縞馬は青い

縞馬は青い

映画とかドラマとか、好きなもの

先週食べたカルチャー(21.1.1-1.7)

今年は映画を観るときも漫画を読むときも、雰囲気で惹かれない場合は「作品のテーマ」をしっかり理解し興味をもったうえで作品選びをしたいと思う。そういうことを考えてないとすぐにFilmarksの点数に左右されてしまうので…。*1さいきん資本主義の怖さがようやくわかってきたので『人新生の「資本論」』を買って読んでいる。

-『POP LIFE: The Podcast』#126 資本主義リアリズムを飛び越える西村ツチカ最新作
新年一発目、漫画回4連続エピソードの最終回。めちゃくちゃ面白かった。漫画回は語り自体が豊かすぎてほんとうにハズレがないし、実際にレコメンドされている漫画を読んでさらにホクホクできる。「いまの時代はギブ&テイクではなくギブ&ギブでしょ」という資本主義社会の欠陥もろもろを内包したようなタナソーの主張に妙に納得して、ひとまず吉田秋生の『ラヴァーズ・キス』と高松美咲『スキップとローファー』を買った。

- 濱口竜介『ハッピーアワー』
1月2日にイメージフォーラムで5時間の映画を観るという、25年生きてきたなかでいちばん贅沢な正月暮らし。『ハッピーアワー』自体は2度目の鑑賞だけど、1度目はCS放送で観たので劇場鑑賞ははじめて。大好きすぎてオールタイムベストに据えていた映画だ。
2度目を経ると、(あれ、こんなに後味の悪い映画だったっけなぁ)と驚いたり、(冒頭のワークショップちょっと退屈だなぁ)とかちょっとよくない印象も抱いたり。ひとえにそれは、1度目の『ハッピーアワー』鑑賞が充実しすぎていたからだと思うんですが。
もうどうにも元に戻らない崩壊を経験しないと、人間は深い関係を構築できないのか。それならばずいぶんと先行きが危ういなとちょっと人生が不安になりながら、濱口竜介の映画を観るといつもどおりその人間関係に強く憧れを抱いてしまうのでした。

1度目に観たときにFilmarksにメモした内容を読み直してふむふむ言った。
「“分かっている”、“繋がっている”と思いきや実は繋がっていないということが明らかになる。そしてそのことによって、急に足元がグラつきだす。
何度も何度も、正中線と言う名の「心」が対面する瞬間がある。それでも、その心を繋ぎとめておく能力は私たち人間には備わっていないから、いとも簡単に関係は浮遊する。心は彷徨いだす。」

- ユン・ガウン『わたしたち』
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小学4年生の少女たちの、陰湿ないじめの発端を見るような微妙な関係性を描いた韓国映画。親からの愛を受けなかった転校生の少女と、友だちからの愛を受けなかった少女の邂逅から物語は始まる(その意味では『少女邂逅』に似ているか)。それは限りなく奇跡に近い輝きに満ちた出会いだったけど、ひとつにはやはり階層の差が、惨たらしくも彼女たちを離れ離れにしてしまう。
耳に当てられた拒絶のヘッドホンは首に落ちることで円をなし、やがて連帯のブレスレットを形成する。そうした端々の演出も繊細で、思わず少年時代の自分の記憶を喚起させられてしまった。ちょうどあの頃、似たような関係性になってしまった友だちがいたな…。傷を与え合うドッヂボールではなく、愛を与え合う対話を。それにはあとひとつだけの、自分からの愛と勇気が必要だ。

-『マヂカルラブリーno寄席』
1月2日の時点でTwitterのTLで4人くらいがツイートしていたので、気になって配信ライブを購入。いまではTLの半数が観ていそうなくらいバズっている。
みごとに新年初爆笑させてもらった。ガヤで完成するランジャタイの漫才がとにかく最高。「伊藤、友だちいないんだろ? そいつ(国崎)を手放せないんだろ?」に笑い、ふたりだけだった空間に言葉が投下され交わっていくようすに哀愁すら感じた。

-『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』
自分にこんな努力や対話や仕事や家事ができるのかと考えはじめると、結構つらいなと真面目に落ち込んでしまった。対話はとことんしたい、でもそれでは解決できないお金のなさに絶望する。年末最後までせっせとひとりで仕事する平匡さんの描写が苦しすぎた。あそこまで頑張っているのになぜ彼女たちは一緒に暮らすことができず、平匡さんは子どもの成長を見ることができないのか。

TVODコメカさんがツイートしていたけど、「疎開」という言葉を使ったりコロナ禍を戦時下に被せるような描写があって非常に辛かった。彼女たちは一緒に暮らしていく方法を考えられなかったのか。あれでほんとうに満足しているのか。あれが現実なのかもしれないが、なんとかならないのか。選択的夫婦別姓などの話題がさすがにさらっと流されすぎていたとも思ったので、あと10話は祈りの物語が必要だ。
「男らしくあらねばならない、それもまた呪いかもね。」「誰かと一緒にいるときでも人は孤独を感じる生きものだよ… 」しかし野木脚本はやはりセリフが圧倒的に強いし、登場人物たちの意思が強いな。これはいい意味で。

- ピート・ドクター『ソウルフルワールド』
逃げ恥でちょっとしんどくなったのでこの人生大肯定映画をもう一度観て元気を出そうと思ったら、変な受け取り方をしてしまい元気を出すのに失敗した。目的をもつのは愚かだ!と逆にいままでの人生を否定されているような気がしてしまい…。でも本作が伝えるのはそういうことではないのだ。夢をもつこともすばらしいけど、人生のきらめきはそこかしこに散らばっているから、目的を見失っても人生を見失う必要はないのだよと伝えてくれていて。

