縞馬は青い

縞馬は青い

映画とかドラマとか、好きなもの

先週食べたカルチャー(20年9月2週目)

涼しい風にさらされると「外でのみてえ」としか思えなくなった。別に悲観的に言ってるわけではなくて、むしろ逆。夜風にあたりながら呑む酒ほど気持ちいいものはない。実はお酒の味って初めて呑んだときからずっと変わらず好きじゃないのに割といっぱい呑むタイプなのだけど、夜風×酒(レモンサワー)はいつだってとろけそうになる。でもやっぱり涼しい風にさらされて酒のことしか浮かばないのは嫌だ。大人って感じがするから。きっと高円寺に住んでるせいだ。この街はもうコロナなんて過ぎ去ったみたいに駅前ロータリーには酒呑みが群をなし、大将という大衆居酒屋の路上席ではあふれんばかりの大人が酒を酌み交わしてどちゃどちゃ騒いでいる。それを横目に「ああ俺も酒のみてえな」と思いながら家路につくのが最近のルーティン。家で呑む酒の量は一時期より極端に減ったけど、事務所が三軒茶屋に移転したせいでずっと料理がつくれない。今週末は待望のノーラン新作『TENET』が公開される。映画館の席に着いたときのドキドキを僕は10数年前に無くしてしまったのだけど、ノーランの映画だけはまだそれが体験できる。いつからかマーベルの新作に飛びつかなくなったのも大人になってしまったからだろうか。期待することがなくなってしまったし、過去に抱いたあのドキドキを超えられるものはないと気づいてしまった。でもノーランにだけは期待している。ムビチケは2枚買った。初日に観て頭こんがらがせながら何とか理解して、また週末に彼女と観るのだ。これはああであれはこうだったんだよ、とか説明しながら。

ということで先週みた映画、演劇、漫画、小説などの記録です。

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ポレポレ東中野『眠る虫』を観た。幽霊の声に耳を傾け続けていたら、その死者の音と映像を目から照射できるようになった女の子の話(だいぶ雑なあらすじ)。停留所から停留所へ走行するバスの映像が大半を占める一種のロードムービー。その車内を3駅分くらいまるまる長回すシーンと、降りようとして降りれない1駅分を長回すシーンが強く印象に残った。それが世界にとって必要な時間なのかはわからないけど、映画にとってはとても有意義な時間だったと思う。

昔撮られたおばあちゃんの映像を観たときに、過去に置き去りにされたはずの彼女の声(音)が現在の電気信号を伝って私の耳に届いてることに恐怖を感じて、それが創作の起点

舞台挨拶でそんなふうに金子監督は話してたけど、「恐怖」が創作意欲につながるその思考回路がとても気になる。僕は怖いものにはできるだけ近づきたくない。

Netflixオリジナルの映画『もう終わりにしよう。』は、そういう怖いものには蓋をしたい系の作品だった。本作でいう「怖いもの」とは人生そのもの。彼氏の親に会うために彼氏と田舎を訪れる主人公の女性は、「まじで会いたくねえ」「死にたい」くらいのテンションでいながら彼氏に車で連れていかれたその家で、まぁ摩訶不思議な体験に見舞われていく。ホラーではないのだけど、圧倒的不気味。でも引き込まれてしまう謎の魅力もある。映画側が観客に大きな分断を敷いてるせいでこれは理解不能だ〜とお手上げになるも、Filmarksである人の解釈を読んだらすっかり腑に落ちた。そしてもしかしたらそんなに人生の絶望を描いた映画ではないのかもなんて思ったり。冒頭で「映画を観るなんてクソだ」的な発言があるので、そこで心が折れてしまった人は先を観ないほうがいい。

『推し、燃ゆ』を読むために『文藝2020秋号』を買った。「覚醒するシスターフッド」という特集テーマにも興味があったので。この小説がとんでもなく面白かった。どうしたって意識してしまう著者の21歳という若さ。昨年ハタチで文藝賞を受賞したという前作も読みたくなった。『推し、燃ゆ』はいわゆる“女オタク”を題材にした作品で、主人公の女子高生はあるアイドルグループのメンバーを熱烈に「推す」ことを生きがいにしている。“生きがい”と言うと大げさに聞こえるかもしれないけど、家族や勉強やアルバイトや生活といった世界の事象すべてに生きづらさを感じている彼女には、その「推し」が生きる糧であることは明らかだった。文中の言葉を引用すると、彼女にとって推しとは身体を立ち上げるための「背骨」だったのだ。そんな推しが急にいなくなってしまったら……?という、推しを推すことの幸福とその後の“余生”を丹念に綴っている作品。

同じ年に文藝賞を受賞したもうひとりの作家、遠野遥の『破局』を読むと「今の若者観」というか、ちょっと共時性を感じる部分があった。それは、自分自身の内側にあるものではなく、外側にある“なにか圧倒的なもの”に生が吸いついている感覚。『破局』では社会の定める倫理観に、『推し、燃ゆ』では推しに。そのどちらも物語は急激に破滅へと導かれていく。『明け方の若者たち』など立て続けに20代作家の小説に触れてきたわけだけど、同世代の作家が書いた小説をもっと読みたいなと思う。

CINRAにあった『眠る虫』の映画評と『文藝』のシスターフッドを扇動する力強い文章に立て続けに接し、高島鈴さんというライターにかなり心を持っていかれている今日この頃。eke-kingで連載なさっている「There are many many alternatives. 道なら腐るほどある」がどのテキストもアクロバティックで面白くて大事に一個一個読んでいる。第1回の「現象になりたい」、第5回の「反誕生日会主義」、第10回のパラサイト評(評ではないか)がとくに好き。全言葉に共感しているというよりは、こういうパーソナルな部分をステイトメントや映画評として昇華できることに単純に憧れ感心している。同い年のライターさん、彼女には内面から湧き上がる強さのようなものが見えて、なんでも書けてしまうんだろうなって思ってしまう。別にそんな超人ではないだろうけど。

『水は海に向かって流れる』の最終第3巻、素晴らしかった。全キャラクターが憎めなくて愛らしくて、幸せになってほしいなって切に願わせられる奥行きの説得力がすごい。今月発売されるなんて思ってなくて、ちょうど友だちに1、2巻を貸してしまったところだった。できるなら3巻続けて読んで世界観に浸りたい。そういえば沖田修一監督で映画化する『子供はわかってあげない』の公開日どこいった…?

昨年公開されて邦画シネフィル界ですごく評判のよかった『王国(あるいはその家について)』新文芸坐でやってたので観に行こうと思ったけど気づいたときにはほぼ満席だったのでオンライン視聴に回った。この映画は自宅で観るべきでなかったし、途中休憩を挟むべきでなかった。映画館で観てたらきっと自分自身も“王国の内側に入っていく”ような感覚が得られたのだろうと思う。試みもわかるしストーリーもめっちゃ面白かったので、今度はぜひ映画館で観たい(あらすじにはぜんぜん触れないスタイル)。

ロロのいつ高「心置きなく屋上で」神奈川芸術劇場で。この規模感で観るいつ高、すごい贅沢感。でもぜんぜん持て余してはいなくて、屋上にはぴったりの開放感だった。旧校舎には×、新校舎には◯が書かれていて、魔法陣だと勘違いしてどんどん◯側に人が集まっていくとびきりの幸福さ、青春。たしかに学校の屋上ってものに一度は登ってみたかった(小中高どこにも屋上というものは存在しなかった)。花粉症だと嘘をついて涙。太郎に好きだと詰め寄られてフリたい海荷。誰かに答えられるために存在しているクイズ。書いてないのに自分が書いたみたいな手紙。校舎越し太郎の1番好きな歌に気づく海荷。すべてよかった。

このロロを観たあとに思い立ってIMAXインターステラーを観たから、実はちょっとだけいつ高の繊細さな面白さが吹っ飛んでしまっている。インターステラーは洋画にハマったきっかけみたいな映画でDVDでは何回か観てるけど、映画館では観たことがなかった。それをあのIMAXの大画面・大音響で。もうmajiでgodなfilmだった。「最高」という言葉はこういうときのために普段から出し惜しみしておくべき。伸び縮みする時間の感覚がどうしたって涙を誘い、離れるにつれ近づいていく空間のパラドックスに圧倒される。コロナが明けたら新宿ゴールデン街にある一度だけ何かの弾みで吸い込まれた“ガルガンチュア”というバーにまた行きたい。

先週食べたカルチャー(20年9月1週目)

