縞馬は青い

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映画とかドラマとか、好きなもの

My Best Films of 2019

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兵庫に里帰りしてもわざわざ京都(みなみ会館)まで行って『象は静かに座っている』(4時間弱の超大作)を観にいったり、実家では今年見逃した作品をストリーミング配信でカバーしたり、2019年は最後の最後まで映画を観切った。鑑賞数はだいたい110本くらい。例年は外国映画のほうが全然多かった気がするけど、今年は6〜7割くらいが日本映画になるくらいたくさん観た年だった。得意ジャンルしかブログや評論の文章を書けないってことで偏ってしまっているので、来年はもうちょっと多ジャンルを観たいな〜、ってな感じでさっそく今年のマイベストフィルムベスト20を列挙していきます!

 

20.トッド・フィリップス『ジョーカー』

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2〜5位と10位、20位はかなり迷った。そのあたりの順位は個性が出るところだと思うから他人のランキングを観ていても気になるとこ。20位にいきなり2019年の象徴的作品を持ってきたのは、正直本作への評価があんまり固まっていないからだ……。鑑賞中の陶酔感でいうとベスト10に入れてもいいくらいだったけど、よくよく本作のメッセージを反芻してみると2016年にぶちのめされた『怒り』を越すものではないなとか考えたり。こうやって比べてしまうのもよくないよな。これが公開された後、別の映画で「これもジョーカーみたい」「あれもジョーカーみたい」って感想が溢れかえっていたのが個人的にはちょっと気持ち悪かったんですよね。そんなに普遍的な映画ではないでしょうって。それでも比べてしまうのは、ストーリー的な新しさはない(=現実社会を反映し得てはいないということではないが)からだと言い切ってしまってもいいかもしれない(暴論でございます)。『象は静かに座っている』『幸福なラザロ』『家族を想うとき』のほうがよっぽど辛く、この時代に生まれた意味もわかる。それでも娯楽作としてめちゃくちゃおもしろかったので20位には選びまっせ。そんでDCよくやった!


19.片山慎三『岬の兄妹』

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日本版『ジョーカー』なんて口が裂けても言わないけど、同系統の映画として自国のこの作品の方を強く推したい。ポン・ジュノの助監督とかをしていたらしい監督が、日本の闇をややユーモアも含めつつ鮮烈に描き出してくれていた。ヒロインの和田光沙さんとか、出演者のひとりで『若さと馬鹿さ』の監督でもある中村祐太郎さんとか、非常に将来が楽しみなひとたちがいっぱい出ていた。

厚い雲に覆われた日常/片山慎三『岬の兄妹』 - 縞馬は青い


18.デイミアン・チャゼルファースト・マン

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やっぱりチャゼルの映画が大好きだ。ニール・アームストロングという歴史的大偉人を題材にしておきながら、あまりに暗く孤独な作家性が滲み出てしまうあたりを観て僕はそう強く思い直した。「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」。月に降り立った彼が言ったその名言を「彼にとっては大きな飛躍だけど、人類にとってはあまりにも小さな一歩」である超パーソナルなストーリーにすげ替えた監督の驚くべき手腕。大きな世界を使って個人的な世界を捉える映画としては『アド・アストラ』もよかったなぁ。


17.イ・チャンドン『バーニング 劇場版』

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忘れられない画・音が多すぎる。公開前に何故かNHKで60分に編集されたバージョンが放送されていて観てしまったのだけど、あれがなければもうちょっと好きになっていたかも。「火」が妖艶すぎる。


16.二宮健『チワワちゃん』

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鮮烈。全編を覆うヴィヴィッドなピンク色が、なんだかこれが青春色だよね(ぜったい違うんだけど)と思わせられてしまったから革新的ですばらしい。ちなみに中国の青春映画『芳華-Youth-』もピンク(と赤と純白)だったんだよな。

デフォルメされた青春の死/二宮健『チワワちゃん』 - 縞馬は青い


15.中川龍太郎『わたしは光をにぎっている』

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中川龍太郎は2019年のうれしい大発見だった(『四月の永い夢』も今年観たんですよね)。映像・ストーリー・詩・主題歌、そして役者。すべてが同じ空気感を共有していて観ていて気持ちよかった。そうだから、カネコアヤノや松本穂香に対する愛も一斉にこの作品にぶち込んでしまっている気がする。映画としてちゃんと評価すると、澪がエチオピア料理屋みたいなとこに行くとこが一番よかったかな。東京には意外と人間の熱があることを知った。個人的には、『テラスハウス』東京編でペッペがデイリーヤマザキに行く場面との照応にグッときている。

言霊と光、心を導いて/中川龍太郎『わたしは光をにぎっている』 - 縞馬は青い


14.深田晃司『よこがお』

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観ながら沼にずんずん引き込まれていく感覚はなかなか得られるものではない。受動的な媒体である映画の怖さを体感する瞬間が詰め込まれていた。


