縞馬は青い

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映画とかドラマとか、好きなもの

2020年5月のカルチャー雑記②リモート映像作品の救い

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世間で流行りの『愛の不時着』『梨泰院クラス』(第1話だけ観た)には手を伸ばさず、『ハーフ・オブ・イット』も観たけど微妙にハマらなかったり、『鬼滅の刃』も『約ネバ』も『ヒロアカ』もアニメには興味をそそられなかったり、コロナ以前にかろうじて製作された良質な作品にことごとく嫌われてしまった自分は、結局なにを観てたかというと旧作映画とYouTubeばかり観ていた。あとメルカリの沼に落ちてしまって、昔のユリイカとかリュミエールとかswitchとかを買って映画批評をむさぼり読んでた。


そのなかでも「リモートで製作された映像作品」というのがあって、“今の時期はこれを観ておくべきだろう”という確固とした意思があったわけでもないのだけど、気づいたらそればっかり観ていたことになる。かまいたちとかニューヨークとか、芸人がzoomを使ってする生配信動画を合わせれば、5月に摂取したカルチャーはほとんどがYouTubeで完結していたかもしれない。期せずしてYouTube関連の記事をたくさん書いたりしていて、もう僕はYouTube系ライターになりつつあるし(本当は映画ライターになりたい)。

 
でも6月に入ってドラマも映画もちょっとずつ動き出してきているので、いったんの区切りとして良かった作品をリストアップしてみた。何人かのTweetでも見たように「映像作品にいかに撮影が必要か」というのを思い知らされもしたけど、今できることに最大限に取り組んだこの作品たちはカルチャーの火種を絶やさない唯一の救いだったし、それぞれに強く光り輝いていたと思う。


二宮健監督が主導している「SHINPA」という映画上映プロジェクトがある。昨年のゴールデンウィークには二宮監督の過去作が一挙上映されていて、何日か通ったのも記憶に新しい。コロナ禍でいち早く、大きな映画プロジェクトを立ち上げたのがこのSHINPAだった。「在宅映画制作」と題して、延べ24人の映画人が新作映画を「オール在宅制作」で撮り下ろし。二宮健を筆頭に、深田晃司今泉力哉、松居大吾、柄本佑渡辺大知といった豪華な面々が5月1日から代わる代わる新作をYouTube上で発表した。24作品もあるので半分も観れてないけど、飛び抜けて面白かった作品がいくつかある。そのひとつが岩切一空監督の『第七銀河交流』。モキュメンタリーとホラーとアイドル映画が混じり合った大傑作映画だった。

www.youtube.com

岩切監督というのは、そもそもがこの、モキュメンタリーとホラーとアイドル映画を混淆した作品をつくる作家である。『花に嵐』では、早稲田の映画サークルに入った“僕”(岩切一空本人役)がある1人の女の子にカメラを向けることでこの世界の最深部に誘われていく様が描かれている。次作の『聖なるもの』もまぁ乱暴に言ってしまえばほぼ一緒。はてなのエントリーにも書いたのだけど、彼の作品は映画史を純粋に辿りながら、時おり今どきのYouTube的な要素が覗く点が刺激的。彼がTwitterで「だいにぐるーぷ」や「レインボー」といったYouTubeチャンネルの名を挙げて「映画みたい」と時々呟いていることにもわかるように、彼にとっては映画とYouTubeには恐らくさして境界線はない。そうした、「映画にYouTube」を取り入れてきた岩切監督がついに、逆に「YouTubeに映画を持ち込んでしまった」のが本作『第七銀河交流』なのである。このコロナ禍でしか実現しなかった企画かもしれないけど、岩切作品とYouTubeがついに真の意味で出会ってしまった。その作品には、“第七”芸術たる映画が、3つのパラレルワールドーーいわば映画の光の“3”原色ーーを通して再び私たちが出会う未来の銀河を描く、壮大な世界が紡ぎ出されていた。

今泉力哉『MILK IN THE AIR』、深田晃司『move / 2020』、近藤啓介『動物暴走教師』等もよかったけど、岩切監督のやってることが異次元すぎて他が霞んでしまう。素晴らしいものを観た。あと坂元裕二のリモートドラマ『Living』もめちゃよくって感激した。特に1、2話ね。ズバズバぶっ刺してくる言葉の威力が半端ない。あとあと、Webで公開されてる映画だと、ANAの『再見』という映画がけっこうよかったです。監督・竹内里紗(『21世紀の女の子』「Mirror」)×脚本・宮崎大祐(『TOURISM』)で、ジャック・リヴェット『北の橋』みたいな彷徨いの映画を撮り上げてしまっていた。

www.ana.co.jp
YouTubeで観れる岡田惠和脚本、吉田羊×大泉洋の『2020年 5月の恋』と、「超、リモートねもしゅー」の2作目をまだ観れてない。そうこうしてるうちに映画館に行ける日々が戻ってきたね。3か月ぶりの映画館はアップリンク吉祥寺で『パターソン』を観て、これは日常を取り戻すにはぴったりな映画だな、と思った。初めて観たときは眠たかったけど、今回は妙にしっくりきた。