だいたい先週くらいに摂取した映画や音楽、小説、漫画などの記録。更新できずに丸々1か月くらい経っちゃったけど、8月は夏らしい日々を送ろうと夏らしいカルチャーに必死で触れようとしていた。夏は好きな季節ランキング3位か4位くらいだけど、夏のカルチャーはめちゃくちゃ好きなのだ。

 

* * *

夏の作品といえば今年は真っ先に思い浮かぶのが、さとうもか『GLINTS』だった。“一瞬の煌めき”という意味のタイトルが示すように、夏らしいきらきらを凝縮した「ひと夏の恋にまつわる物語」を集めたアルバム。どの曲もテイストが違うくてとびきりポップで最高なんだけど、「Poolside」と「My friend」がとくに好き。「Poolside」の“永遠に終わりの見えない海”と“泳ぐ前からゴールの見えるプール”という対比のモチーフは、『A子さんの恋人』での海の描写と共通点があるとある方が言っていて、確かにって思った。夏の暑い日は涼しい部屋のなかでこればっかり聴いていた。

 

8月はエビ中にも多く接した記憶がある。昨年の夏ライブDVD(ファミえん)を買って涼しげな水演出と彼女たちの歌声でデトックスして、8月中旬ごろにあった無観客ライブ配信も観た。『playlist』から聴きはじめた超新参者だから、そのパフォーマンスを観れてすごいうれしかったな〜。Nizi Projectとかを観ていて改めて思ったけど、アイドルってほんとうにすごい。彼女たちの体力と精神力に支えられている。

まっとうに王道のYouTubeをしながら独特の捻りを加えてくるかまいたちYouTubeチャンネルが好き。最近だとTHE FIRST TAKEを真似た動画が、ほかの芸人やYouTuberのオマージュ動画とは明らかに一線を画していた(見取り図も面白かった)。山内のすべらない話もっと聞きたい〜。

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夏らしい映画みたいね〜、と彼女と話し合って『サマーストーリー』『夏物語』という、タイトル意味一緒だしめちゃくちゃ夏っぽい映画をTSUTAYAで借りてきた。昨年はこの時期にフランスのバカンス映画を知ってハマったんだけど、そこからエリック・ロメールに陶酔したりして、今年の夏はロメールの映画ばかり観ていたいと思っていた。でもこれが、TSUTAYAでもVHSしか置いてないくらいロメールの映画ってレアなんすよね。だからもう思い切ってメルカリでVHSデッキ買っちゃいました。イギリスの映画『サマーストーリー』はびっくりするくらい“夏感”がなくって、ベタベタに王道でありながらラストがかなり暗い謎すぎる恋愛映画。『夏物語』は男性主人公がバカンスに訪れた地で3人の女性に惹かれていく、ロメール感たっぷりの求めていた映画だった。『海辺のポーリーヌ』のポーリーヌ役の女優が10数年たった本作にも出ていて、彼女を観れただけでも満足。会話劇と恋愛劇がノリに乗っていて、これを70歳くらいの巨匠が撮っていたというところには驚きしかない。今泉力哉監督とかにも、おじいちゃんになってもこういう映画撮り続けてほしいな。

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ミニシアターエイド基金のリターン、サンクスシアターで今泉力哉監督の処女作っぽい『此の糸』という短編を観た。2005年に撮られた作品。びっくりするほど今泉映画だった。主人公らしい男性は今泉力哉本人が演じていて、彼には好きな女性がいる。その女性は別の男性が好きで、その男性は主人公の親友。「好き」が近場でぐるっと一周してしまうおなじみすぎるやつ。やっぱ端々の会話の自然さがすごいなって思った。

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映画館で観た映画のなかから特別印象に残った作品をいくつか。『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は前評判どおり右肩上がりに最高が更新されていく、とても現代的なアメリカ青春映画。現代的な、というのは、スクールカーストみたいなものがほぼ存在せず限りなく多様性が認められているように見えるところ。うちの高校も案外あんな感じだったなとは思いつつ、とびきり明るい映画だからこそ、やはりああいう世界観からこぼれ落ちてしまう存在がいることも気になってはくる。青春映画はこういうのとめちゃくちゃ社会的なやつの両軸でいいな。中間はいらない。『思い、思われ、ふり、ふられ』『のぼる小寺さん』は前者だったので好き、『君が世界のはじまり』はどちらでもなかったのでうまくハマれなかった。

k's cinemaで『れいこいるか』という映画を観た。今泉監督が激推ししていたやつ。95年の阪神淡路大震災がテーマになっていて、その震災で娘を失った夫婦のその後の25年間を描いた作品。アンチドラマチックというか、映画が逃れられない物語性やフィクション性に真っ向から抗おうとしている作品なので、こういうテーマだとありがちなわかりやすく泣けるようなシーンは本作では全くなかった。でもだからこそ、震災やそこに生きる人物を近くに感じることができたんだよな。95年に神戸近郊で生まれた僕にとって大震災は意外と遠い存在だったから、脚色の薄いこの映画を観ている時間だけはすっと身体に染み込んでいく感じがした。どんどん巡る季節、変わらないものの存在、消えない記憶。追いかけっこをしているみたいで、ずっと追いつくことができない。でもそれでいい。

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映画の日に観た『ソワレ』に、今もまだ胸がざわつくほど惹かれている。ストーリーは破綻しまくっていると思う。『れいこいるか』なんかに感動してすぐに観たら尚更。でも、本作は荒唐無稽な逃避行劇が軸としてあるのだけど、このストーリーがなければ主人公ふたりがあれだけ輝くことはなかったのかもしれないな、なんて思ったりもする。本作の主演、村上虹郎と芋生悠が素晴らしすぎた。いつ消えてしまうかわからないほどまばゆい光を放つふたりが、とにかく美しすぎたのだ。映像もバシバシ決まってたんだよな。村上虹郎は何もしなくても売れるだろうけど、芋生悠さんの今後はめちゃくちゃ楽しみ。

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やっと『Nizi Project』を観た。シーズン1が少しかったるくて止まってたので韓国合宿のシーズン2から観たらどんどんハマってしまった。

「僕が今までに指摘したことは全部忘れて、思う存分楽しんでください」このJ.Y.Parkの言葉にすごく引っ掛かりを感じた。そんなの無理じゃね?って。でも驚くのは、ひとたび彼女たちのパフォーマンスが始まると、そういうことを全部忘れるくらい画面に釘付けになってしまうことだった。思えばアイドルというのはそういう存在である。裏には途方もない努力があって、苦労があって、もしかしたらとても舞台に立てるコンディションではないかもしれないけれど、それでも立っている。その裏側をファンが知ることはできないし、もしできたとしたら、おそらく冷めてしまう。Nizi Projectには、アイドルがデビューするまでの大変な過程(のほんの一部分)が映し出されている。だからその姿を想いながら、舞台上でパフォーマンスする彼女たちを観て「よく頑張ったねぇ」と涙することも可能だ。でも僕は、彼女たちがその苦労を“全部忘れて”楽しんでいる以上、こちら側もただそこにある煌めきだけを追っていくべきなんだろうと、そんなことを思った。それでもやっぱり、ちょっと感極まってしまうんだろうけど。

芥川賞受賞の破局、読みました。主人公の思考が鮮明に描かれすぎていてめちゃくちゃ気持ち悪かったけど、ところどころ共感の余地もあるし、同世代を捉えた作品としてこれだけ解像度の高いものはないなと思いながら夢中になって一気読みしてしまった。芥川賞受賞会見で本作の著者・遠野遥が述べたコメントも含めて好きだ。

「全然、自分ではそんな変なキャラクターにしようとか思ってなくて、逆に、もう人によってはけっこう、気持ち悪いとか、共感できないとか、怖いとかおっしゃるんですけど、そんなふうに書いたんじゃないのになって思いますね。もう少し親しみを持っていただけたらと思います」

AI的に導かれる思考回路は、データ社会の進行する現代において、まったく人ごとではない。現代を生きるマイノリティの詳細すぎる自分考察がこの作品にはあって、それは世界と地続きだと思った。

破局

破局

 

Amazonの評価がめちゃくちゃ高い『明け方の若者たち』も短かったのですぐ読めた。タイトルが物語っているのだけど、なんとなく没個性な感じが否めない作品だ(とくに『破局』を読んだあとだと…)。朝井リョウの劣化版みたいな若者語りが主軸としてあるのだけど、こと恋愛の描写に関してはそれなりに純度が高いなと思った。しっかり昔好きだった女性のことを思い出してしまったし。同じ業界にいながらカツセマサヒコという人物をまったく存じ上げなかったのだけど(そもそも僕は業界のことをまったく知らない)、ライターが書いてるというだけでちょっと鼻につく部分はありますよね(笑)。負け惜しみ100%の感想なんだけど。

