縞馬は青い

縞馬は青い

映画とか、好きなもの

ポップカルチャーをむさぼり食らう(2019年10月号)

 

10月もカルチャーは豊作であった。

とりあえず羅列してみる。

 

[映画]女が階段を上る時(DVD)/ジョーカー/蜜蜂と遠雷/宮本から君へ(2回目)/お嬢ちゃん(2回)/ぼくのエリ(ヒューマントラストシネマ渋谷)/街の上で(下北沢映画祭)/ブルーアワーにぶっ飛ばす/タレンタイム(UPLINK吉祥寺)/夏の遊び(ユジク阿佐ヶ谷)/退屈な日々にさようならを(ユジク阿佐ヶ谷)/カツベン!(東京国際映画祭)/タイトル、拒絶(東京国際映画祭)/ひとよ(東京国際映画祭)/わたしの叔父さん(東京国際映画祭)/劇場版おっさんずラブ

[演劇]別冊根本宗子『墓場、女子高生』/今泉力哉と玉田企画『街の下で』

[ドラマ]G線上のあなたと私/グランメゾン東京/モダン・ラブ(AmazonPrime)/決してマネしないでください。/おっさんずラブ

[本・雑誌]江國香織きらきらひかる』/鷲田清一『「待つ」ということ』/映画芸術/QuickJapan

[音楽]眉村ちあき(NEWTOWN)/Juice=Juice LIVE 2018 at NIPPON BUDOKAN TRIANGROOOVE(DVD)/indigo la end『濡れゆく私小説

YouTube]さんこいち/ヴァンゆんチャンネル

[バラエティ継続視聴]相席食堂/テレビ千鳥

 