13.ラーズ・クラウム『僕たちは希望という名の列車に乗った』

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脚本のうまさでいうと今年いちばん印象に残っているかもしれない。心地いいテンポ感で何度も切り返していく感じ。若い役者たちの顔もすごいよかったな。


12.白石和彌『凪待ち』

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『ひとよ』よりも圧倒的にこちらが好き。香取慎吾の汚れ方もいいし、恒松友里の通り抜ける声もいいし、ラストはもう完璧。思い返すとやや物語的すぎる気もするが。白石監督が擬似家族を撮ったことに感動を覚えたから逆に『ひとよ』では拍子抜けした。


11.ジョシュ・クーリー『トイストーリー4』

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トイ・ストーリーにそんなに思い入れがないからかもしれないけど、3に負けず劣らずこれもよかったよ。興奮がずっと持続する100分間だった。

僕たちはどこで生きていく?/ジョシュ・クーリー『トイストーリー4』 - 縞馬は青い


10.二宮健『疑惑とダンス』

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ということで10位にはインディーズ映画を。二宮健が2度目の登場である。映画的には『チワワちゃん』のほうがすごいんだけど、ミニマルすぎる設定・舞台と役者に委ねられたものの大きさからすれば、これ以上の着地点はないと思う。ことし劇場でいちばん笑った映画だし、「映画で遊ぶ」という監督の姿勢も気に入った。もっと遊んでほしい。

踊るしかないこんな夜は/二宮健『疑惑とダンス』 - 縞馬は青い


9.片渕須直『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

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実は2016年にオリジナル版を観たときは案外ピンときてなかった映画。このたびの新作では大幅に映像が追加されただけでなく、全体的にかなり編集が加えられていたようで、全く新しい作品になっていた。(昭和)19年→20年と進んでいく物語の構成が、2019年→2020年と進む現在時間と妙に一致しているように思えたのが評価する最大の理由だ。もちろんそんなわかりやすい数字だけじゃない。この荒み切った世界で、たしかに生を紡いでいる人々の姿に以前より感情移入できる場面が多すぎた。


8.塩田明彦『さよならくちびる』

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まずは主要役者3人が最高。賛否分かれるとこではあるけど僕は音楽もすごい好き。そして何よりも、映画的演出の見事さに陶酔した。車に乗ったり降りたりするだけの映画。なのにこんなにおもしろい。

境界線を溶かす「音楽」という魔法ーー映画『さよならくちびる』で反復される“不在”と“存在”の意味 - 縞馬は青い


7.西谷弘『マチネの終わりに』

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昨年の『ファントム・スレッド』『ア・ゴースト・ストーリー』の枠はこの映画に与えたい。亡霊的恋愛映画枠とでも言えるだろうか。

狂う男、狂わされた女ーー死の季節に生が薫る『マチネの終わりに』 - 縞馬は青い


6.真利子哲也『宮本から君へ』

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ドラマでは新卒サラリーマンの仕事の奮闘を描き、映画では彼の恋愛に主眼を置く。現在の東京にいてあの歳で結婚するやつはいないし、こんな暴力的なコミュニケーションが存在する世界は知らない。しかしそこのリアリティを吹っ飛ばしてもこれだけ心を鷲掴みにされてしまうのはなぜなんだ。それは、徹底的に男性性を駆逐していく主人公・宮本の姿があったからだと思う。ほんと熱量が高すぎた。


5.今泉力哉『愛がなんだ』

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もうね〜これに関しては好きとしか言いようがないよな〜。語りたくなる部分もめっちゃ多くて何度でも感想ブログを書けそうだけど、とにかく好きなんだよ、テルコやナカハラっち、マモちゃんも。みんな。

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4.ノア・バームバック『マリッジ・ストーリー』

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東京国際映画祭で観たときに劇場が笑いに包まれたり悲しみに暮れたりしていたあの時間を忘れることができない。アップリンク吉祥寺の静かな環境でもう一度観直して、傑作だと確信する。結婚生活の記憶が「手紙」を媒介して相手に届くという冒頭と締めの巧さ。アダム・ドライバーが「Being Alive」を熱唱する場面は映画史に残る名シーンだ。

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3.石井裕也町田くんの世界

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映画の世界だけでは「奇跡」を信じさせてくれ。思えばそう願い続けた一年だったようにも思う。細田佳央太と関水渚という新人俳優がとにかく素晴らしい映画だったし、遠景の追いかけっこシーンはいつまでも忘れることがないと思う。彼らの“身体のバタつき”がいやに愛らしかった。

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2.ケン・ローチ『家族を想うとき』

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非常に辛い映画だ。『町田くんの世界』のほうが好きかもしれないと何度も自分と相談しながら、戒め的な意味も込めてこの位置に置いておいた。現実は確かにこうひどくなっているかもしれない。それでも辛くなりすぎないのはその世界を愛ある家族を通して見せているからだと思う。つらいけど好きな映画です。