明け方の若者たち (幻冬舎単行本)

明け方の若者たち (幻冬舎単行本)

 

買っていたけどずっと読めていなかった和山やまさんの漫画『夢中さ、きみに。』女の園の星』第1巻を読んだ。面白い〜〜…。男子高が舞台の前者と女子高が舞台の後者。どっちも愛しかなくて最高なんだけど、『女の園の星』はとくにすごいよかったなぁ。最初は表紙に描かれている先生が女子校の中でもてはやされる作品なのかなって想像していたら、別にそんなことなくてまっとうにイジられたり、一定の距離感のあるコミュニケーションが描かれていたり、女子校って未知の世界だけどすごく想像の範囲内の話になってる。想像の範囲内だけど、ともかくギャグセンが高くて、終始ケタケタ笑いながら読んでいた。(P91の)無言のコマが面白い作品は最強だ。

『MIU404』の最終話。一度間違ったピタゴラスイッチをやり直す、第6話の繰り返しのような展開を堂々とやってのけた。捕まった久住が病院で最後「俺はお前たちの物語にはならない」と言う。罪を犯した原因をあるひとつの過去に結びつけるという、物語の強引さに長らくドラマや映画は引っ張られてきたわけだけど、本作はそう結実しない。伊吹はガマさんに会えていないし、ハムちゃんは自由な生活を完全に取り戻したわけではないだろう。その宙ぶらりんな状態に意味を持たせるということ。野木亜紀子のドラマに描かれるその続きをこれからも楽しみにしたい。

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先週食べたカルチャー(20年7月3〜4週目)

先週あたりに観た映画、ドラマ、バラエティなどの記録。気づいたら最近またテレビ番組をよく観るようになったなぁと思うのだけど、これはテレビの面白さが再燃してきてるのか、ただ単に僕がここ1年くらい全然観てなくてテレビはずっと面白かったのか、どっちなんでしょうか。まぁどっちもなんだろうけど。ちょっと前までは千鳥の番組しか観てなかったのに、『あちこちオードリー』『ゴッドタン』『アメトーーク』『爆笑問題のシンパイ賞』『くりぃむナンチャラ』『霜降りバラエティ』あたりを欠かさず観るようになってる(こんなにTverで観れるんだぁという驚きがあって、YouTubeなど観ている暇がなくなった) 。BS日テレの漫画紹介番組『あの子は漫画を読まない。』もけっこう好き。僕がテレビを再び観だしたのはてれびのスキマさんの毎日連載記事の影響もかなり大きい(言うまでもなくこのエントリーはその影響下にある)。「面白いよ!」と誰かに言われたものから逃れられないサガなのだ。

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ちょっと間が空いてしまったけどABCお笑いグランプリはAbemaでリアルタイム視聴していた。関西に住んでいたときはたぶん一度も観たことがなかったのにここにきて初めて観ることになるってことは、僕のお笑い好きのピークが来ているのかもしれない。だからバラエティ番組もよく観るようになったんだろうけど。今さらながら毎年こんな異種格闘技戦が繰り広げられていたとは。すべて振り返っても、Cブロックが実質決勝戦くらいに白熱していたなぁと個人的には思う。特にフタリシズカの1本目ね。他のネタもYouTubeで観たりしたけど、中盤すぎの爆発力が半端ないんだよな〜。それも身体的な特技を活かしている爆発だから、なんの小細工もなしに笑えてしまう。あとはオズワルドの決勝のネタも最高だった。いろいろ技巧的にも凄いところがあるんでしょうが、伊藤の最初のほうの「逆!?」「詳しく聞かせてくれよ」の二言を2回ずつ繰り返すだけで徐々にギアを上げていく感じ、まあうますぎて惚れちゃう。

石原さとみさん主演の『アンサング・シンデレラ』第1話を観た。脚本は『グランメゾン東京』の黒岩勉さん。さいきんのドラマは1話目だけ観て離脱してしまうことがほとんどなのだけど、これはすごく面白かった。病院薬剤師という、その名のとおり病院内にある薬剤部の薬剤師たちにスポットを当てた医療ドラマで、特徴的なのは主要キャストの7、8割くらいが女性であるところ。ゲスト俳優もだいたい女性で、このドラマがいかに社会で働く女性やシングルマザーに焦点を当てようとしているかがわかる。しかもそのフェミニズム的語り口がそんなにクドくなくて無理がないのがいい。「女性だから舐められているんだろうな」と明らかにわかるような石原さとみが窮地に追い込まれるシーン、そこで凡百のドラマであればスーパーウーマンがひとり登場して『スカッとジャパン』みたいな逆転展開を見せるのだろうけど、それで解決すれば無理はないでしょう。でもそんなのいまの社会では悲しいことにあまり現実的ではない。それがこのドラマでは外堀から攻めていくというか、まわりの登場人物(主に女性)たちのゆるやかな連帯によって主人公が助けられていく様が描かれていくのが気持ちいい。第2話はまさかの第1話とほぼ同じ感じのタイムリミットサスペンス的な展開を繰り返してしまっていたのでちょっとガックリしたけど、徐々に桜井ユキさんや田中圭さんあたりのキャラクターが見えてきて相変わらず面白かった。毎回クライマックスで急に石原さとみが説教くさくなる(脚本家の顔が透けて見えてしまう)のだけはちょっと引いてみてしまうものの、テンポ感もいいしキャストもいいし、とりあえず継続視聴すると思う。

『MIU404』がやっぱりずっとすごいことをしている。第4話では社会的弱者である女性を、第5話では外国人労働者の苦悩を真正面から描いてみせていた。第2話までは主人公のふたり(星野源綾野剛)の演技にあまり入り込めなかったものの、案外このふたりのキャラクターの希薄さこそが、社会問題をドラマチックに語りすぎずまっすぐに見つめることへと役立っているのかもしれないなぁと思う。真逆のふたりがバディを組むという凸凹コンビは言うなれば2人を1人に描いているようなものだから、その完全と不完全の狭間にたたずむ(本作が描く)圧倒的な闇テーマに意識を運びやすいのだろう。すべての問題は見ようとすれば見えるけれど、逆にいえば見ようと決心しなければ一生見えない。そこに確かに存在するマイノリティの存在について「意識するかどうか」をただひたすらに問うてくるドラマだ。

試写で観てめっちゃよかった映画について2本連続で。俳優としても活躍するジョナ・ヒルが監督を務めた『mid90s ミッドナインティーズ』(9/4公開)がとーっても面白かった。90年代半ばのLAを舞台に、13歳の主人公の少年がちょっとガラの悪いスケボー友だちと交流していく話。

またしても今年何本目かの子ども映画の傑作が現れてしまった。今年面白かった映画はぜんぶ「子どもが良かった」となりそうなくらい印象的な映画が多い。お兄ちゃん役のルーカス・ヘッジズもかわいかった。

渡辺大知×奈緒『僕の好きな女の子』(8/14公開)をオンライン試写で見させていただき、「大好き!!」となっている。又吉原作の映画化で、監督・脚本は劇団・玉田企画の玉田真也。(玉田さんのさいきんの活躍が案外すさまじいのだよな…。)言ってしまえば『愛がなんだ』の男女逆転版みたいな純粋な片想い映画なのだけど、僕はこの映画の「好きという感情が立ち上がる瞬間を詰め込んだような圧倒的な瑞々しさ」に心を射抜かれてしまった。その前半の微笑ましさと、玉田企画らしさであり又吉作品らしさでもある人間関係の悲哀が現れた後半のバランス感覚。個人的にも共感できることばかりで、これは刺さる人には刺さるじゃないかなと期待している。玉田企画常連キャストに加え、萩原みのり、徳永えり、仲野大賀、朝倉あきジャルジャルあたりの邦画好きホイホイ俳優が多数出演しているのにも注目です(ほとんどがチョイ役だけど)。公開されたらレビュー書く。(『あなたの番です』をちゃんと観てなかったのでヒロインの奈緒さんに一発で惚れてしまったのだけど、くだんのサイコパス役がしみつきすぎて集中できないという感想もみました…。でもめっちゃかわいく撮られてる。)

