縞馬は青い

縞馬は青い

映画とか、好きなもの

私をつくった100のコンテンツ(社会人編)

引き続き。大学卒業後6年のあいだに私をつくったものたちです。一部大学以前のものも思い出して入れた。めちゃくちゃ順不同、思いついた順です。

  1. ハッピーアワー(濱口竜介
  2. エリック・ロメール
  3. 女っ気なし(ギヨーム・ブラック)
  4. オルエットの方へジャック・ロジエ
  5. グッバイ・ファーストラブ(ミア・ハンセン=ラヴ)
  6. 玉田企画
  7. ロロ
  8. ナカゴー
  9. 贅沢貧乏
  10. 劇団アンパサンド
  11. A子さんの恋人
  12. おもろい以外いらんねん(大前粟生)
  13. 鳥がぼくらは祈り、(島口大樹)
  14. 破局(遠野遥)
  15. ショウコの微笑
  16. 文学フリマ
  17. はちどり
  18. ユリイカ(雑誌)
  19. ユリイカ青山真治
  20. panpanya
  21. カネコアヤノ
  22. 柴田聡子
  23. スカート
  24. Homecomings
  25. ダウ90000
  26. かが屋
  27. シシガシラ
  28. グレイモヤ
  29. ひかりの歌(杉田協士)
  30. 往復書簡 初恋と不倫(最高の離婚とそれでも生きてゆくを入れ忘れてた)
  31. 詠む読む
  32. 脚本家坂元裕二(本)
  33. 星の子(今村夏子)
  34. ウェンディ&ルーシー(ケリー・ライカート)
  35. ケイコ 目を澄ませて(三宅唱
  36. ダーツ
  37. 将棋
  38. ミツバチのささやき
  39. ポール・トーマス・アンダーソン
  40. 女の園の星(和山やま)
  41. すべてのものは優しさをもつ
  42. 愛に関する短いフィルム(クシシュトフ・キエシロフスキ)
  43. ボーンズ アンド オール
  44. 何曜日に生まれたの
  45. off the hook
  46. 塩素の味(バスティアン・ヴィヴェス
  47. 忘れる。
  48. 山中瑶子
  49. 少女邂逅
  50. 映画はどこにある インディペンデント映画の新しい波
  51. 雷獣
  52. ジャック・リヴェット
  53. ホン・サンス
  54. あのこは貴族
  55. 宮本から君へ
  56. セックス・エデュケーション
  57. このサイテーな世界の終わり
  58. セレぶり3
  59. デート〜恋とはどんなものかしら〜
  60. すいか
  61. 30までにとうるさくて
  62. 大豆田とわ子と三人の元夫
  63. ひらいて(映画)
  64. 往復書簡 限界から始まる
  65. 渡辺紘
  66. 疑惑とダンス
  67. 画餅
  68. デザイナー渋井直人の休日
  69. 大九明子
  70. ノア・バームバック
  71. あの頃ペニー・レインと
  72. 断片的なものの社会学
  73. ドキュメント72時間
  74. 100分de名著
  75. あまちゃん
  76. アキナのアキナいチャンネル
  77. 都会のアリス
  78. 岬の兄妹
  79. 二重のまち/交代地のうたを編む
  80. 春を告げる町
  81. フィーバー・ルーム
  82. 阿賀に生きる
  83. 人生フルーツ
  84. 進撃の巨人
  85. PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS
  86. うみべのストーブ(大白小蟹)
  87. プレミアリーグ スパーズ
  88. 元気が足りないラジオ
  89. POP LIFE: The Podcast
  90. 横道世之介
  91. 高島鈴
  92. yahso(阿佐ヶ谷)
  93. 古書サンカクヤマ(高円寺)
  94. トーチWeb
  95. 十八番(野方)
  96. ドキュメンタル
  97. 私は男でフェミニストです
  98. 東京ヒゴロ
  99. 急がなくてもよいことを
  100. 夜と霧

私をつくった100のコンテンツ(大学まで)

こっそり。10代の多感な時期中心で、大学までに熱狂したもの。時代はぐちゃぐちゃ思いついた順でございやす。大学卒業後からのたったの6年でだいぶ趣味が変わりつつ増えてるのであと100は書けそう。(1995年生まれ)

ニューヨーク屋敷さん&嶋佐さんの価値観に影響した100コンテンツとは?【映画/ドラマ/お笑い/音楽/漫画/ファッション/グラビアアイドル/1986年生まれ】 - YouTube

