタイトルが示すように、夏らしいきらきらを凝縮した「ひと夏の恋にまつわる物語」を集めたアルバム。どの曲もテイストが違うくてとびきりポップで最高なんだけど、「Poolside」と「My friend」がとくに好き。「Poolside」の“永遠に終わりの見えない海”と“泳ぐ前からゴールの見えるプール”という対比のモチーフは、『A子さんの恋人』での海の描写と共通点があるとある方が言っていて、確かにって思った。夏の暑い日は涼しい部屋のなかでこればっかり聴いていた。

 

8月はエビ中にも多く接した記憶がある。昨年の夏ライブDVD(ファミえん)を買って涼しげな水演出と彼女たちの歌声でデトックスして、8月中旬ごろにあった無観客ライブ配信も観た。『playlist』から聴きはじめた超新参者だから、そのパフォーマンスを観れてすごいうれしかったな〜。Nizi Projectとかを観ていて改めて思ったけど、アイドルってほんとうにすごい。彼女たちの体力と精神力に支えられている。

まっとうに王道のYouTubeをしながら独特の捻りを加えてくるかまいたちYouTubeチャンネルが好き。最近だとTHE FIRST TAKEを真似た動画が、ほかの芸人やYouTuberのオマージュ動画とは明らかに一線を画していた(見取り図も面白かった)。山内のすべらない話もっと聞きたい〜。

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夏らしい映画みたいね〜、と彼女と話し合って『サマーストーリー』『夏物語』という、タイトル意味一緒だしめちゃくちゃ夏っぽい映画をTSUTAYAで借りてきた。昨年はこの時期にフランスのバカンス映画を知ってハマったんだけど、そこからエリック・ロメールに陶酔したりして、今年の夏はロメールの映画ばかり観ていたいと思っていた。でもこれが、TSUTAYAでもVHSしか置いてないくらいロメールの映画ってレアなんすよね。だからもう思い切ってメルカリでVHSデッキ買っちゃいました。イギリスの映画『サマーストーリー』はびっくりするくらい“夏感”がなくって、ベタベタに王道でありながらラストがかなり暗い謎すぎる恋愛映画。『夏物語』は男性主人公がバカンスに訪れた地で3人の女性に惹かれていく、ロメール感たっぷりの求めていた映画だった。『海辺のポーリーヌ』のポーリーヌ役の女優が10数年たった本作にも出ていて、彼女を観れただけでも満足。会話劇と恋愛劇がノリに乗っていて、これを70歳くらいの巨匠が撮っていたというところには驚きしかない。今泉力哉監督とかにも、おじいちゃんになってもこういう映画撮り続けてほしいな。

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ミニシアターエイド基金のリターン、サンクスシアターで今泉力哉監督の処女作っぽい『此の糸』という短編を観た。2005年に撮られた作品。びっくりするほど今泉映画だった。主人公らしい男性は今泉力哉本人が演じていて、彼には好きな女性がいる。その女性は別の男性が好きで、その男性は主人公の親友。「好き」が近場でぐるっと一周してしまうおなじみすぎるやつ。やっぱ端々の会話の自然さがすごいなって思った。

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映画館で観た映画のなかから特別印象に残った作品をいくつか。『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は前評判どおり右肩上がりに最高が更新されていく、とても現代的なアメリカ青春映画。現代的な、というのは、スクールカーストみたいなものがほぼ存在せず限りなく多様性が認められているように見えるところ。うちの高校も案外あんな感じだったなとは思いつつ、とびきり明るい映画だからこそ、やはりああいう世界観からこぼれ落ちてしまう存在がいることも気になってはくる。青春映画はこういうのとめちゃくちゃ社会的なやつの両軸でいいな。中間はいらない。『思い、思われ、ふり、ふられ』『のぼる小寺さん』は前者だったので好き、『君が世界のはじまり』はどちらでもなかったのでうまくハマれなかった。

k's cinemaで『れいこいるか』という映画を観た。今泉監督が激推ししていたやつ。95年の阪神淡路大震災がテーマになっていて、その震災で娘を失った夫婦のその後の25年間を描いた作品。アンチドラマチックというか、映画が逃れられない物語性やフィクション性に真っ向から抗おうとしている作品なので、こういうテーマだとありがちなわかりやすく泣けるようなシーンは本作では全くなかった。でもだからこそ、震災やそこに生きる人物を近くに感じることができたんだよな。95年に神戸近郊で生まれた僕にとって大震災は意外と遠い存在だったから、脚色の薄いこの映画を観ている時間だけはすっと身体に染み込んでいく感じがした。どんどん巡る季節、変わらないものの存在、消えない記憶。追いかけっこをしているみたいで、ずっと追いつくことができない。でもそれでいい。