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その玉田さんが脚本を務める(オリジナルストーリー)BSテレ東のドラマ『40万キロかなたの恋』も第1話が放送開始となっていたのでTverで観てみた。千葉雄大演じる宇宙飛行士の高村宗一が主人公。彼はある理由から人間関係を閉ざしてしまっていて、宇宙船でAIのユリ(声・吉岡里帆)と生活するほうが楽しいと思っている。そこに元恋人の咲子(門脇麦)が彼に密着取材するテレビディレクターとして現れ、三角関係みたいになっていく話らしい。withコロナの時代に合った三密を避けた撮影体制のなかでのアイデア企画という感じではあるものの、宇宙船で起こるさまざまなハプニングやAIの存在が数多のSF映画を想起させる作りになっていて面白い。声だけなのに吉岡里帆がちょっと無機質な(『カルテット』のありすのような…)怖さがあってめっちゃ適役…。全4話なので続けて観てみようと思う。

工藤遥さん主演の青春映画『のぼる小寺さん』。評判がよかったのと、キラキラ以外の青春映画はぜんぶ観なけりゃいけないという強迫観念により観賞した。前評判で聞いていたとおり、『桐島、部活やめるってよ』の“あるひとりの人物を取り巻く群像劇感”と、『町田くんの世界』みたいな主人公の驚異の純粋さ、ポストスクールカースト的なテイストのうえに形成された映画。ボルダリング部に所属し将来はクライマーになりたい圧倒的聖人キャラの小寺さんを中心に置き、まわりの人物が彼女に影響されてよい方向に変わっていくという、すごく安心して観れるほっこり作品ですね。前述の類似2作品が僕はオールタイムベスト級に好きだから、比べてしまうと正直ストーリーは薄いなぁと思ってしまった。でも、一生懸命なにかに取り組むこと、人を見つめることを全肯定するモチーフは大好きだし、こういう青春映画、マイナースポーツを扱った映画はいくらあってもいいと思う。何よりも工藤遥さんの演技というか佇まいが最高に“小寺さん”を形作っていて、すっかり魅了されてしまった。モー娘オタクだからそこは素直にすんごくうれしい。もっといろんな作品で観たい。

NHKで放送されたドラマ&ドキュメンタリー作品『不要不急の銀河』はドラマ好き・街の飲み屋好きは必見だと思う(NHKプラスではまだ観れる。再放送もありそう)。コロナによって多大な影響を受けたエンタメ業界と夜の街関連の業界の苦悩と再生を前半でドキュメンタリーとして描き、後半は又吉直樹脚本によるスナックを舞台にした家族と青春にまつわるドラマが展開されていく。前半で実在のスナックのママが発する言葉一つひとつが、後半のドラマを観るなかで心に染み込んでいく感覚があって構成としても素晴らしいし、そのあられもなく光り輝く存在の愛おしさに涙してしまう。飲み屋にはまだ頻繁には行けないけど、ずっと心の片隅で想っています。

ドラマ&ドキュメント「不要不急の銀河」 - NHK

渋谷のヨシモト∞ホールへネタライブを観にいった。7/24に行われた『PREMIUM∞NETA LIVE ONLINE』というやつ。出演していたのは、さや香、金属バット、蛙亭、ななまがり、コロチキ、ニューヨーク、コマンダンテなどなど計11組。実はお笑いライブというものに初めて行ったもんだから、1時間(だいたい4分ネタ×11)に凝縮されたお笑いの濃度に軽く溺れそうになった。こんなに面白いのかよ。間違いなくクセになってしまう。やばい。劇場なのに床に笑い転げそうになってしまう瞬間がいくつもあって、出演していたすべての芸人を愛でた。劇場は前方は3列くらい空席にしていて、それ以降も2席空けで座席を配置していたり(使っていたのは全体の1/3席くらいでしょうか)、コロナ対策はしっかりしてたと思う。ほんとにどのコンビも面白かったんだけど、ニューヨークと蛙亭には改めて惚れ込んでしまい、ななまがりの異次元の面白さにはこの日いちばん度肝を抜かれた。いいな〜もっと観たいな〜。

そのニューヨークの魅力が大爆発していた『くりぃむナンチャラ』先週と今週の回が素晴らしく面白かった。アイドルの大喜利番組を撮るというニセの企画にMCとして呼ばれるニューヨーク。アイドルにはくりぃむの2人とかまいたち山内が“座付き作家”として付いていて、イヤホン越しに逐一行動を指示していく。そしてその暴走にニューヨークが困惑していくという流れ。もとより僕は『アイドリング!!!』内の「バカリズムは誰だ⁉︎」というコーナーとか、ひなあい宮崎ロケの若林がメンバーに指令を出していくやつとかが無性に大好きなので、その暴走だけでも観てられるのだけど。今回はそこにツッコミ役としてニューヨークが加わっているから、番組の盛り上がりとふたりの手応えが反比例していく様にめっちゃ笑った。ニューヨークが出ているバラエティはできるだけぜんぶ追いたくなっている。

3回目の特番放送となった『あざとくて何が悪いの?』もとてもよかった。秋から『テレビ千鳥』『シンパイ賞』とともにゴールデンのレギュラー進出が決まっている番組。再現ドラマを観てスタジオメンバーがあれこれ言う(2回目の登場『スカッとジャパン』みたいな)番組ってなぜだかすごく嫌悪感があるのだけど、この番組は語る人が全員当事者であるといいますか、あざとキャラの第一線をいく人たちがスタジオメンバーを固めているのがとてもいいと思う。なんというか「批判」の言葉がなくて、ぜんぶ愛らしさに転換されていくんだよな。途中から気づいたけどIndigo la Endとか羊文学とか、J-Rockナンバーを随所で5秒ずつくらい挟み込む感じ、この番組のプロデューサーもこの番組自体も相当あざといなぁと思う(余談、『40万キロかなたの恋』のオープニングにもなってるIndigoの「夜漁り」とてもいい)。あと松本まりかさんのインスタライブは3、4回観たことがあるけど、ほんとやばいよね。あざといとかいうレベルではない。

 

今週食べたいカルチャー

『君が世界のはじまり』7月31日公開。ふくだももこ監督の前作『おいしい家族』が惜しくも観れてないのだけど、松本穂香、中田青渚あたりの俳優陣に惹かれている青春映画。同じく青春映画『アルプススタンドのはしの方』も評判がいいので観にいく。

クレールの膝ロメールの映画が東京都写真美術館で2回だけかかるみたいなので、絶対に行かなければ。ど平日だけども。

沙希ちゃんの瞳にうつる永田を見ていたーー後悔と絶望と祈りの映画『劇場』

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「感情に従順である人間を僕は恐怖の対象として見ていたが、そういう人間こそ尊いと思うようになった」

どうしてこういうことを直接声に出して言えなかったのだろう。
そんな日常の連続で成り立っているのが、『劇場』という映画なのだろう。本作のモノローグの多さは、そのまま永田の「後悔」の数に等しい。誕生日プレゼントを渡した際にふと垣間見た、彼女のいくつもの感情が純粋なままにないまぜになった表情。美しいなと思った瞬間に、なぜ言葉にできなかったのか。でもいつだって人間は、そういう大切な一瞬を取り逃がしてしまう生き物なのではないだろうか。それになんとか抵抗しようと、永田は演劇をやっていたのではないか。

「ねぇ気づいてないと思うんだけどさ、永くんって私のこと褒めたりしてくれたこと一度もないんだよ」

そんな言葉が重く響いた後のある夜に、永田は沙希を自転車の荷台に乗せて走り出した。まるで過去に向かって走っているかのように、自転車とそれを捉えるカメラはX軸でいうところの左(マイナス)方向に流れていく。お台場のライブハウスで汗だくになった帰り道に、沙希ちゃんが帰り道の人々を見ながら「みんな幸せになりますように」と言ったこと。それを聞いて「俺しあわせだわ」と思ったこと。沙希ちゃんに初めて会ったときに「神様だ」と感じたこと……。
このシーンがとてつもなく真に迫っているのは、沙希ちゃんの表情がみるみる変わっていくところにある。思えば『劇場』という作品は、“感情に従順である”という沙希ちゃんの表情の変化を追う映画であったのかもしれない。その表情の変化に比して、何も変わらない永田の存在が浮き彫りになっていく映画だったのかもしれない。

沙希ちゃんが大学の男友達から原付バイクをもらってきた夜もそうだった。無性にむしゃくしゃしていた永田はバイクに乗ってあたりを何周も何周もーー沙希ちゃんを無視して何周も何周も走らせてしまう。1周目では道の陰に隠れて「バァ〜」と驚かそうとした沙希が、2周目では気づかれぬことを恐れてすでに道端に出ている。3周目では無言のまま立ち尽くし、4周目にはその場からついにいなくなってしまう。
永田と沙希の関係性の変化を象徴する場面であると言えるかもしれない。永田は何も変わらず走り続け、そのうち沙希は姿を消してしまう。