  1. 超力戦隊オーレンジャー オーレVSカクレンジャー
  2. ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS
  3. ウルトラマンコスモス
  4. SPEC
  5. 古畑任三郎
  6. 山田悠介
  7. ハリー・ポッター
  8. BUMP OF CHICKEN
  9. ドラゴンボールカードゲーム
  10. ポケモンルビー
  11. ボンバーマン(プレステ)
  12. クラッシュバンディクー(プレステ)
  13. パズドラ
  14. 東海オンエア
  15. パオパオチャンネル
  16. テラスハウス
  17. ライアーゲーム
  18. デスノート
  19. 20世紀少年
  20. 岩明均
  21. バクマン
  22. ウリナリ
  23. プロポーズ大作戦
  24. カルテット
  25. ラブシャッフル
  26. 青春ゾンビ
  27. WOWOWぷらすと
  28. 相米慎二
  29. 成瀬巳喜男
  30. 今泉力哉
  31. Yahoo!知恵袋 雑談カテゴリ
  32. ベイブレード
  33. ポケモン指人形
  34. 桃鉄プレステ2
  35. クリープハイプ
  36. KANA-BOON
  37. 豊島美術館
  38. アモス・ダラゴン
  39. スパイキッズ
  40. 高校入試(ドラマ)
  41. ワンピース(アニメ)
  42. 家庭教師ヒットマンREBORN!(アニメ)
  43. ソウルイーター
  44. °C-ute
  45. スマイレージアンジュルム
  46. ハロー!プロジェクト
  47. KARA
  48. さしこのくせに
  49. アイドリング(バラエティ)
  50. M-1
  51. シネリーブル梅田
  52. ナルニア国物語
  53. 探偵学園Q
  54. 女王の教室
  55. トリビアの泉
  56. まさかのミステリー
  57. インターステラー
  58. セッション
  59. ラストクリスマス
  60. 大好き! 五つ子
  61. ウォーターボーイズ
  62. ブザー・ビート
  63. ハルフウェイ
  64. 太陽と海の教室
  65. 西遊記
  66. 勇者ヨシヒコ
  67. 荒川アンダーザブリッジ
  68. 世にも奇妙な物語 BLACK ROOM
  69. 増村保造
  70. 小津安二郎
  71. レッチリ
  72. リンキン・パーク
  73. IQサプリ
  74. テスト・ザ・ネイション全国一斉IQテスト
  75. ガキ使笑ってはいけない
  76. 金曜ロードショー
  77. 学校じゃ教えられない
  78. 是枝裕和
  79. ブラッディ・マンディ
  80. ギャルサー
  81. インシテミル
  82. Dr.スランプアラレちゃん
  83. BLEACH
  84. テガミバチ
  85. 綾辻行人 館シリーズ
  86. NARUTO
  87. back number
  88. miwaのオールナイトニッポン
  89. 桐島、部活やめるってよ
  90. 朝井リョウ加藤千恵オールナイトニッポン0
  91. YUI
  92. 青春不敗
  93. f(x)
  94. 火花(ドラマ)
  95. HUNTER×HUNTER
  96. マツコ有吉怒り新党
  97. アフロの変
  98. OV監督/オモクリ監督
  99. 架空OL日記
  100. 住住

My Best Films of 2023 - 待ちながらえる

f:id:bsk00kw20-kohei:20240101193450p:imageシシガシラが敗者復活から勝ち上がって令和ロマンが優勝するという数日前の出来事にまだホクホクしている年の瀬(に書き始めた)です。その2組とカナメストーン、忘れる。、サスペンダーズが出ていた「あんあん寄席」というライブの光景は確かに覚えておきたい。

年末なので、今年観た映画とたくさん心を温めてくれたカルチャーについて書こうと思う。自主制作で『VACANCES バカンス』というZINEを友人と作っていて、今年2冊出したそれぞれの主題は「やさしいともだち」と「(自分たちの側にいる)おばけ」だった。この1年は、生活の中で大事にしたい身近な他者の存在と、自分には見えていないものがあるという感覚を大事にしていた1年だったように思う。それは奇しくも、観たものや読んだものにも現れていました。記憶力が乏しいから一つひとつの感想の熱量は低めだけど、自分にとってとっても大事な作品たち。映画ベストから。

* * *


10.金子由里奈『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』f:id:bsk00kw20-kohei:20231230223116j:image一筋縄ではいかないやさしさを描き出す大前粟生さんの原作も素晴らしいのだけど、金子さんの映像もまた違う世界を見せてくれて面白かった。幽霊を描く監督だから、ちゃんとぬいぐるみ視点がある。大きなぬいぐるみが主人公七森の耳を塞ぐ場面、そしてぬいサーのみんなが大きなぬいぐるみを洗っている場面が特に記憶に残ってる。最後に言葉を発するあの人物のやさしさを、私たちが見ているという構造がとても好き。

9.キティ・グリーン『アシスタント』f:id:bsk00kw20-kohei:20231230224540j:imageやりがい搾取というのは自分の中でも一番身近にある暴力であって、映画業界の闇を映画で描いていることにまずは脱帽。どの業界にもいる、アシスタントという不可視化されやすい存在。おばけにも通じる。そしてこの映像がとんでもなく洗練されていてミニマルに刺してくるから、面白いのと同時に怖い。こういう良質な映画を配給してくれるサンリスフィルムさんに改めて大感謝。

8.今泉力哉ちひろさん』f:id:bsk00kw20-kohei:20231230225920j:image『大豆田とわ子と三人の元夫』でも存在感を発揮していた豊嶋花さん演じるオカジがとてもよくて、彼女がちひろさんに憧れながら自分のための言葉や人生を切り拓いていく姿が勇ましかった。

7.ホン・サンス『小説家の映画』f:id:bsk00kw20-kohei:20231230230644j:image描かれているものは少ないのに、なーんでこんなに面白いんだろうね。この映画は確実にホラー映画みたいにも撮られていて、冒頭の怒鳴り声とラストの展開は特に怖い。他者との親密さの表現と絶対的な「わからなさ」の表現。

