縞馬は青い

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かが屋のコント26本レビュー

2週間ほど前から『みんなのかが屋YouTube channel』でかが屋のコントが大量放出されている。これがほんとうにどれも面白くて味わい深くて愛おしくて。感激しっぱなしだったので現在UPされている26作品を全作レビューしてみた。特に好きなのは、『市役所』『親友』『イヤホン』『俳優』『バイトのシフト』『面白い男の人が好き』『文化祭』『田舎の事件』あたりです。ぜんぶ好き。

 

『リズム』


かが屋『リズム』コント 2019 4 26 資料映像

学校へ行こう!』でおなじみのリズムゲームみのりかリズム4」に興じる5人の若者。なぜかタナ(加賀)にだけ出番が回ってこず、オカ(賀屋)をはじめとする4人で盛り上がりを見せ、タナは次第に苦い表情を見せはじめる。タナも観客も最初は「ハブられてる?」という疑念を抱くわけだけど、ときにそれを覆す「本音」がかが屋のコントの持ち味。それをオカに言わせないのもいいし、彼らがこれまで積み上げてきた時間の堆積が鮮明にうつる。

 

『市役所』


かが屋『市役所』コント 2019 4 26 資料映像

市役所で窓口対応をする女性(賀屋)と、彼女にあることを伝えにきた彼氏らしい男性(加賀)。「だから舞台が市役所だったのか」という中盤の驚きと、その加賀の企てをひっくり返す賀屋のひと言が楽しい。お互いに一度ずつ言葉を噛んでしまったりするもののサムい感じにならないというか、それすらも愛らしいほど日常がコントに溶け込んでいる。匿名性を帯びた市役所のなかで、ただ2人だけに注がれたスポットライトが眩しい。


『親友』


かが屋『親友』コント 2019 4 26 資料映像

これは序盤からエンジン全開でおもしろいやつ。サイレントでもいい。お互いに「親友を元気づけたい」「親友に元気なところを見てほしい」と思っている思考の美しいズレが及ぼす行動のズレ。最後に思わぬところでプチサプライズを起こすのも、このコントの醍醐味である「視覚」効果によるもの。


『大富豪』


かが屋『大富豪』コント 2017.01 資料映像

タイトルのとおり大富豪で遊んでいる数人の男たち。彼女と電話する加賀によりゲームが中断されたことで、仲間から非難の声が浴びせられる。中立の立場にいる賀屋はいつだってその誠実さが似合っているし、加賀の子どものような泣き芸はそれだけでおもしろい。かが屋のコントのギミックである「反転」がそのまま大富豪の「革命」に繋がっているのが単純に巧い。


『唇』


かが屋『唇』コント 2017.05 資料映像

唇を「ぶ〜」ってする子どもと、「それやるとたらこ唇になっちゃうよ」と注意するお父さん(賀屋)。舞台は電車で、その親子の横の席にはたらこ唇の加賀が座っているという、設定勝ちのコント。終始、悲しいのか嬉しいのか、怒っているのかが曖昧な表情を見せる加賀の複雑さがいい。あと押される芝居がうますぎる。


『合唱』


かが屋『合唱』コント 2017.03 資料映像

合唱コンクールに向けた練習をする生徒たちと先生(賀屋)。そのなかでただひとり「できてる」と指名されたときの優等生(加賀)の優越感とちょっとの恥ずかしさ。「歌うこと」に対する想いをいちばん持っているのであろう先生の行動も熱すぎてちょっと恥ずかしいけど、瑞々しくも感じる。


『電車にて』


かが屋『電車にて』コント 2016.06 資料映像

電車にて、イチャイチャするカップル(男性:賀屋)とそれを横目で見る加賀。相手に夢中で距離感がバカになった賀屋が加賀に接触してしまったり、賀屋が、現実にいる“ちょっとヤバいやつ”を快演している。彼に宿る二面性とさらにそれを裏切る終盤の展開も、賀屋のいい人とも悪い人とも捉えづらい複雑な顔面がうまく体現してみせている。


『自転車』


かが屋『自転車』コント 2018.01 資料映像

自転車を置いてコンビニかなにかに買い物へ行く加賀。帰ってくるとその自転車の前で男女が恋愛のイザコザを起こしているという、これまた現実にちょっとありそうなシチュエーション。“ことの傍観者”=加賀を徐々に“当事者”に仕立て上げていく手法は『唇』と同じで、かが屋のコントの姿勢が垣間見える。ちゃんとどん兵衛を食べちゃう演出も余韻があっていい。


『イヤホン』


かが屋『イヤホン』コント 2019.01 資料映像

もうすぐ引越ししてしまう加賀を呼び出す賀屋。AirPodsを自慢するため?かと思いきや、そこから二転三転するげに秀逸なコント。賀屋の愛らしい行動をさして何度も「キモい」と表現する加賀の、本当は複雑な心情をその言葉に閉じ込める姿。それは、かが屋のコントを見ている間に私たち観客が抱く「感動」でも「驚き」でもある複雑な感情を「笑い」として表出しようとする姿勢ととても似ている。泣ける展開でもとりあえず笑いたくなる。