 


1.杉田協士『ひかりの歌』

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1月13日に観た作品が本年のベスト映画です。揺るぎようのない超強度なフィルムだった。そして言うなれば、『ジョーカー』や『家族を想うとき』『象は静かに座っている』といった苦しい映画を経たからこそ本作への思い入れがさらに強くなっていったように思う。この世界にはひかりがある。それだけで十分で、それがすべて。

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特別枠:山中瑶子『おやすみ、また向こう岸で』

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9月20日TOKYO MXで放送された20分くらいの作品。一応「ドラマ」ではあるらしいけど、映像作品としての完成度の高さに舌を巻いてしまったのでピックアップさせてください。山中監督の次回作はぜひ映画館で観たい。

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【2019ベスト映画20】

  1. ひかりの歌
  2. 家族を想うとき
  3. 町田くんの世界
  4. マリッジ・ストーリー
  5. 愛がなんだ
  6. 宮本から君へ
  7. マチネの終わりに
  8. さよならくちびる
  9. この世界の(さらにいくつもの)片隅に
  10. 疑惑とダンス
  11. トイストーリー4
  12. 凪待ち
  13. 僕たちは希望という名の列車に乗った
  14. よこがお
  15. わたしは光をにぎっている
  16. チワワちゃん
  17. バーニング 劇場版
  18. ファースト・マン
  19. 岬の兄妹
  20. ジョーカー

特別枠:おやすみ、また向こう岸で


鑑賞数に比例して日本映画が多数を占めるランキングになりました。この世界には愛があって、それだけで十分だ、っていう最後の結論は楽観的でしかないけれど、2位に『家族を想うとき』を入れていることでなんとなく意図を汲み取ってもらえると思う。ランク外なのに何度も言及している『象は静かに座っている』(めちゃくちゃしんどい中国の現代風刺映画)は思ったより心にグサリと刺さる作品だったようです。ちなみに旧作映画は『女っ気なし』『オルエットの方へ』『友だちのうちはどこ?』がさらなる映画への興味を広げてくれて、国内テレビドラマは『デザイナー 渋井直人の休日』『だから私は推しました』『グランメゾン東京』『グッドワイフ』『腐女子、うっかりゲイに告る。』が好きだった。(『パラサイト 半地下の家族』とか海外では2019年公開のこぼれ作もあるし)2020年はたぶんめちゃくちゃに豊作の1年になると思う。ノーランの新作『TENET』を観るのが一番楽しみで、今泉力哉監督の新作『街の上で』がどれだけ映画ファンに受け入れられるかも見もの。来年もいい映画に出会えるよう祈っています。

 

【追記】今年の日本映画振り返り

今泉力哉作品を筆頭に2019年は恋愛映画が豊作の年であったように思う。2018年の『きみの鳥はうたえる』『寝ても覚めても』『生きてるだけで、愛。』の流れを汲みつつ、より多様化する恋愛映画に接することができた一年だった。恋愛リアリティショーが流行して久しく、若者の恋愛離れも進んでいるように思われる昨今、ドラマや映画で恋愛を描くのは難しくなってきたと言われることも多い。しかしそれでも世に受け入れられる物語の形式はまだまだある。というか、まだまだみんな恋愛物語が好きなんだろうなと思う。長々と恋模様(すれ違い等)を描くドラマよりは、『愛がなんだ』や『マチネの終わりに』『宮本から君へ』のようにテーマ性が見えやすい映画のほうが恋愛を描きやすくなっているというのは一つ言えることかもしれない。ジャンルもので言うと青春映画と家族映画もいい作品が多かった。『町田くんの世界』や『ホットギミック ガールミーツボーイ』のように、従来のキラキラ映画から進化を遂げたような作品がいっぱい出てきたのも忘れられない。ただ、これまで青春映画を多数輩出してきた映画祭「MUSIC LAB」にひとつも青春映画がなかったのは印象的だ。その代わりに多かったのは、これまた恋愛映画ではなかっただろうか。家族映画は多すぎて見逃したものもあるけれど、『最初の晩餐』『凪待ち』『岬の兄妹』『沈没家族』がすばらしかった。『マリッジ・ストーリー』と『家族を想うとき』、『アス』などの外国映画もよかったから微妙に影に隠れているけど。『パラサイト 半地下の家族』もそうだし家族映画はここ数年でとでも重要な位置を占めはじめている。今年1位に選出した『ひかりの歌』(これも純然たる恋愛映画)のように、インディーズ映画にもまだ見ぬ底力、魅力がある。インディーズもほんとうにレベルが高く期待している若い監督もたくさんいるので今後もめちゃくちゃ楽しみなのである。ということで来年もさらに日本映画を深く彫っていきたい所存です!