6.ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』f:id:bsk00kw20-kohei:20231231000000j:imageこれは最近観たので割とほくほく。日本を舞台にトイレ掃除の仕事をしている人を美化してドラマチックに描く映画だなと思って序盤は警戒して観ていたのだけど、主人公平山の仕事終わりのルーティンとか、決して聖人ではない人間らしい姿とかを見ていると気づいたら泣いてた。君と僕とは別の世界にいる人間なんだと端の上で語る平山と姪っ子。あのあわいの空間を描けるのが映画であって、トイレの◯×も駅の居酒屋も木漏れ日の下の昼食もそのささやかな越境に感慨を覚える。

5.加藤拓也『ほつれる』f:id:bsk00kw20-kohei:20240101135212j:image人から発せられる言葉や行動がぜんぶいい意味で腑に落ちなくて、ずっと曖昧な表現を漂っているのが凄まじい。リアリティ…というかなんでこんな脚本が書けて映像が撮れるんだろう。90分いかない尺で、物語を欲張ってなくて、登場人物が少なくて、音楽も少なくて、すべてのシーンにハリがある。こういう映画を私はたくさん観たい。

4.二ノ宮隆太郎『逃げきれた夢』f:id:bsk00kw20-kohei:20240101140459j:image『デザイナー渋井直人の休日』しかり、光石研さんが演じるおじさんが無性に好き。この映画は当て書きらしいから、光石さんの魅力が最大限に発揮されているのだと思う。二ノ宮監督の見せてくれる映像と物語にも信頼しかない。「おじさんの有害性」ばかりが注目されるこの世で、ほんとうの顔はここにあると思う。

* * *

3.サム・メンデス『エンパイア・オブ・ライト』f:id:bsk00kw20-kohei:20240101140538j:imagef:id:bsk00kw20-kohei:20240101181317p:image映画館で映画館についての映画を観れる喜びを噛み締めていた。いつか人と離れ離れになる瞬間が来るように、映画や映画館とも一生いっしょにいれるとは思ってない。それでもいま私は暗闇のなかでまばゆいばかりの光を浴びていて、そのあたたかさにいつも支えられている。映画は現実逃避ではなく、夢を待つ現実の体験。暗闇の中に投影される光は、目の前の道筋を照らしうる灯火。この哀しみも愛おしさも、すべて光になればいい。

2.アキ・カウリスマキ『枯れ葉』f:id:bsk00kw20-kohei:20240101142118j:imagef:id:bsk00kw20-kohei:20240101180427j:imageシンプルイズベスト。いや、シンプルに見えて実は複雑なのかも。偶然の出会い、視線の交差、すれ違い、邂逅、すれ違い、再会、すれ違い、再会。トレンディドラマのようなアナログな恋のすれ違いドラマが、デジタル機器をほとんど登場させないカウリスマキの世界にはまだ息づいている。でもこの映画が描いているのは「2022年」。ラジオから永遠に流れてくるウクライナ侵攻のニュース。心を痛め、怒り、ラジオのスイッチを切る。その圧倒的な現実の絶望感に対して、人と人の出会いには何ができるのだろう。アナログだからこそ、この映画には「待つ」とか「委ねる」といった人間の美しい所作があって、ここに僕は可能性を見出していた。待つというのは能動と受動の間。戦争が終わることも、誰かが自分のもとへやってくることも、祈りながら待ってる。映画を観るのもまさに「待つ」こと。

1.ルカ・グァダニーノ『ボーンズ アンド オール』f:id:bsk00kw20-kohei:20240101180125p:imagef:id:bsk00kw20-kohei:20240101180252p:image
地球の裏側まで続きそうな地平線の真ん中に、マレンとリーは寄り添いながら座ってる。人間を食べなければ生きていけない性を抱えたふたり。彼女たちがキスをしているとき、互いを食ってしまうのではないかという緊張感と、互いの存在があることの安堵感とが同居しているように見えて美しかった(ラストの光景を見ていればどちらかでしかないのだけど)。3回くらい観たけど、この映画をどう解釈していいかよくわかってない部分もある。惨いものと美しいものが共存してる。ただただこの映画を観ている時間が好きで、オールタイムベストにも入れたい。ちなみに映像と素晴らしくマッチしていた音楽を手がけたのは『エンパイア・オブ・ライト』と同じトレント・レズナーアッティカス・ロスだった。ついていきます…。ちなみにちなみに、上位3つに選出した映画には「映画館で映画を観る」シーンが登場する。

* * *

改めてベスト10+他に好きだった11作品

  1. ルカ・グァダニーノ『ボーンズ アンド オール』
  2. アキ・カウリスマキ『枯れ葉』
  3. サム・メンデス『エンパイア・オブ・ライト』
  4. 二ノ宮隆太郎『逃げきれた夢』
  5. 加藤拓也『ほつれる』
  6. ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』
  7. ホン・サンス『小説家の映画』
  8. 今泉力哉ちひろさん』
  9. キティ・グリーン『アシスタント』
  10. 金子由里奈『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』