永田にとっての沙希ちゃんというのは、いつ何時も味方でいてくれるそれこそ神様のような存在だった。絶対的に他人でありながら、それでいて自分の一部分でもあるような。いわば徹底的に自分に甘い客観性の象徴のようなものだったのかもしれない。そして唯一の理解者でもあるから、自分の演劇に出演してもらうことや自分の演劇を観てもらうこと、他の人の演劇を観て楽しんでいるところを見ることができなかった。観てもらわずとも絶対的に理解してもらえているのだから、わざわざ作品を観てもらう必要がなかったのだ。いうまでもなく絶望的な関係性なのかもしれない。

その客観性という偶像がついに破れ果てるのが、ラストシーンの本作らしい演出によるところ。彼らの日常がたちまち演劇世界へと開かれ、その“劇場”の客席には沙希がいる。いわば永田の心の中(=部屋あるいは舞台上)にいた沙希が、心の外(=客席)に出ていったとも捉えられる場面だ。永田も沙希も、もう独り立ちしている。永田は、心の中に留めていた感情をそのまま取り逃がすことも少なくなるだろう。沙希は劇場から(右手方向=未来に向かって)外へ出て、歩みを進めていくのだろう。

「演劇ができることってなんなんだろうって、最近ずっと考えてた。そしたらさ、全部だったよ。演劇でできることは、現実でもできる。だから、演劇があるかぎり絶望することはないんだって。だから、今から俺が言うことはある意味ほんとのことだし、ぜんぶできるかもしれないことね」

そうやって語られだす、あるとき偶然出会った男女の未来に対しての祈り。

先週食べたカルチャー(20年7月2週目)

先週観た映画、ドラマ、バラエティ、YouTube、コンサート、読んだ漫画の記録。めちゃくちゃ好きな漫画に出合って心が洗われたのと、久しぶりにハロプロのコンサートに行けて幸福感に満たされた1週間だった。

* * *

劇団・ヨーロッパ企画製作の映画『ドロステのはてで僕ら』を観た。『サマータイムマシンブルース』にも通じるような、さらっと楽しめてあっと驚ける時間超越系SF。物語のSF設定については言葉で語るより実際に観るほうが早いのだけど、まぁ要するに、「2分後の世界」が見えてしまう“タイムテレビ”が突如現れ、そのたったの2分が徐々にスペクタクルに世界を広げていく、藤子・F・不二雄的世界観のもとに構築された作品。物語は半径10メートル以内で繰り広げられながら、最後にはポッと恋の雰囲気も漂う楽しい映画だった。朝倉あきさんが出てるのが観る決め手だったのだけど、ゲスト感がそのまま役に活きていて相変わらず声も良くて最高でした。<現在>が<未来>や<過去>に引っ張られてしまうストーリーの感じは普通に面白くて、主人公たちの最後の選択まで観て『メッセージ』まで想起してしまった。

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SFづいたそのままの勢いでAmazonPrimeの『ヴァスト・オブ・ナイト』を鑑賞。ぜんぜん大作ではないし元はインディーズ製作のSF映画でありながら、本国アメリカで評価されTwitterでもけっこう評判がよくて気になっていたやつ。これがなぁ、監督の“SF映画大好き感”が漂う冒頭はさっぱり物語に入り込めなかったのだけど、ストーリーが一気に動き出す20分くらいのところからグッと引き込まれてしまって。物語内の時間とほぼ同じように映画の時間が進んでいくから、緊張感と没入感が凄かった。そして観終わってしまうと、冒頭の20分もめっちゃ愛おしい時間だったなと思ってしまう。舞台は1950年代のニューメキシコ、若きラジオDJと電話交換手が奇妙な現象に遭遇するという物語。場面転換の際の地を這いずるようなカメラワークがかっこよすぎる。何かが映り込みそうなワクワク感に連れて行かれ、訪れるラストのエモーションったら。

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『花と頬』という漫画をAmazonでたまたま見つけてジャケ買いしたら、これがまぁほんとに素晴らしい作品でした。最近は1巻完結の漫画ばかり読んでいるけど、今まで読んだなかでも一番好きかもしれない。ストーリーは言ってしまえば単純なボーイミーツガールもの(正確にはガールミーツボーイ)でありながら、こんな描き方あったのかよ、と感心してしまう絵の画角、心情の機微の捉え方、人物描写の奥行き、人の語りと余白、サンプリングカルチャーのディテールなど良きところの数々……。読めば読むほど、歳を経れば経るほど違う味がしてくるのだろうという圧倒的な豊かさ。映画っぽいと感じつつも、この読後感は漫画でしか味わえないだろうなっていう、鮮やかな白の空間に満ちあふれていたと思う。ルーズリーフをLINEのチャット画面みたいに使う冒頭から好みドンピシャだったんだよな。

花と頬 (楽園コミックス)

花と頬 (楽園コミックス)

  • 作者:イトイ圭
  • 発売日: 2019/09/30
  • メディア: コミック
 

PFFのオンライン映画祭で山中瑶子監督の『あみこ』と『魚座どうし』が上映され、そのあとに池松壮亮くんと監督との対談があった。映画はどちらもすでに観ていて傑作だってことは何度も言ってるのだけど、今回はこの対談の内容が素晴らしすぎて終始ホクホクしていた。23歳にして既に「映画」を完成させてしまっている気鋭の監督と、30歳を目前にした俳優の対談。映画の話から徐々に「生活」と「人生」、コロナを経た世界に生きるものとしての「言葉の頼りなさ」や「正しさとは何か」という命題、そして最後に「映画をつくることの意味」を探り合うような内容になっていて、30分くらいしかなかったけどコロナ禍のいろんな難しさがここに集約されているような会話の豊かさがあった。『チェルノブイリ』や『夜と霧』、『はちどり』という作品の名前が飛び出したり、(山中監督が3月に行くはずだったという)アウシュビッツに想いを馳せたり。実は『花と頬』にも『夜と霧』がさらっとだけど重要なモチーフとして出てきていた(恐らく『花と頬』というタイトルのモチーフにもなってる)。

(『はちどり』の話題から)

池松:「負の遺産」みたいなものって考えてます? ある意味僕は『あみこ』にも『魚座どうし』にも、こうなんて言うのかな「第二世代感」?何かこう上を見つめて未来を見つめてないとああいうものは生まれないと思うんですね。なんかそういうことって考えたりします?

山中:そうですね、考えますね…。私は『夜と霧』っていう本がバイブルの一冊なんですけど。『チェルノブイリ』を観た後もずっとそういうことを考えてましたし。時代も国も超えて、言わば直接的には関係のないところ、いや直接的に関係ないわけではないんですよね、そうなんかこう、実際そこにいたわけではない自分だけど、その「負の遺産」っていうのは全く関係ないわけではなくて。絶対に人間の根底に影響を及ぼすものというか。

世界で起きている問題は自分の生活と切り離せないんだというまなざし。現実の苦しい世界を描いた『魚座どうし』のなかで唯一“いい大人”として登場する人物について、なぜ彼を登場させようと思ったのかと池松くんが聞いたときに山中さんは「まぁ…わりと私は世界は過酷で不条理なものだと子どもの時から一貫して捉えてはいるんですけど、にしてもそれだけだとちょっとむごたらしすぎるなぁと思って、どうかあの少年にも心寄せられる人がいなきゃいけないなぁと思って…。」と答えていた。世界は不条理だけれど一点の美しさも同時に存在しているという価値観に、僕が敬愛する坂元裕二の空気感が漂っていたし、その彼女がつくる映画をずっと観ていたいなと思わされた。ほんとうにいい対談でした。

家でホウ・シャオシェンのレッドバルーンを観た。台湾の巨匠が傑作短編映画『赤い風船』にオマージュを捧げてフランスで撮った映画は全編に優しさと温かさが溢れていて、ストーリーなんかはあるようでないけどずうっと観れてしまう、観たいと思わされてしまう不思議な作品だった。たぶん生活の描写が素晴らしかったんだと思う。(代表作『恋恋風塵』がピンとこなかったので……)ホウ・シャオシェンの映画を好きになれる日が早くきてほしい。