結局はのちに観たこの言葉に救われた。本作で、生まれる前の魂たちが首にかけているペンダントがNizi Projectのそれに見えて仕方なかった。思えばあれも謎にランキングとかつけて競争心を刺激したりしていたけど、視聴者にとっては案外そんなのどうでもいいものだったんじゃないかなと、ペンダントも含め。その順位やキューブの数に惑わされないマユカやアカリの活躍にこそ、Nizi Projectの真価が現れていたと感じている。

-『千鳥vsかまいたち
3日に放送された30分番組。24日からレギュラー放送がはじまるみたい。せやねんを観てきた関西人からしたら夢のような組み合わせだ。とにもかくにも「スーツプードル」の破壊力。VTRを観て「俺なら降りない」と言った山内のさすがの降りない力に惚れる。序盤はゆったりした進行でどうなるかと思ったけど、恒例になるようなとっかかりがギリギリ最後に出てよかった。その辺の予定調和のなさに優れたバラエティ味を感じる。まぁこの組み合わせで面白くならないわけがないよな。

-『愛の不時着』
年末年始で10話まで観た。観終わったら感想書くけど、さすがに長いと思っている…。

- 吉田秋生ラヴァーズ・キス
POP LIFEレコメンド漫画。とにかく生きていくにはそれしかないのだと言わんばかりに、登場人物みんなが人を愛することに夢中になっている。まさしくギブ&ギブ。1995年の作品で異性愛よりも同性愛の割合が多いことに単純な驚きを得たりするが、本作が身体の形よりも心の移り変わりに焦点を当てようとしているのだろうということは明白だった。出会ってしまったからには、別れを想像するよりも愛を与え続けなければ。孤独感を抱かない一番の方法は、愛されることを志すのではなく人を愛することなのかもしれない。

- 高松美咲『スキップとローファー』
POP LIFEレコメンド漫画②。4巻まで買い2巻まで読んだ。めちゃくちゃ面白い。最高。4巻読んでからちゃんと感想を書こうと思うけど、ぜんぶが人生の教訓になるような深い物語だし、『町田くんの世界』『のぼる小寺さん』、海外だと『幸福なラザロ』などの聖人主人公映画が好きな自分にはドンピシャだった。スクールカーストが融解していくところにアメリティーンムービーのトレンドを重ねたり。

-『100分de萩尾望都
100分de名著の新春スペシャル回。テーマは「萩尾望都の漫画」。
少女になく少年にはあった自由さ*2、母娘の難しい関係性、血や遺伝子に対抗する言葉によるコミュニケーション、生産至上主義へのアンチテーゼ。近ごろ考えていたテーマがたんまりでてきてめちゃくちゃ面白かった。萩尾望都作品も100分de名著という番組自体も初めて知ったんだけど…これは読まなければ観なければと思った。16日に再放送があるので録画して何度も見返したい。

-『人生最高の贈り物』
岡田惠和脚本のテレ東新春ドラマ。石原さとみ寺尾聰がちょっとぎこちない父娘を演じ、内容は余命モノ。演出は山田太一倉本聰と仕事をしてきた石橋冠ということで、時期的なこととかなり昭和的なルックもあって、ちょっと年配向けのドラマな印象を受ける。
「お前にはできない」。そう父親にかけられた呪いを、最終的にその父親の言葉によって解いてもらう話、ざっくりと。いまの時代に家父長制に生きた父と娘の感動話を描くことにどれだけの意味があるのかを考えてしまう。『逃げ恥』を観たあとだとなおさら、さすがにおじさん的価値観のうえに作られすぎていてキツい。が、ドラマとしてはやはり岡田惠和脚本なので感動してしまう部分もあり。料理によって明らかになる「父親の価値観も少しずつ変わってる」という描写は注目してもいいかもしれない。

-『セブンルール』#180 目指せ演劇の甲子園!廃部寸前から全国2位に…離島演劇部の青春
ロロの擬似高校演劇は観たことがあったけど、ほんものを観ると無性に込み上げるものがあったな(観るといっても短いシークエンスだけだけど)。先生の「やっぱり部活動の顧問なので、青春を演出しないといけないから」という言葉がかっこよかった。

*1:ということで最近気になるテーマの一部を書いておく。/なぜいじめはなくならないのか、階層の差がコミュニケーションの間を開けるのか/2020年のに良質な子どもの映画が多く公開された背景/どうすれば頭で考えていることを正確に口にできるのか/なぜ家族は強固な絆で結ばれているのか、あるいは家族でないと真に遠慮のない親密さは得られないのか/生きてるだけで人生は美しい、それってほんと?理想論?/家父長制はどうすれば崩壊するのか/なぜ現代社会は資本主義を採用しているのか/資本主義社会を打ち崩すすべと、その先に希望の道筋はあるのか…

*2:宮崎駿は逆に、自らの作品に少女が多く登場することに関して「8歳の少年は悲劇的にならざるを得ないものを強く持っているからです。知らなければいけないことが山ほどありすぎ、身に付けなければいけない力はあまりにも足りなくて……つまり女の子たちとは違うのです。少女というのは現実の世にいますから、極めて自信たっぷりに生きていますけど、男の子たちはちょっと違うのだと思います。」https://www.itmedia.co.jp/makoto/spv/0811/28/news011.htmlと述べている。萩尾望都と全く逆でありながら全く一緒ともとれる思考回路。異性などに自由を投影してしまうというのは心理学的にも証明されていることなのかな、と疑問に思ったりした。