+α

ミカエル・アースやミア・ハンセン=ラヴ、ケリー・ライカートなどなど大好きな監督たちの新作をたくさん観られた1年だったんだなという気持ちと、上の3つに選んだルカ・グァダニーノアキ・カウリスマキサム・メンデスは自分に合う監督だと思ってなかったからびっくりの気持ちと、その両方がある。大晦日に配信で観た『Saltburn』もエメラルド・フェネルは前作そんなにハマってなかったから予想外の最高映画すぎて驚いた。好きな監督が増えるというのは幸せなこと。2024年の気になる映画3本は、ビクトル・エリセ瞳をとじて』、三宅唱『夜明けのすべて』、濱口竜介『悪は存在しない』。

* * *

◼︎よかった書籍(小説やマンガ、エッセイ、歌集)f:id:bsk00kw20-kohei:20240101183703j:image

  • 伊藤亜紗・村瀬孝生『ぼけと利他』
  • 中島岳志『思いがけず利他』
  • 乗代雄介『それは誠』
  • 高瀬隼子『いい子のあくび』
  • エリザ・スア・デュサパン『ソクチョの冬』
  • 児玉雨子『##NAME##』(「新潮」2023年夏季号)
  • 小原晩『これが生活なのかしらん』
  • 初谷むい『わたしの嫌いな桃源郷
  • 菊竹胡乃美『心は胸のふくらみの中』
  • 田沼朝『四十九日のお終いに 田沼朝作品集』
  • panpanya『商店街のあゆみ』
  • 松本大洋『東京ヒゴロ』3巻

『東京ヒゴロ』は素晴らしい幕引き。本づくりの指針にしていきたいマンガ。小原晩さんの『これが生活なのかしらん』は今まで読んだエッセイのなかで一番しっくり馴染んだ。小説は『それは誠』にうっとりして、『##NAME##』の芸能とアイドルと少女の描き方にハッとした。

 

◼︎よかったライブや演劇

  • 爍綽と vol.1 『デンジャラス・ドア』
  • チョコレートプラネット『財津啓司オフィレジデンスOCCミーティンガー』
  • ダウ90000 単独ライブ「20000」
  • 週刊ダウ通信presentsダウ90000 夏の八演会
  • コントライブ『夜衝2』
  • EBISU BATICA 12th ANNIVERSARY『グレイモヤ』
  • シシガシラ単独ライブ『一張羅』
  • 第十四回 街裏ぴんく漫談独演会『六人のマーチ』
  • パンプキンポテトフライ × ケビンス ツーマンライブ『ぽん酢ラーメン』
  • Juice=Juice 10th Anniversary Concert Tour 2023 Final ~Juicetory~
  • 柴田聡子のひとりぼっち'23 Day2 -外出-

 

◼︎よかったドラマ

『何曜日に生まれたの』はぶっ飛んでるけど最高…。『ラブシャッフル』以来の野島伸司だったけど、脚本がうますぎるしずっと展開があってハラハラしっぱなしだった。10年経っても進化してない部分もあったけど、それでも野島伸司のドラマは総合点で圧倒してくれる。

 

◼︎よかったZINEや自主制作マンガ(23年は文フリや個人書店さんでたくさんいいZINEに出会いました)

  • カウ・リバー『そういう人』
  • 夕暮宇宙船『ひとり暮らし』
  • Chew Magazine『chew2』
  • Sakumag Collective『We Act! #3 男性特権について話そう』
  • 麦島汐美編『アケルマン・ストーリーズ』
  • 岡澤浩太郎編『mahora 第5号』
  • タバブックス『怒りZINE』
  • まつもと・はら『街の声』
  • 岡本真帆・丸山るい『奇遇』
  • 葉山莉子『ノージョブ・ユートピア
  • 碇雪恵『日記と呼ぶには』
  • もりみ『あの子の日記-夜-』

 

年末は日プにもはまった。それではまた1年。

文学フリマめっちゃ楽しみ

サイゼリヤのサラダにカエルが混入していたというニュースを見ながらこれを書いてる。銭湯上がりに。すかさず家に帰った。


来週の土曜日(11日)にある文学フリマが楽しみでしょうがない。僕は「第一展示場 I-01 DVD探知犬」で自主制作の雑誌『VACANCES バカンス』を売ります。文フリの開催に合わせて続刊していて、今回で第3号目。

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「おばけ・リミックス」というタイトルで、大好きなみなさんと、わかりやすさや効率化のもとで排除されてしまうもの、存在しているのにいないことにされてしまうもの、日々の営みのなかでこぼれ落ちてしまう断片などに目を向けています。『思いがけず利他』などの本でいつも引き込まれる装画を描かれている丹野杏香さんに表紙イラストをお願いし、トーチWebで『緑の予感たち』という幻想とリアリティがうまく混ざり合っためちゃくちゃ面白いマンガを連載されている千葉ミドリさんにマンガをご依頼し、『コンビニに生まれかわってしまっても』の西村曜さん、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』の大前粟生さんに短歌を詠んでいただいたりしました(短歌はおばけの視点に近いと思いおふたりに声がけした)。メンノンの連載で協力させてもらっている今泉力哉さんにも『アンダーカレント』を経たささやかなインタビューを実施。そしてそして、『リトル・ガール』や『アシスタント』といった映画をひとりで配給しているサンリスフィルムの池田彩乃さんにも長めにお話を訊いています。11/23(木祝)にサンリスフィルム配給宣伝のもと『ゴーストワールド』がリバイバル上映されるとのことで、グッドおばけタイミングでした👻

