縞馬は青い

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映画とかドラマとか、好きなもの

ゆっくりしたい(2021年12月12日)

スナフキンズが『M-1 2021』3回戦と準々決勝で披露したネタより抜粋。

「いきなりなんやけど、今度合コンあんねんけど、くる?」

「(食い気味に)いく〜〜〜」

「はや〜〜」

「え、行っていいん?」

「ええよ」

「まじで?」

「おん」

「(両手を高く上げて)やったぁ!!! 合コン行ける〜〜〜ラッキ〜〜」

 

「来週の土曜日なんやけど」

「え、来週の土曜日?」

「おう」

「うわ最悪やぁ……俺その日無理や…予定入ってるわ…」

「まじで?」

 

「ちなみになんやけど、その予定って、なんの予定入ってんの?」

「あぁ…その日はちょっと………ゆっくりしようかなぁと思ってて…」

「え? …ゆっくり?」

「うん、家でゆっくり」

 

「いや、ゆっくりって、具体的になにすんの?」

「…それ本気で言ってる? いやいやいや、そんなんいちいち決めてたら、ゆっくりできひんから!!」

「いやでも、ゆっくりってそんなんいつでもいいやん! 他の日にーー

「俺は!! 来週の土曜日に!! ゆっくりしたいのお!!!!!」

スナフキンズはちょっと前にコントのネタで初めて見たのだけど、着眼点がほんとうに素晴らしくて好きなコンビだ。このネタも初めて見たとき大爆笑した。合コンに誘うやつと、誘われてけっこう嬉しそうなやつ。でも来週の土曜日は「ゆっくりする」という予定があるからどうしてもいけないんだ。「ゆっくりしたい」という言葉を発するときのボケの松永の動きが赤ちゃんみたいになってしまうのは、その切実さと人間の本来あるべき姿を物語っている。抜粋した内容のあとにツッコミの朝地が「子どもやん」とたしなめるように、この松永は幼児の心情に戻ってしまっているともとれるのだけど、「目的もなくゆっくりする」ということの尊さを僕はこれを見て思い出した。

 

文學界』の最新号が面白いとの噂で初めて買ったのだけど、哲学者・國分功一郎×オードリー・若林正恭の対談がほんとうに面白かった。ライターか編集者が付けたのだろうけど、対談のメインキャッチは「目的もなく遊び続けろ」。これが端的に内容を現している。スナフキンズのネタをまた唐突に思い出したのはこの対談を読んだからだった。

いまの大学生は忙しすぎる、もっと暇をつくるべきだ。という話の流れから、若林が『タモリ倶楽部』の収録で出会った「漁の投網をきれいに投げられるように、公園で練習している人」の話をする。若林は「これ、魚が取れたときが快楽の絶頂のところじゃないですか。なんのためにやってるの」とその人に質問したらしいのだけど、そうするとタモリさんに怒られたんだと。

若林「実際に自分で投げてみてよさが分かりました。なかなかうまくいかなくて、あ、今のが一番きれいだってなると気持ちいい。投網は魚を取ることを目的としているはずであるけど、そこではもう投網という手段だけが残ってるんですよね。」

國分はこれに対して、ヴァルター・ベンヤミンという人が言っていた「目的なき手段」という言葉を引いてみる。

國分「公園での投網は目的なき純粋な手段ですよね。何の目的も達成しない、ただの手段。つまり遊びですよね。でも遊びを忘れたら、人間はダメになっちゃう。」

若林「言葉を喋る前の赤ちゃんがずっとティッシュを出しているのとかありますよね。それが楽しい。いないいないばあとかもそうだし、手段だけっていうのは人の根源的な楽しみなのかもしれないですね。」


この1か月間くらいほとんど休みもなく働いていて心底疲れていたからか、久しぶりの休みだった土曜日の朝にゆっくりしながらこれを読んでいて妙に心に刺さってしまった感じがある。ちょっと前に自分の毛が抜け落ちて禿げる夢を見たのだけど、恋人にその話をしたら「夢占いでは心身共に疲れていることの現れ」だと言われた。占いは信じないけど、実際ごはんも適当だし睡眠は取れてるけど毎日終電で会社から帰って酒飲んで無理やり寝て起きてたから明らかによいサイクルではなかった。僕は元来的にゆっくりしつつサボりつつ生きていきたい性分だからなおのこと、この状況への恨みがありつつも、仕事はとりあえず終わるまでやるしかないから頑張っていた。それでようやくひと段落したタイミングで恋人とディズニーシーに行く予約を平日にしていたから無事に行って楽しんだ。雨風が激しかったのは残念だったものの、ひさしぶりにはしゃげたと思う。その次の日くらいに今度は恋人が禿げてる夢を見てしまってそのことも伝えたのだけど、ハッとして夢占いを見てみると、恋人への気持ちが薄れつつある証拠、とかいう文章が出やがった。まったくそんな自覚はなくてむしろ大好きなのだけど、この夢のことは彼女に伝えるべきではなかった。きっと夢占い調べるだろうから。忙しさよりもこういうのがいちばんしんどい。でもきっと忙しいから余裕がなくて結果的にこんな状況になってるに違いない。とにかくゆっくりしたいんだ。とりあえずこういうものが書ける状態になってよかった。