映画みすぎてるわ…(その割に旧作掘れてないし…)とちょっと落ち込むものの、東京国際映画祭に関しては全部無料で観てるのでオールOKということにする。というのも、かの日本最大級映画レビューアプリFilmarksさまの抽選で(5名さまにあたる!)プレスパスを頂戴したから。時間さえあえばほんと全部タダで観られるので、期間中に10本くらい観ようと思ってます。これが無ければおそらく出会っていなかっただろう(映画祭の作品なので劇場上映されるかもわからず本当に一生出会えなかった恐れすらある)コンペティション部門で観たデンマーク映画『わたしの叔父さん』がとんでもない傑作だったから、ほんとうにFilmarksさまには頭が上がりませぬ(4年間くらいずっとお世話になっております)。6、70代くらいの叔父さんと30前後の姪。家畜の世話をしながら暮らすそのふたりのただの日常を描いているだけの作品でありながら、生きることの尊さが優しく伝播していくとんでもない映画。姪の役者はれっきとした女優(イェデ・スナゴーさんという方)だけど叔父の方はそのイェデさんの実の叔父さんらしく、演技未経験の素人。ただ実際の近親関係であるからこその空気感がバリバリに作用していて、会話の少なさや相手への微かなイラつき、クスッと笑ってしまう出来事など、もうすべてが愛らしい。基本的には和やかな気持ちで観られる映画だけど個人的にぐさっと刺さる部分もあり、こんなに涙って出るっけ?ってくらいシトシト号泣してしまった。こんな経験は後にも先にもないかもしれない。この勢いで劇場未公開作に切り込むと、今泉力哉監督の新作『街の上で』は人生で5本の指に入るほどの神傑作。ネタバレなしで個別エントリーにも記しました。ハードルを上げすぎても誰も喜ばないと思うのでとりあえず劇場公開が決まるまでは黙っておくけど、『愛がなんだ』を軽々超えてくるやつなんでまじお楽しみに。自分が一番もう一度見るのを楽しみにしてるわ。10月は今泉力哉監督月間だったと言っても過言ではない。10月27日、こまばアゴラで玉田企画との共作『街の下で』を観劇し、その夜にはユジク阿佐ヶ谷で『退屈な日々にさようならを』を観た。『パンとバスと2度目のハツコイ』以降、今泉作品は毎回長文の感想を書いてるのだけど、この2作においてそれが途絶えたのは、とっても書きにくい作品だったから。だからここでも特段なにかをかける気はしない。『街の下で』は突拍子のない展開の連続で心の整理がつかなくて、今泉力哉と玉田真也のどちらがどこを作・演出しているのかも判別がつかず書きづらい*1。『退屈な日々に〜』は昨年の同時期にはじめて観た(NEWTOWNの無料上映、今泉監督のとなりで)ときより驚くほどおもしろく、めちゃくちゃ理解できたものの、かなり深い作品でもう一度観ないと整理できなくてこれまたまだ書けない。今泉作品のなかで『街の上で』『退屈な日々に〜』『愛がなんだ』は別格におもしろいと思っている。もうこうなってくるといま一番信頼できてコンスタント(と言うにはあまりも多作)に作品を発表する作家は今泉監督を差し置いて他にいないかもしれない。突如現れている『おっさんずラブ』は、リアルサウンドで毎話レビューを書くために急いで観たやつ。劇場版は都内最終上映にすべりこみ、OL民(おっさんずラブファンの通称)のすすり泣く声を聞きながら大いに映画を楽しんだ。11/2からはじまった新章。これがとんでもないおもしろさでびっくりしている。はじめてみた根本宗子の演劇も「これが根本宗子か…」と唸る快作だった。乃木坂のアンダーメンバーによっても演じられていたりするベッド&メイキングスの戯曲『墓場、女子高生』。根本宗子は演出だけでなく主演もはっていて、その圧倒的なパワー、演技の超絶なうまさに驚かされた。歌もうまいし。月刊根本宗子の公演もできるだけ早く観てみたい(でもチケット代高いよね…)。今期のドラマは『グランメゾン東京』を一番に推したい。何に似てるかわからないくらい王道のストーリー(離散していた仲間が集い、下克上のすえヒールとなる相手を負かすという作劇。『七つの大罪』とかね)だけれど、とにかく塚原あゆ子(『アンナチュラル』、『グッドワイフ』など)の演出がすばらしく、毎話大きく心を動かされてしまう。キムタクドラマを見るのは実は2009年の『MR.BRAIN』以来。安心感とその風格はやっぱり唯一無二だ。10月20日、CINRAが主催する「NEWTOWN」で眉村ちあきのライブをはじめてみた。「こんな奇跡みたいな子、ほんとにいたんだ…」という気持ちに包まれる。わずか30分強のライブだったけど楽しいったらありゃしない時間。12月の単独ライブに当選したのでそのときに文章で思いをぶちまけたいと思います。ここ数日はまったくYouTubeを見てないものの、月初めは沼にハマっていた。“恋人同士ではない男女コンビのYouTuber”の人気ぶりを俯瞰するコラムを書くために見始めた「さんこいち」と「ヴァンゆんチャンネル」。あんまり興味がなく見始めても、見てるうちにだんだん好きになってしまうのがこのコンテンツの恐さだと再認識した。熱しやすく冷めやすいので、もう飽きてますけど「さんこいち」はほんとに結構好きだった。仕事関係抜きにして久しぶりに小説をまるまる一冊読むことに成功。会社の先輩天才ライター山本さんが大好きな江國香織を手にとってみた。外から見れば歪な夫婦の、お互いの感情が交互に描かれていく。言葉一つひとつが感受性の高いままに並んでいるので、読むときどきによって色が変わっていく作品なんじゃないかなと思う。そういえば、くっきーと又吉が旅人だったこの前の『相席食堂』、最高だったよね? ドリフ的サイレントコメディ、天丼、奇妙な海の合致などなど一瞬やらせを疑うくらいよくできていて、長州力回に並ぶ傑作だ…と唸りながら笑い転げた。読みかけの『「待つ」ということ』を読破して、来月は中川龍太郎『わたしは光をにぎっている』とともに「時間」について書こうと思います。書かないかもしれないですが。

あ、『ジョーカー』と『お嬢ちゃん』のこと書き忘れた…!*2

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*1:判別がつかないとは言っても冒頭は今泉さんのものだと思うし、ラストは玉田さんっぽい。中盤のあの“変なやつ”は意外と2人でやってる気がする。

*2:いつも以上に適当に手早く書いていたら途切れ途切れになってしまいました。最近は欲に勝てない日々が続いている。一度、一週間どれだけ欲に勝てないことがあったか数えてみようかなとか思ったけど、そう思った日に映画観て古本屋で4冊本買って、酒飲んでアレして、部屋は汚いけどやっぱり掃除は出来なくて、こんなの数えてたら死んでまうわと思ってやめた。その次の日に部屋を掃除することができた。ちょっとがんばったら自分にご褒美をあげたくなるとことん自分に甘い性格だけど、そうしているうちは幸せなんだからもうこれでやっていくしかないんだと思う。最近は社会学を学んでいたころを思い出してそっち系の学術書を読みたいと思いだした。思ってるだけ。『街の上で』はやくもう一回みたい。風邪こじらせて知らぬ間に秋になってたけど調子はいい気がする。病床のおじいちゃん心配だなぁ。