ここまでが僕の編集担当分で、一緒に雑誌をつくっている相方の上垣内は、『近畿地方のある場所について』の背筋さんに小説(すごく怖いです)を依頼したり、サニーデイ・サービス曽我部恵一さんに可視化できない感情やこの世界で不可視化されているものについてインタビューしたり、妖怪好きの編集者・川浦慧さんにエッセイを依頼したりしています。AIアーティストの岸裕真さんが自身の作品制作のキュレーターとして使っているMaryGPT(メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』を学習した生成AI)にインタビュー(チャネリング?)を試みたテキストも不気味で面白いです。ちなみに僕は恋の亡霊についてのエッセイを書いてます。後日Webや書店さんでも販売を予定していますが、まずは文フリでぜひお手に取ってみてください。短い言葉で言語化しづらい事象を扱っているので、ぜひ中身をじっくり読んでみていただきたい。あとフリーペーパーもつくると思います。

c.bunfree.net


文フリは短い時間にいかにブースを回れるかが鍵で、客の立場でもしっかり楽しみたい。Webで見れる出店リストはひと通り見漁ったし、買いたいものもけっこう目星がついてる。特に、ブースが近いところにありそうな上坂あゆ美さんの雑談本(H-29〜30)、いつもブログを読んでいるまつもとさんとはらさんによる「街の声」を集めたという本(I-07)、コンセプトが僕たちの雑誌に似ていたqeeree. / fpl.(H-01)南端(I-20)、文フリには僕たち以外に意外とない「雑誌」をつくっているという夏書房(J-43)、歌人の我妻・平岡(R-27)、佐々木敦さんやライターの山本ぽてとさん、小沼理さんの個人ブースも気になってる。自分のブースを抜け出して買いに行くにはある程度目星をつけとかないといけないんだけど、この調子だと半端なく散財しちゃうな。そういえば、2つ先の文フリ東京は東京ビッグサイトでやるらしい。コミティアで行ったことあるけどたしかにでかい。これからどんどん出店者も来場者も増えていって、ビッグサイト以前以降とかになるんだろうか。流通センターから参加してる私たちは古参になるんだろうか。あんま想像つかないないし一過性な感じがするなー。私たちは細々と雑誌をつくり続けて、文フリが終わった後に飲むお酒を楽しみに生きたい。

泥棒みたい

 

月曜日ご褒美あげたい敷地内立ち入り禁止を走り抜けて

赤ちゃんに話してるような口調で聞かれ三倍に膨れ上がった柿

日焼けより歪んだ顔が跡になるそれを儚さと定義しよう

毛量のおおさはお父さんに似て、一拍おくのは叔母さんかもね

 

黒ひげはもともと助けるためのゲームわたしのうそを信じてみてよ

電話よりメールの方が優しい人その逆もまた泥棒みたい

一度もつかわなかったカギ送ります 脇毛が急に気持ち悪い

勢いよく喋り出したはいいものの先の言葉がしゃぼんとはじけた

 

比喩言い換え誇張か卑下で表現されたあなたの口にハニーディップ

気持ち悪い悪意どもは後方のエスカレーターで成仏して

重心を見つめて歩くXY  あ/ぶつかる/ごめんなさい/ごめ

恋リアのスタジオメンバーみんな基本にやにやしてるね自分もそうね

 

カメラの出番なし出番あるときも忘れてしまう彼女がいない

暗き浜のなおも明るい灯台の映画はまさに死の飛行経路

降りる前から乗ってくるご両人にはプラスチック・スナイパー

暑い中どうもありがとうございます秋用意して待ってました

 

* * *
7月29日。きっとどこかで花火が上がるのだろう日に、花火が上がらない街を歩いてる。ループに乗った浴衣の人が通り過ぎる。ハチみたいな音が近づいてきてベローチェに逃げ込んだ。移転したBunkamuraル・シネマでライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『不安は魂を食いつくす』を観る。一度は言ってみたい監督名、初めて言えました。かなり好きなテンションの映画。掃除婦の未亡人エミと移民労働者アリがお互いの孤独に寄り添い合う話で、人種差別描写が思ったより色濃い。人はいつだって孤独であるし、それは似たような人と補い合おうとしても結局は拭いされないものだけど、違いや虚しさを認めたうえでずっと最初の優しさを忘れないまま謙虚な1と1であり続けることはできる。でも好きという感情は人を傲慢にさせて、それはそれで楽しいよね。

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終わらない冒険譚

 

終わらない冒険譚があることに気づいたんだってマジなんだってば!

僕たちの共通言語はアートにあるそう言った君と話せなくなった

関西弁喋れへんからあんたとは蚊取り線香と蚊の関係で

人生で数えるほどしかジーンズを履いたことがない男の末路

 

内見でメジャーも眼鏡も持たずして好きになるのを藤原は待つ

俺、将来、ハゲるんだなって確信した日のこと覚えてる?