『MIU404』第3話。脚本も演出も役者もかっちりハマって急激に何段階かギアを上げたターニングポイント回でしっかり度肝抜かれた。ここまでの1、2話の展開にあんまり満足してなかったから尚更っすね…。前田旺志郎鈴鹿央士、山田杏奈という大好きな若手俳優陣の登場からしてすでにズルいのに、岡崎体育と挙げ句の果てに菅田将暉まで出してしまうんだから(黒川智花も重要そうな役回り)。ストーリーも急に真に迫ってきて、エンタメ的な語り口ではありながら(現在公開中の傑作“いじめ加害者映画”)『許された子どもたち』のような社会派映画にもアプローチできる鋭さを持っていて、やっぱり脚本・野木亜紀子さんの視野の広さとストーリーテリング力はバケモンだなって何十回目の改めてで気付かされる。米津玄師の『感電』にもようやくハマりました。

『ニューヨークのニューラジオ特別編』にピスタチオと若手コンビ・マリーマリーが登場。ピスタチオの売れるまでの紆余曲折とか若手男女コンビのリアルな悩みをニューヨークが軽妙に聞き出していく感じがめっちゃ面白いんだけど、よく考えたらこれ「若手芸人版の『あちこちオードリー』やん」という考えに至った。ていうか普通に気づくのが遅かっただけだけどまじでそうなんだよな。いくらテレビで第7世代を相手取ってヒールを演じてみせても本人たちは案外“いいやつ”だし人にめちゃくちゃ興味があるから、誰がゲストに来ても盛り上がってしまうんだ。若手芸人たちから一定の信頼を勝ち得ているから『アメトーーク』的な企画もぶち上げてしまえるし、YouTubeにどんどん脂がのりだしてる。一方で今週も『さんまのお笑い向上委員会』とか『爆笑問題のシンパイ賞』とかで第7世代のやっかみ役を見事に体現してみせていて、(大衆化は難しいまでも…)お笑い好きはもう全員ニューヨークを認知してるし大好きなんだろうなという気がする。だからテレビで売れようとしすぎず、このままのペースで芸人YouTube界を盛り上げてほしい…というのが個人的な希望。ぜったい100%売れるよなぁ。

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『THE 芸人プリズン』という、オードリーとアンタッチャブル大喜利番組がめっちゃ面白かった。とりあえず土曜の昼2週だけの特別番組なのかな。大喜利で100個笑いを取れないと帰れないというストロングスタイルのお笑い番組アンタッチャブルがわちゃわちゃしてるだけで楽しくてうるさいけど、その様子を「2人そろうと漫才が始まっちゃう感じが鼻につく」と大喜利解答に利用する若林に笑った。

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Hello! Project 2020 Summer COVERS ~The Ballad~』ハロプロの夏のコンサートは例年とは全く異なり、ハロプロ楽曲以外のJ-POPバラード曲をメンバー一人ひとりが歌唱するという内容に。その中野サンプラザ公演に当選したので数か月ぶりにリアルの音楽ライブに行ってきた。ずうっと着席で歓声もなし、いつものハロコンとはまるで状況が違ったけど、歌声に癒されまくる幸せなひとときだった。僕が観たAチームの公演はトップバッターから本命の段原瑠々さんが出てきたり、中学3年生の少女・岡村ほまれちゃんが浜崎あゆみの「M」をしっとりアイドル感も残しながら歌い上げていたり、ラストに小片リサさん(つばきの推し)が『いつ恋』の主題歌でもある「明日への手紙」を歌ってビシッと締めていたり、最初から最後まで胸熱な公演でした。ライブに行くと、ライブに行きたくなる……(あとコロナ自粛明けの「五丁目ハウス」も最高に旨かった。感染防止対策がしっかりしてる)。

フワちゃんが出演した徹子の部屋が無条件に元気出るやつだった。黒柳徹子を見事人心掌握してしまっていて。トットちゃんのことがまじで大好きだったらしく、放送の終わり際に「帰り道会う人ぜんいんに自慢する。街のおばさんにもおじさんにも自慢する。いっつも犬を散歩させてるおじさんの知り合いが近くにいて、犬の名前は“しじみちゃん”っていうの」って言ってた。ほんとアニメのキャラクターみたいなエンターテインメントな生き方を地で行ってる人だなって思った(もう何度かインタビューさせてもらってるけどその印象はずっと変わらない)。大好き。

tver.jp

 

今週食べたいカルチャー

ABCお笑いグランプリABEMAで7月12日放送。

『のぼる小寺さん』モー娘。工藤遥さんが主演してる青春映画、評判いいので観なくては。

『劇場』7月17日公開又吉直樹原作、行定勲監督作がついに劇場公開。試写で観て松岡茉優の演技に心打ち抜かれたので、もう一度観たい。

先週食べたカルチャー(20年7月1週目あたり)

先週観た映画、ドラマ、バラエティ、YouTube、ラジオの記録。いじめ加害者を描いた映画『許された子どもたち』とNetflixの『呪怨:呪いの家』にやられた。下に書いてないのだと、霜降せいやの影響で今さらMCバトルにハマってしまってる。言葉のあんな操り方ずるい。とりわけAuthorityが好きです。

* * *

ダイアンのYouTubeチャンネル(『ダイアンのYOU&TUBE kissin’you ’85』)に夢中なのです。とくにコロナ自粛が明けたあとの3本の動画が素晴らしい。問答無用に笑ってしまう。関西のテレビでも昔からよく見ていながらダイアンの面白さって実はあんまりわかってなかったのだけど、“リモートジェンガ*1の企画なんかはユースケの駄々こねる感じとかそれに付き合ってあげる津田とのゆるふわで息のあった関係性が垣間見えて、ダイアンの良さってこれなのかもしれない、と思ったりした。ラジオ(よなよな)が抜群に面白いらしいんで、いつか聴いてみたい。

先週のカルチャー日記で、そろそろ聴き始めないとな、と言っていた空気階段の踊り場』TBSラジオ)をようやく。とりあえずPUNPEEが表紙の「QJ Vol.147」の踊り場特集ページを読んで、そこでまとめられていた恋愛ヒストリーにまつわる5週分だけをラジオクラウドで一気に聴いた。鈴木もぐらは番組のなかで「いま熱烈に恋をしている人」の話を突然し出し、その回の最後に電波を通じて彼女に告白する(2017.9.9→2017.9.17)。その様子を一歩引いたお笑いの目線で見ていた水川かたまりが、自身の恋愛話になると急に周りが見えなくなる、そのエグみが出るほどの人間臭さが彼らの魅力なのだろう。そのすべての軌跡がドキュメンタリーとして番組に刻まれているのだろうということが、かたまりが彼女にプロポーズする回(2018.10.12→2018.10.26)を聴いただけでなんとなく伝わってきてしまう。これは面白い。ある回で発せられる「でも後悔させてくれよな!って感じです」という言葉。こんなの聴くことになるとは思わなかったぞ……。

浅草に落語を観にいくという高等な遊びをしてきた。座席は現状の映画館と同じくひと席開け。お客さんもまだそんなに戻ってきていないのだろうな…という数だった。落語ってすごいのな。11時くらいに行けば16時半くらいまでぶっ通しで観れるみたい。さすがに長いし特段目当ての落語家さんがいたわけでもなかったので途中で出てしまったけど。なんかぜんぶ面白かったし、うわぁテレビ観てるみたいって感じですごかったんですが、とりわけ三笑亭夢丸さんの『庭蟹』が楽しかったなぁ。今度は神田伯山目がけて行きたい。

『美食探偵』が全9話を完走。4月開始の民放ドラマでは真っ先に最終回を迎えた。撮影開始時期が早かったりしたみたいだ。日テレ日曜10時半のドラマって今まで自分はお呼びでないというか、まったくハマるタイプの作品がなかったのだけどこれはめちゃくちゃ面白かったぞ。ストーリーは言うなれば『スターウォーズ』みたいな光と闇の戦いって感じで王道。特筆すべき内容はなくただただファンタジーな印象を持つものの、役者が中村倫也小池栄子武田真治志田未来など演技に安定感がある人が集まっていてストレスがない。そしてその演技派たちを押さえつけてしまうヒロインの小芝風花がまぁ毎回圧倒的なアクトを見せつけてくれて、観続ける意味がかなり明確になっていった。こっからめっちゃ売れてほしいな。

