縞馬は青い

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映画とか、好きなもの

乾杯前の一節を言えた試しがない/すきなものノート(2021年3月10日)

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「好きなものを書くの。嫌いなものを書いちゃだめだよ。嫌いなもののことを考えちゃだめなの。好きなもののことを、ずっとずっと考えるの」

ーー坂元裕二『Mother』第1話

「最近なんかあった?」と聞かれると十中八九いやな記憶を引っ張り出してしまうたちだ。それ自体がとてもいや。だから、いつでも好きなもののことをしゅっと取り出せるように、その場面に出会ったらいちいち記録しておこうと思う。『Mother』のドラマ内でつぐみ(芦田愛菜さま)が書いていた「すきなものノート」にならって。やがてきらいなものさえも好きになってしまえたらうれしい。とか言って。*1

  • 洗いものが終わってる洗面台
  • 映画のエンドロールで誰ひとり席を立たなかったとき
  • 褒められること
  • 緑色のセーター
  • コートのポケットにすっぽり収まる本
  • なが〜くてふと〜い鼻毛が抜けたとき
  • 昼寝(机に突っ伏すのじゃないやつ)
  • 演劇の開演前とかに流れる木琴だけでつくったみたいな音楽
  • 明日の天気予報を見て晴れだったとき
  • 乾杯
  • 人の「恐縮です…」って感じの表情
  • 傘を打つ雨の音
  • 読書する、文章を書くとかなんでもいいけど、2、3時間くらい時間の存在を忘れて生きているとき
  • 100%充電済み
  • マスクのせいでメガネくもってる人
  • 高円寺駅構内に立ちこめる焼き鳥のにおい

乾杯が好き。あの、みんながちょっと照れながら、正解の表情もわからないままに目を見合う瞬間。僕はこれまでに一度だって、「じゃあ〇〇さんの誕生日を祝して〜」とか「素敵な夜に〜」とかいう乾杯前の一節を言えた試しがない。「誕生日を祝して〜」は言おうとしたことがあるけど、こんな短いフレーズなのに途中でふにゃふにゃっと噛んでグダグダになってしまったことがある。ていうか言い終わる前にグラスをぶつけてしまった。あの言葉を咄嗟に思いついてズバッと言える人はすごい。尊敬しちゃう。でもやっぱり、乾杯ってちょっと恥ずかしげがあるから好きなんだよな。意味はないけどやってみると楽しい感じとかが。だから、みんなと酒が飲めてうれしいとか何かを祝したいからではなく、ましてやグラスとグラスがぶつかる音が好きとかいう変な趣味があるのでもなく、不意に乾杯をするときの、人のちょっと微妙な表情を見るのが僕は好きなのかもしれない。

 

*1:すきな「もの」を書こうとしたらすきな「瞬間」が多くなってしまった。まぁ、物体よりも時間とか記憶のほうが愛おしいのよね。