柿であり柿でないかもしれないが、われらはともに錠剤を飲む

戦場に最も近い鈍色の天井 恋の反動に生きて

 

マイナンバーカードに意思は存在しない かの日の背番号のように

五月病 ビールを頼んだその口で水をがぶ飲みする君が好き

不思議です街で見かけたあの人が在来線に乗っていたこと

乳首の痛みはどういうほどけ方ぼくのいたみは解けました

 

なにごとも先頭になれば緊張しますあなたのカイロを腹にあてます

口癖があった気がする疑問符にアケミのオールナイトニッポン

そういえばこの前彼氏と会ったらさもう解散したって笑うんだよ

届けたいスポーツタオルに絡まって弁当屋さんの最高傑作

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My Best Films of 2022 - 曇りの日が続く

f:id:bsk00kw20-kohei:20230104111557j:image映画に「面白い」「感動した」「興奮した」以外の指標はあるのだろうか。中学生のころに大好きなハリーポッターシリーズが完結し、マーベルにいつしか興味をそそられなくなってから、思えばそういうことを無意識に考えながら映画に接してきたように思う。僕は学生時代から古典映画をたくさん観ていたようなシネフィルではないし、いわゆる娯楽大作的な、簡単に言えばストレス発散になるような映画も好んで観てきた(いまも嫌いなわけではない)。でも5年くらい前からそういうものに惹かれなくなって、いつしか僕は映画に人生を重ねるようになった。日々生きている中での疑問や課題を、映画を通して再確認/新発見できることに充実を覚える。あの人は何を考えているんだろう、なぜ人と人は心が通じ合わないんだろう、これからどう生きていけばいいんだろうーー。映画と日々が密接すぎるから、日常生活で人と雑談していてもすぐに観た映画やドラマのことを絡めて話してしまうクセがあった。こんな映画を観て、こういうことを考えたんだよ。そういえばあの映画にもそういうことが描かれてたよね。その割に絶望的に説明が下手で、結局なんの話をしたいのかわかってもらえないことがあった。

さいきん僕は、人と話をするときにあんまりカルチャーの話をしないようにしよう、というマインドになってる(特に相手が観てないものに関して)。単純にまじで話がちぐはぐで、結局「面白かった」としか言えないくらいに感想が簡素化されてしまうから。面白いしか言えないなら、娯楽映画だけ観ていればいいのに…。でも違うんです、映画から僕は大事なものを受け取っているんです。2022年の10本(+10本)は、そんな気分に寄り添ってくれた映画たち。面白さを言語化したい、大事な映画たちです。

 

10.井上雄彦『THE  FIRST SLAM DUNKf:id:bsk00kw20-kohei:20221231184215j:image中学生の頃にバスケ部に所属していて、それはそれはヘタクソで全く使いものにならなかった。たまに出る試合ではめちゃくちゃテンパって、ボールを手にした瞬間の視野の狭さったら酷かったと思う。実写ではできない角度から被写体を捉えられるのがアニメーションの魅力のひとつだと思うけど、それで言うとこの映画はとにかくカメラポジションが素晴らしい。上部からの遠景でふたりの男の子の行く末を映していたかと思えば、急に地上に降り立って臨場感あふれる試合シーンに突入する。その場面における、選手たちの視野の狭い映像がリアリティがあって思わずあのヘタクソながら必死に走っていた日々のことも思い出す。『ケイコ 目を澄ませて』を観た後だったから、ただ運動が連なっていく映像の美しさにも魅了された。山王工業の面々の後ろ姿もたまらん。ワールドカップとかもすごい映画的で面白かったけど、スポーツを映画にした一種の成功例になったんじゃないかしら。人が走り、跳び、合図を出し合い、ボールをつなげる、その運動の連なりのみによって生まれるエモーション。だから正直バックグラウンドの語りはちょっとノイズな気もする。

9.セリーヌ・シアマ『秘密の森の、その向こう』f:id:bsk00kw20-kohei:20221231184423j:image女性の心が解放されるようないわゆるフェミニズム的な映画が好きなのだけど、これは自分の周りにいるいろんな母娘の存在を横に置きながら、投影しながら観た。なんと言っても、母と娘がその役割から一瞬離脱することで一人ひとりとして出会い直す、友だちになる、その展開がよかった。ネリーとマリオンが顔はそっくりなのに鏡像のように描かれていかないことにも意味があると思う。似ているけど違うし、ぜんぜん違うけど似てる部分もある。それを認め合って関係していけるだろうか。

8.ギヨーム・ブラック『みんなのヴァカンス』f:id:bsk00kw20-kohei:20221231184454j:image夏の間に2回観にいくつもりだったのに結局夏は終わってしまった! ギヨーム・ブラックは新作を心待ちにしている監督のひとりで、これを観られただけで生きていてよかったと思える。 2022年は『VACANCES バカンス』という自主制作の雑誌をつくったのだけど、もちろんこの映画もきっかけであり参照元のひとつだった。バカンスはただハッピーでノーストレスなだけではあり得ず、解放的な時間の中で同時に孤独や切迫、自分と向き合うことによる苦しみを感じずにはいられない。休みであり、生命力を充填する時間であること。僕はかれらとバカンスに行けてほんとうによかった。

7.ポール・トーマス・アンダーソンリコリス・ピザ』f:id:bsk00kw20-kohei:20230104134610j:imageゲイリーとアラナのふたりに同期しているようなカメラワークが愛おしい。カメラは走り続けるかれらを迎えることはあっても追いかけることはせず、同時に動き出し、同じ速度で走り、突然の失速や後退に振り落とされたりする。振り落とされるたびに一方からまたどちらかが走り出し、もう一方を捉えんとする。でもこのふたつの流動体はなかなか掴みきれない。というかまたすぐにどこかに走り出していく青春の衝動。だからこそかれらが合流し、カメラの横を過ぎ去っていく(そのあとを追いかけない)ラストシーンがたまらなく美しいと思った。走り続ける身体である映画が、スクリーンを飛び越えていった瞬間。人の感情は流動し、他者とすれ違い続ける生き物だけど、あのときだけ同じ方向を向いていたならそれでいいと思わせる魔法の邂逅と越境。