『ぼる塾チャンネル』で日光旅行のドライブトーク*2が上がっていた。喋ってることぜんぶがコンテンツになるなんて、物凄い素材量だな。いやはや、楽しい旅行のあいだもずっとカメラを回してくれて、それをエンタメとして消費させてくれて、彼女たちには多大なる感謝をしなければいけない。『空気階段の踊り場』もそうだろう。私たちは彼女たちの人生の一部を消費してしまっているという意識は、リアリティショーの勃興以後常に持ち続ける必要があると思う。初期のモーニングの話で盛り上がるあんりと田辺さんと、ついていけず自由に遊び出すはるちゃん最高だったな。なんか彼女たちの会話を聞いてたら昔好きだった『セレぶり3』(セレブになりたい女性3人がただだべってるシットコム)というドラマを思い出して、YouTubeでちょっと観てしまった。グータンヌーボとかもよく観てたし、女性の会話って飽きない。

ララチューン』宝塚記念企画*3。この週は「しもふりチューブ」でも宝塚記念企画があったけど(相変わらず最高!)、10万賭けて思わぬ結果になったニシダのイッてしまってる目がドキュメンタリーすぎる。「インターハイのハイタッチ」に爆笑。

YouTubeの話題が続きます。YouTubeばっか観てると過去にハマったエンタメとかがぶり返してしまったりする。赤西×錦戸のYouTubeチャンネル『No Good TV』佐藤健山田孝之をゲストに招いたワンナイト人狼動画*4がいくつか挙がっていて、めっちゃ観てしまうんだよな。まず佐藤健くんが人狼マニアということで一定のクオリティが担保されつつ、他も全員役者だから見応えが半端ない。実は人狼ゲームっていうコンテンツを僕は黎明期の頃からずっと好きで、どっちかっていうと自分がやるよりも上手い人のやつを観るのが好きなのだけど。なかでも麻雀プロたちがやる人狼が大好きだった記憶。

渋谷HUMAXシネマズで『許された子どもたち』という映画を観た。この映画は傑作とか駄作とかの言葉で評価するのは難しい。でもそれなりに多くの人に観られるべき作品だと思うので、興味がある人は観てみてほしい、と言いたい。監督の膨大な研究量(エンドロールで流れる参考文献の数はもはや論文の領域)と、その思考の先を映画で追究しようとする圧倒的な熱量を帯びた、“いじめ加害者”を描く濃密な映画。普段目を逸らしがちなこういう現実はやっぱり映画館という空間でしか観られないから、ほんとうに観れてよかったと思う。ほとんどの登場人物が子どもなのだけど、その子どもたちの演技がめちゃうまくて没入させてくれる。とくに教室の討論のシーン。志向するところは坂元ドラマ『それでも、生きてゆく』に近いけど、テイストはかなりしんどいので観るのには元気と勇気がいる。そういえば濱口竜介『PASSION』の教室シーンも思い出した。悪意はどこから来て、どこへ行くのか。

しっかりと記録しておく必要があるのは、『魚座どうし』、『レ・ミゼラブル』、『もみの家』、『はちどり』、『許された子どもたち』と、2020年上半期の映画に多くの“子どもたち”が描かれていたこと。社会で生成された毒物が下のほうに沈殿し、爆発を強いられてしまう、子どもたちの映画が多くあったこと。上記に記した映画はぜんぶ傑作レベルの完成度が高い作品だった。

『あちこちオードリー』のハライチゲスト回、後半戦。ネタを作る側(若林・岩井)と作らない側(春日・澤部)の意見がぶつかり合う壮絶な回に。ネタを作らない側はもう漫才師ではなく“受取師”だ、とか言い出すあたりで普段から抱えてきた不満が止まらずだいぶヒートアップするのだけど、その様子は完全に夫婦喧嘩みたい。あのテンションで男性に不満をぶつける男性の姿を強く目に焼き付けておきたいなと、たぶん番組の趣旨とは違うところで勝手に勉強になった。

その若林が企画を持ち込んだというアメトーーク』“小物MC芸人”。いやぁ、これは面白すぎて笑いすぎて疲れた。特番がレギュラー化しそうになるときには必ずアンミカがゲストにやってきて、「元彼がスパイだった」話をしてくれるという小物MC芸人のあるある現象。これを“アンミカ・スパイリーチ”とネーミングした川島さんが天才でした。

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続けて観た先週の『テレビ千鳥』は一転してアメトーーク!反省会」企画。はんにゃ金田とアルピー平子が登場し、アメトーークでのまじでグロすぎるスベりシーンを再検証していくという地獄のような番組だった。でもこれができるのって本当に千鳥しかいないよなっていつも感心してしまう。テレビ千鳥でも相席食堂でも反省会企画が成立するのは彼らのツッコミ力があるからだろうし、元より相席食堂は人が失敗してちょっと恥ずかしいと思ってるところを千鳥がツッコむことで笑いに変える番組。人がつまずいたときに救済を与えるのが千鳥のお笑い。今回の企画もめちゃくちゃ体力が必要だっただろうけど、金田と平子は結果的にすごく面白くなっていたので、千鳥はほんとにすごいなって思った。

『MIU404』の第2話。あぁ、やっぱりこのドラマ結構キツい可能性が出てきた。カメラのピントの合い方に違和感があったり、顔のアップをあえてだろうけど画面の端に持ってきたり、ちょっとしたところでノイズが多くて見づらい。なんで警察の物語にしてしまったのだろう。ツッコみどころも気になってしまうから観ているのが少ししんどい(期待値が高すぎるが故の指摘であって、間違いなく面白い水準には乗ってる)。

きみの鳥はうたえる』の三宅唱が監督したことでも話題を呼んだNetflixオリジナルドラマ『呪怨:呪いの家』が公開されていて、これはビンジウォッチしてしまうほどに引き込まれた。と言っても第4話までをまず一気見して、そのときにはもう深夜2時くらいだったから、これは全6話観終えてしまうと寝れないかもしれないと思って次の朝に残りの2話を観たのだった。それくらい怖がりでJホラーなんてほぼほぼ観たことがないくらいだったのだけど、30分×全6話という気軽さもあって一瞬で観てしまった感じ。呪怨シリーズももちろん初めて。その原点をめぐる話ということはあれど、話は全然追えた。

本作、もちろん怖さもあるけど、それよりも惨さ、グロさのほうが強い気がする。園子温のグロ映画とかのほうがテイストは近いんじゃないだろうか。こういうホラー映画を評するときに「心霊的な怖さというより人間的な怖さがあって……」とかよく言うけれど、それともまた違う、人間の本質的な邪悪成分も垣間見える。第1話のあるシーン(猫)に象徴的なように、本作は「共鳴」の物語なのだろう。悪意は共鳴し、連鎖し、呪い、怨念となって蠢いていく。普段ホラーをまったく観ない&呪怨のストーリーを1ミリも知らない僕個人からは、悪意の伝染という意味で『恐怖分子』を、時間・空間の融解という点で『インターステラー』を思い浮かべたりもした。そういう豊かさも込められている。グロ耐性が無い人に加えて、とりわけ女性が観るのはキツい作品なのだろうなということが予想できる。それは第1話からして明らかで、とても危険な作品だということは言っておきたい。三宅作品もっと観てみよう。*5

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ハロプロソロフェス!』をCSテレ朝チャンネルで。ハロプロメンバー52人が、それぞれに過去の膨大なハロプロ楽曲アーカイブのなかから1曲を選び、練習して披露するという企画。ハロプロ研修生の実力診断テストに似ているようで、独特の緊張感がメンバーの表情からうかがえた。5時間ぶっ通しの番組を飽きずに観続けられたのだけど、なかでもBEYOOOOONDSの平井美葉さんのパフォーマンスが半端なくかっこよかった。平井美葉さんと言えば「ニッポンのD・N・A」という楽曲のイントロラップの印象が強くて、歌もダンスも卒なすこなしてるようなイメージ。もちろんダンスのレベルはハロプロ内でも随一なのだけど、ちょっと抑えてんじゃないの?ってくらい、空手のように型をはめていくダンスにちょっとだけ物足りなさも感じていた(僕の見方が悪いとしか言いようがない)。それが分かりやすく完全に爆発してしまったのが今回だった。こぶしファクトリーの「Come with me」を選曲。ジャニーズか宝塚歌劇的なフェロモンがだだ漏れでしたね。

 

今週食べたいカルチャー

PFF・オンライン映画祭』7/8(水)21:00〜 『あみこ』、『魚座どうし』トーク:山中瑶子監督×池松壮亮*6 上にも書いたけど2020年上半期の影の重要作『魚座どうし』を再び観れる機会がやってきた。『あみこ』も再確認して、山中監督の天才ぶりに打ちのめされたい。池松くんとのトークも楽しみ。

