泥棒みたい
月曜日ご褒美あげたい敷地内立ち入り禁止を走り抜けて
赤ちゃんに話してるような口調で聞かれ三倍に膨れ上がった柿
日焼けより歪んだ顔が跡になるそれを儚さと定義しよう
毛量のおおさはお父さんに似て、一拍おくのは叔母さんかもね
黒ひげはもともと助けるためのゲームわたしのうそを信じてみてよ
電話よりメールの方が優しい人その逆もまた泥棒みたい
一度もつかわなかったカギ送ります 脇毛が急に気持ち悪い
勢いよく喋り出したはいいものの先の言葉がしゃぼんとはじけた
比喩言い換え誇張か卑下で表現されたあなたの口にハニーディップを
気持ち悪い悪意どもは後方のエスカレーターで成仏して
重心を見つめて歩くXY あ/ぶつかる/ごめんなさい/ごめ
恋リアのスタジオメンバーみんな基本にやにやしてるね自分もそうね
カメラの出番なし出番あるときも忘れてしまう彼女がいない
暗き浜のなおも明るい灯台の映画はまさに死の飛行経路
降りる前から乗ってくるご両人にはプラスチック・スナイパー
暑い中どうもありがとうございます秋用意して待ってました
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7月29日。きっとどこかで花火が上がるのだろう日に、花火が上がらない街を歩いてる。ループに乗った浴衣の人が通り過ぎる。ハチみたいな音が近づいてきてベローチェに逃げ込んだ。移転したBunkamuraル・シネマでライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『不安は魂を食いつくす』を観る。一度は言ってみたい監督名、初めて言えました。かなり好きなテンションの映画。掃除婦の未亡人エミと移民労働者アリがお互いの孤独に寄り添い合う話で、人種差別描写が思ったより色濃い。人はいつだって孤独であるし、それは似たような人と補い合おうとしても結局は拭いされないものだけど、違いや虚しさを認めたうえでずっと最初の優しさを忘れないまま謙虚な1と1であり続けることはできる。でも好きという感情は人を傲慢にさせて、それはそれで楽しいよね。