6.ジュリア・デュクルノー『TITANE/チタン』f:id:bsk00kw20-kohei:20221231184537j:image観たことがないもの対する困惑と気持ち悪さを、快感が追い越してきた。本質的にこういう人智を超えたものが好きなんだと思うけど、それにしても今になってシーン一つひとつを思い出そうとしてみてもその繋がりを頭の中で構築するのは難しくて、でもあのとき確実に僕は心を揺り動かされていて、これに関しては映画に言語は敵わないということを告白せざるを得ません。

5.デヴィッド・ロウリー『グリーン・ナイト』f:id:bsk00kw20-kohei:20221231184615j:imageこの映画をみんながどう観るのか気になるけど、僕はストーリーに対して共感に似た類の感情を抱きました。特に主人公が何度も何度も逡巡する場面に対して。その感じわかるよ、辛いよね、と一緒に苦しみながら観た。勇気を持って権威を断ち切った男の話を壮大に、ファンタジックに描いた映画だと思ってるけど、これは案外パーソナルな側面もあると思う。僕は最近手放したことを重ねながら観た。このままだと絶対によくならない未来が見えたときに、どういう選択ができるか。あと、『ア・ゴースト・ストーリー』の白い布とかもそうだったけど、デヴィッド・ロウリーの映画の中のモノの手触り、テクスチャを感じられる美術に惹かれる。

4.今泉力哉『窓辺にて』f:id:bsk00kw20-kohei:20221231184640j:image今泉さんは「過ぎ去っていく時間」「失われていく記憶」と「それでも残るもの」に対しての眼差しが深い監督だなと改めて感じた。それは机にうつ伏せで寝る妻に対して掛けられるブランケットや、取れたボタンを縫い直す行為、ベッドの上にそっと置かれるスマホなんかに現れていたと思う。それぞれが孤独で、優しくて、それはもしくはエゴかもしれなくて。終盤に出てくる写真を見たところで、もろもろの思いが重なって感涙した。ああいうモノを自分は人生のうちにどれだけ残すことができるだろうか、なんてことを思った。どれだけ、というかひとつでもいいのだけど。端的に言えばあれは(妻やその母にとってのアルバムは)、これがあるから生きていける、と思えるような愛のこもったお守りになり得るはずだ。ああいうモノにこそ人を生きさせる、明日を歩ませる力があると思う。それを映画の中に発見できる喜び。個人的には『街の上で』と並んで今泉映画ベスト。

3.ジャック・オディアール『パリ13区』f:id:bsk00kw20-kohei:20221231184652p:imagef:id:bsk00kw20-kohei:20221231184855p:image『燃ゆる女の肖像』『秘密の森の、その向こう』のセリーヌ・シアマと『ファイブ・デビルズ』のレア・ミシウスというフランスの重要監督がふたりも脚本に名を連ねている時点で、只者ではない映画の薫りがぷんぷんするやつ。これはフェチに突き刺さる偏愛の部類に入る映画で、登場人物たちの造形から、モノクロかつ被写界深度の浅い映像、ちょいダサの映画音楽、主にセックスやジェンダーに関する現代的なテーマを織り込んだ恋愛譚の構成に至るまで、ぜんぶ最高。これをきっかけに原作であるエイドリアン・トミネのグラフィックノベルにも触れることができてまた興味範囲が広がった。

2.三宅唱『ケイコ 目を澄ませて』f:id:bsk00kw20-kohei:20221231184755j:image
f:id:bsk00kw20-kohei:20221231184758j:imageこれは『ケイコ』を観た後のことだけど、三宅唱監督の過去作をちゃんと観られてなかったから『THE COCKPIT』と『Playback』などが組まれたオールナイト上映を観に行った。そこで最初に監督のトークがあって、会場からもいくつか質問が寄せられた。観客のひとりが『ケイコ』に関して、岸井さんの目の演技がすごくて、そこからいろんな感情を受け取ることができた、なぜああいう演技が可能になったのでしょう、と聞いていて、それに対して三宅さんは、特別目がどうこうというわけではないと思うんです、それがあるとしたら目から多くの感情を受け取れたあなたの目が素晴らしいのだと思います、と返していた。もうひとつ印象的だったのは、三宅さんはこの時代に映画をつくることに対して何か考えていることはありますか?という質問への答え。「僕はコロナも戦争も早く終わってほしいと思ってる。でもおそらく年が明けてもいいことがあれば悪いことも絶対にあると思います。その中で僕は、いいこと、楽しいことの方向の映画をこれまでもこれからもつくっていきたいと思っているんです」。年末にこういう話をしてくれる三宅監督のことがとにかく好きになったのはさて置き、『ケイコ』の英題である『Small, Slow But Steady』(少しずつ、ゆっくり、でも着実に)が現すように、映画ではこの言葉は病気の進行に対して使われていたけど、いいことも悪いことも起こる中で、着実によい方向を目指して生きていくほかないのだと思った。『ケイコ』は、ゆっくりでもいいから進み続けること、その先にある光を信じる私たちに寄り添ってくれる映画だと思う。