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映画の日に観た『ソワレ』に、今もまだ胸がざわつくほど惹かれている。ストーリーは破綻しまくっていると思う。『れいこいるか』なんかに感動してすぐに観たら尚更。でも、本作は荒唐無稽な逃避行劇が軸としてあるのだけど、このストーリーがなければ主人公ふたりがあれだけ輝くことはなかったのかもしれないな、なんて思ったりもする。本作の主演、村上虹郎と芋生悠が素晴らしすぎた。いつ消えてしまうかわからないほどまばゆい光を放つふたりが、とにかく美しすぎたのだ。映像もバシバシ決まってたんだよな。村上虹郎は何もしなくても売れるだろうけど、芋生悠さんの今後はめちゃくちゃ楽しみ。

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やっと『Nizi Project』を観た。シーズン1が少しかったるくて止まってたので韓国合宿のシーズン2から観たらどんどんハマってしまった。

「僕が今までに指摘したことは全部忘れて、思う存分楽しんでください」このJ.Y.Parkの言葉にすごく引っ掛かりを感じた。そんなの無理じゃね?って。でも驚くのは、ひとたび彼女たちのパフォーマンスが始まると、そういうことを全部忘れるくらい画面に釘付けになってしまうことだった。思えばアイドルというのはそういう存在である。裏には途方もない努力があって、苦労があって、もしかしたらとても舞台に立てるコンディションではないかもしれないけれど、それでも立っている。その裏側をファンが知ることはできないし、もしできたとしたら、おそらく冷めてしまう。Nizi Projectには、アイドルがデビューするまでの大変な過程(のほんの一部分)が映し出されている。だからその姿を想いながら、舞台上でパフォーマンスする彼女たちを観て「よく頑張ったねぇ」と涙することも可能だ。でも僕は、彼女たちがその苦労を“全部忘れて”楽しんでいる以上、こちら側もただそこにある煌めきだけを追っていくべきなんだろうと、そんなことを思った。それでもやっぱり、ちょっと感極まってしまうんだろうけど。

芥川賞受賞の破局、読みました。主人公の思考が鮮明に描かれすぎていてめちゃくちゃ気持ち悪かったけど、ところどころ共感の余地もあるし、同世代を捉えた作品としてこれだけ解像度の高いものはないなと思いながら夢中になって一気読みしてしまった。芥川賞受賞会見で本作の著者・遠野遥が述べたコメントも含めて好きだ。

「全然、自分ではそんな変なキャラクターにしようとか思ってなくて、逆に、もう人によってはけっこう、気持ち悪いとか、共感できないとか、怖いとかおっしゃるんですけど、そんなふうに書いたんじゃないのになって思いますね。もう少し親しみを持っていただけたらと思います」

AI的に導かれる思考回路は、データ社会の進行する現代において、まったく人ごとではない。現代を生きるマイノリティの詳細すぎる自分考察がこの作品にはあって、それは世界と地続きだと思った。

破局

破局

 

Amazonの評価がめちゃくちゃ高い『明け方の若者たち』も短かったのですぐ読めた。タイトルが物語っているのだけど、なんとなく没個性な感じが否めない作品だ(とくに『破局』を読んだあとだと…)。朝井リョウの劣化版みたいな若者語りが主軸としてあるのだけど、こと恋愛の描写に関してはそれなりに純度が高いなと思った。しっかり昔好きだった女性のことを思い出してしまったし。同じ業界にいながらカツセマサヒコという人物をまったく存じ上げなかったのだけど(そもそも僕は業界のことをまったく知らない)、ライターが書いてるというだけでちょっと鼻につく部分はありますよね(笑)。負け惜しみ100%の感想なんだけど。

明け方の若者たち (幻冬舎単行本)

明け方の若者たち (幻冬舎単行本)

 

買っていたけどずっと読めていなかった和山やまさんの漫画『夢中さ、きみに。』女の園の星』第1巻を読んだ。面白い〜〜…。男子高が舞台の前者と女子高が舞台の後者。どっちも愛しかなくて最高なんだけど、『女の園の星』はとくにすごいよかったなぁ。最初は表紙に描かれている先生が女子校の中でもてはやされる作品なのかなって想像していたら、別にそんなことなくてまっとうにイジられたり、一定の距離感のあるコミュニケーションが描かれていたり、女子校って未知の世界だけどすごく想像の範囲内の話になってる。想像の範囲内だけど、ともかくギャグセンが高くて、終始ケタケタ笑いながら読んでいた。(P91の)無言のコマが面白い作品は最強だ。

『MIU404』の最終話。一度間違ったピタゴラスイッチをやり直す、第6話の繰り返しのような展開を堂々とやってのけた。捕まった久住が病院で最後「俺はお前たちの物語にはならない」と言う。罪を犯した原因をあるひとつの過去に結びつけるという、物語の強引さに長らくドラマや映画は引っ張られてきたわけだけど、本作はそう結実しない。伊吹はガマさんに会えていないし、ハムちゃんは自由な生活を完全に取り戻したわけではないだろう。その宙ぶらりんな状態に意味を持たせるということ。野木亜紀子のドラマに描かれるその続きをこれからも楽しみにしたい。

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