Hello! Project 2020 Summer COVERS ~The Ballad~』7月11日の中野サンプラザ回が当選したので難なく開催されれば久しぶりにライブへ行ける。これはハロプロメンバーハロプロ楽曲以外から選曲するバラードカバーライブ。これまた初めての取り組みだから楽しみたい。

よしっ都知事選行くぞ。

www.tbsradio.jp

*1:https://m.youtube.com/watch?v=8QGuOS5rchA

*2:https://youtu.be/JnKfl116-eg

*3:https://youtu.be/eRNZCjK47PE

*4:https://youtu.be/ea45slxxn7I

*5:毎回エンドロールで“神の子池”という北海道の景勝地が映し出されるのだけど、最近たまたま北海道道東の観光スポット!的な記事を書いていてよく目にしていたからハゲるほど驚いた。あの音楽もすごく不気味。

*6:https://pff.jp/jp/news/2020/06/pff_online2020.html

先週食べたカルチャー(20年6月4週目あたり)

先週観たバラエティ、映画、ドラマ、雑誌、YouTubeの記録。

* * *

2週だけのかまいたち冠特番『かまいガチ』の1週目が放送されていて(2週目は7月4日深夜)、相手を引き立たせながら自分たちも引き立つという中々かまいたちらしさが出ている番組だった。今回はゲストとしてやってくる芸能人の悩みを聞いて、名言っぽい言葉でアドバイスをするという企画。自粛中のかまいたちYouTubeで名言企画をやっていたから、その派生という感じだろうか。なかでもアインシュタインとの絡みが楽しい。山内と少し交友があるRADWIMPS野田洋次郎に番組のある音楽を作らせたスタッフに対して、「今後、勝手にああいうのするのやめてもろていいですか」と山内。笑った。

3月に試写で観た『はちどり』*1がようやく劇場公開されていたので再見しにユーロスペースへ。今のところココでしかやってなくて、けっこうほぼほぼ満席が続いてるらしい。個人的にはここ10年で観た青春映画のなかでも一番ってくらいのレベルで好きな映画。若草物語と本作が上映される世界がやってきてほんとうによかったなと思う。14歳の少女の「浮き沈み」としか言いようがない心の揺れ動きが非常に鮮明に映し出されていて、ときおりその振幅が社会と触れ合ってしまう瞬間にハッとする。部屋の階を間違えるくらい画一的で普遍的な団地で、地団駄ダンスをする彼女に届いた一個の小包。どこにでもあるけどあそこにしかなかった大切で苦しい記憶。自然すぎてもはや言及する必要はないけれど、女性の描き方の多彩さにも驚く。韓国、キム・ボラ監督の長編処女作。心の機微に触れる繊細さと時代の雰囲気を掴む大胆さがすでに共存してしまっていて、『ヤンヤン夏の想い出』『誰も知らない』をはじめとするいくつかのアジア映画を思い浮かべたりもしたけどこのテイストは唯一無二のものだと思った。多くの人に観られてほしい。

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ちなみにではありますが「2020年上半期ベスト映画」を10個挙げておく。

①ジョン・F・ドノヴァンの死と生 ②はちどり ③架空OL日記 ④パラサイト半地下の家族 ⑤ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語レ・ミゼラブル ⑦もみの家 ⑧ミッドサマー ⑨ラストレター ⑩魚座どうし(別枠:恵比寿映像祭で観たドキュメンタリー『二重のまち/交代地のうたを編む』)

例年のペースからはだいぶ少ない35本しか観れてないけど、満足度的にはだいぶ高い。特に上の3本とか、オールタイムベスト級の好きな映画が多かった。

ニューヨークのYouTubeチャンネルにて「ウーバーイーツでバイトしてる芸人」*2企画。東京では街を歩いていると10秒に1回くらい自転車に乗ったUber eats配達員を見かけるのだけど、そうなるともちろん芸人さんとかもやってるわけで。自分は利用したことがないので全くわからないのだけど、配達員側から見たウーバーイーツあるある、珍事件、裏側が語られていて面白かった。こういうアメトーークのローカル版みたいな企画もっとやってほしいな。女性の配達員はほぼ見かけないという話、こういう状況下でも男性にはわかりやすい職があって、女性にはないのかもしれないなと考えさせられる。

坂元裕二脚本の新作ドラマ『スイッチ』は、最初けっこう微妙かな(というか『最高の離婚』の下位互換感がすごすぎて)と思ったけど徐々にエンジンがかかってきて、1時間半経ったあたりで急に完全体の坂元ドラマが現れてしっかり度肝を抜かれた。序盤から中華の円卓であったり観覧車であったり“円環”を意識させているのだけど、それが松たか子が持つ“スイッチ”と阿部サダヲの7回にも及ぶ救済という人生の円環に繋がっていくとは。友だちと話してるとこのドラマは“秘密”についての話だと言っていて、カルピスの好みの配分とか両親の死とか、暗黙のうちに相手の感情を読み取る瞬間など、確かに相手の生態を知れば知るほど深まる人間関係のあり様が描かれていたと思う。でも中村アン眞島秀和が彼らの横に配置されているのは、そうした閉じた空間(=円環)から抜け出す美しさを描こうとしているからではないだろうか。再び円卓に立ち返るラスト。たぶん同じことをあの4人は繰り返しながら、やがて松たか子眞島秀和と、阿部サダヲ中村アンと結ばれていったほうが結局は幸せなんじゃないかなと何となく思った。ずっと同じことを繰り返していくのでもいいか。ぜひ連ドラ化してもらって、岸井ゆきのにももっとスポットを当ててほしい!

YouTube特集の『クイック・ジャパン』最新号*3。記念すべき150号目で僕も書いているのだけど(4号連続、やったー!)、他のページだと空気階段・水川かたまりの書き下ろし小説「アサミ〜愛の夢〜」がめっちゃ面白かった。ちょっとエッチで予測不能なロマンティックSF(?)小説。今度YouTubeで朗読劇もやるみたい。鈴木もぐらは高円寺に帰還したらしいし、そろそろ『空気階段の踊り場』に手を出したほうがいいな。

爆笑問題カーボーイで先週の霜降りANN0についての話題。「逆境を笑いで跳ね返した」と美談化されていることに苦言を呈しつつ、「そんな美談じゃないから。『笑いで返した』とかそんなことじゃない。おかしくなってボケまくって、ボケというモザイクで股間を隠しただけ」と現実に引き戻す太田さん。確かにそうで、すぐに私たちって簡単な話というか美しい話にしたがるよねってちょっと反省。「ただめちゃくちゃ面白かった」、それだけでいいのだ。それ以上の話については今週の放送冒頭でじっくり話していたしね。

今週の『相席食堂』はようやく収録が再開し、コロナ自粛前にギリ撮っていたというロッシーと須田亜香里のロケを放送。「相席食堂ってこんなんやった?」とのノブの発言どおり、訳の分からない展開に(笑)。まだ続くんかいと思ったけど来週の放送も楽しみ。

脚本・野木亜希子(『逃げ恥』『アンナチュラル』『けもなれ』など)×演出・塚原あゆ子(『アンナチュラル』『グッドワイフ』)のTBSドラマ『MIU404』の放送がようやく始まった。刑事ドラマだからストーリー的には『アンナチュラル』路線で、軽妙でスピーディな塚原演出によって気持ちいい二転三転ドラマが展開されている。というのを期待してたけど、第1話の時点ではあんまりうまくいってないというか、それこそ『アンナチュラル』の下位互換感、二番煎じ感が……。とくに星野源の演技と米津玄師の主題歌、安っぽいカーアクションがちょっと微妙…。『日本で一番悪い奴ら』と『最高の離婚』での性格を両方感じる綾野剛のキャラクターはいい感じなので、あまり期待しすぎず面白い回が2、3個あれば嬉しいなくらいのテンションで観ていきたい。

 

今週食べたいカルチャー

『あちこちオードリー』ハライチゲスト回の後半が6月30日に放送。先週の回も面白かったけど今週は相方への不満が爆発するみたい。

ハロプロソロフェス!』CSテレ朝で7月4日放送。その次の週には観客を入れてのライブをやるということでその再始動の早さに驚きつつ、ハロプロ過去楽曲を現メンバーがソロで歌うというこの企画もめっちゃ面白そう。倍率えぐそうなライブのチケットも当たっててほしい。

『カセットテープ・ダイアリーズ』7月3日公開、ブルース・スプリングスティーンに救われたパキスタン移民の少年を描いたイギリスの青春音楽映画。前評判がめっちゃよくて楽しみ。

あと映画館で『もののけ姫』やってるので観たい。