1.杉田協士『春原さんのうた』f:id:bsk00kw20-kohei:20221231184917j:image主人公の沙知は、大事な人を失ってしまう。そこからの彼女の日々、バイトに行ったり家事をしたり、風呂に入ったり寝たり食べたりを、カメラは一定の距離を保ちながらじーっと映し出す。ただ淡々と、説明的な要素も一切なく積み上げられていく生活の描写は、ともすれば「映画」としてめちゃくちゃつならないものになりかねないと思う。『ケイコ』も似たような側面がある映画だけれど、あちらには独特のリズム感があって、ミニマルでタイトにまとまっているが故の観ていて気持ちいい感覚があった。では『春原さんのうた』はどのように「映画」になっているのか。もちろん照明やカメラワークといった技術的な側面からの貢献によるものが大きいのだろうけど、それを下支えするスタッフ・役者その現場にいたそれぞれの人たちが、この彼女の「生活」を誰も軽視していなかったからそのままの空気感で伝わってきたのではないか、なんてことを思ったりする。すごく感覚的な話だけど*1。僕は自分の生活を軽視しているから、ブログに自分の日常に起きたことを書くのが苦手なのではないか。「面白く見せる」技術的な方法はあるだろうけど、それを駆使する前にそもそも生活それ自体に魅力を感じていなかったのだと思う。『春原さんのうた』を観てそのことを再認識させられたと同時に、自分の生活も今まで以上に大事にしてみたいと思うようになった。映画は120分で終わるし、彼女の生活もそこまでしか見届けられない。今度は続いていく自分の生活を、見守っていこうと思う。不安になったら、また杉田監督の映画を観たい。

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他によかった新作映画10本

  • レア・ミシウス『ファイブ・デビルズ』
  • 小泉徳宏『線は、僕を描く』
  • 松居大悟『ちょっと思い出しただけ』
  • イ・スンウォン『三姉妹』
  • 石川慶『ある男』
  • ジャスティン・チョン『ブルー・バイユー』
  • ジョーダン・ピール『NOPE/ノープ』
  • 川和田恵真『マイスモールランド』
  • 小林啓一『恋は光』
  • 加藤拓也『わたし達はおとな』

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劇場で観た旧作映画5選

ユリイカ』はオールタイムベスト級に心に刺さった映画だった。日々が続いていくという感覚に『ケイコ 目を澄ませて』や『春原さんのうた』も重なった。

文学・漫画10選

  • 永井みみ『ミシンと金魚』
  • 島楓果『すべてのものは優しさをもつ』
  • 朝比奈秋『私の盲端』
  • 高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』
  • 今村夏子「嘘の道」(『とんかつQ&A』所収)
  • 島口大樹『遠い指先が触れて』
  • 大白小蟹『うみべのストーブ』
  • バスティアン・ヴィヴェス『塩素の味』
  • 増村十七『花四段といっしょ』
  • 中山望「ムーンドッグは待ちつづける」(『すいかとかのたね6号』所収)

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その他書籍5選

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ドラマ5選

  • 渡辺あや『エルピス-希望、あるいは災い-』(カンテレ)
  • 山田由梨『30までにとうるさくて』(AbemaTV)
  • 高田亮『空白を満たしなさい』(NHK
  • 坂元裕二『初恋の悪魔』(日テレ)
  • 生方美久『silent』(フジテレビ)

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演劇・舞台5選

  • 劇団アンパサンド『それどころじゃない』
  • ロロ『ここは居心地がいいけどもういく』
  • 画餅『サムバディ』
  • ダウ90000『ずっと正月』
  • 東葛スポーツ『パチンコ(上)』

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お笑いのライブ・ネタ10選

  • シシガシラ「ハゲメンヘラ」(2月の『あんあん寄席』)
  • 忘れる。「乗り過ごし」(4月の『あんあん寄席』)
  • 街裏ぴんく「預金残高」(4月の『グレイモヤ』)
  • ダウ90000「バーカウンター」(『サラリーマン川西の冬のボーナス50万円争奪ライブ』)
  • キュウ「方言」(『サラリーマン川西の夏のボーナス50万円争奪ライブ』)
  • かが屋「S」(4月の『グレイモヤ』)
  • クロコップ「ホイリスト」(9月の『グレイモヤ』)
  • 令和ロマン「ドラえもん」(『M-1グランプリ2022』敗者復活戦)
  • カベポスター「大声大会」(『M-1グランプリ2022』決勝)
  • さや香「免許返納」(『M-1グランプリ2022』決勝)

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音楽5選

  • 柴田聡子「雑感」
  • カネコアヤノ「わたしたちへ」「気分」
  • スカート「背を撃つ風」
  • OMSB「大衆」

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ライブ5選

 

「曇りの日が続く」という一節から始まるカネコアヤノの「気分」がいまの気分。晴れ渡る日も雨の日もあるけど、今年も映画やカルチャーに救われながら生きていきたいと思います。

 

*1:だからあの映画を観て眠くなったりするのも、イコール面白くないということではないと思う。むしろ体が動こかないときに部屋で寝ながら観たりしたい。