『俳優』


かが屋『俳優』コント 2019.11 資料映像

エキストラの加賀と演出家の賀屋。急遽大事な役を演じるはずの役者が飛んでしまって、その代わりを「すべてのセリフを覚えている」という理由から加賀が引き受けることになるが…。これはさらっと展開される序盤の1分くらいの会話がのちのち効いてくるので、YouTubeで繰り返し観られるのはうれしい。エキストラという代替可能な存在を通して描くことで、かが屋のコントが見せる「人間の悲哀」が境地に達していると思う。


『バイトのシフト』


かが屋『バイトのシフト』コント 2019.01 資料映像

コンビニかなにかのバイト仲間である男(加賀)と女(賀屋)。バイトのシフト変更でサプライズ的に訪れる2人の時間。かが屋のコントはその登場人物2人がどういう関係性なのか、想像を促す冒頭の余白ある時間が楽しい。予想を覆されても、予想と同じでもどっちでもうれしいし。ここでも、一度傍観者にされてしまった男が当事者に引き戻される瞬間がハッとする。憎らしいほどうまい。


『面白い男の人が好き』


かが屋『面白い男の人が好き』コント 2019.09 資料映像

加賀くんの表情の変化をずっと見ていたい、初対面の男女が徐々に心を通じ合わせていくさまを捉えた最高のコント。少し不器用な男性(加賀)が発するボケが、女性(賀屋)に掬い上げられることで会話のラリー、心のグルーヴが生じる。お笑いの美しさの原点を見ているようでもある。


『文化祭』


かが屋『文化祭』コント 2018.01 かが屋『文化祭』コント 2018.01 資料映像映像

文化祭でのクラスの出しものを決める投票にて。“脱出ゲーム”と“たこ焼き”でデットヒートを繰り広げるなか、加賀の表情が暗くなっていく…。青春すぎる!!!!!!! これもずーっと加賀くんの表情が変わっていくグラデーションを見ていたくなる。すべてを知っている賀屋のイケメンっぷりがすごいし、「高くね!?」なラストも愛らしい。

 

『缶コーヒー』


かが屋『缶コーヒー』コント 2018.04 資料映像

演劇仲間のふたりの男。ベンチに座って落ち込んでいる後ろ姿を見せる賀屋に、缶コーヒーを持っていこうとする加賀の描写からはじまる。これも前の2本と一緒に「加賀顔面グラデーション3部作」と名付けたい。“賀屋には見えていない”ということを利用した身体の動きもすばらしい。


『田舎の事件』


かが屋『田舎の事件』コント 2018.04 資料映像

大傑作長編映画を観たあとかのような余韻。単純なプロットの巧さでいうと、ほかのコントとは一線を画しているかもしれない。「町のくら寿司が閉店する」という小さいけど大きな事件を契機に、お父さん(加賀)とお母さん(賀屋)、くら寿司の店長や彼らの子どもとの交流が描かれる。人を思いやることがどれだけ美しいことか、再確認させられるコントだ。かが屋のコント美学である「反転」がバシバシ決まりながら、訪れる感動のラスト。小津の映画だよこれは。


『彼女の部屋』


かが屋『彼女の部屋』コント 2019.08.26 資料映像

彼女の部屋で過ごすあるカップル。男(加賀)が部屋を後にすると、女(賀屋)があることをしはじめる…。これも何度も観ているけど、本音を言うときの賀屋くんの必死さと、信じようとしない加賀くんの幻想垣間見える姿がツボ。真実を知ってちょっとだけ幻滅しているような加賀/それに気づかず連発する賀屋の構図が愛おしい。


『花束』


かが屋『花束』コント 2019.08.26 資料映像

キングオブコントで披露されたネタだけど、初披露の際の映像らしく構成やラストが少し違う。しかし、かが屋を観ている観客のリテラシーの高さには毎度驚くな。花束を抱えて俯く男性とそこに「蛍の光」が被さるだけですべてを理解してしまえるのはすごい。1回目でそれだけウケると、それは2回目の明転では大爆笑ですよね。演者と観客の信頼関係が生んだ傑作。逆でもおかしくない配役、どう決めているのか気になってくる。


『ギャグとかやろうか?』


かが屋『ギャグとかやろうか?』コント 2020.02 資料映像

これは10年付き合った彼女にプロポーズしてフラれてしまった加賀くんの実話がベースになっているのでしょうか。本編は7歳のころから19年付き合って、それで昨日フラれて落ち込む加賀と、励ますためにギャグを連発する賀屋の関係性が映し出される。ギャグのクオリティがどんどん増していくのがこのコントの最大の面白さ。


『爆弾』


かが屋『爆弾』コント 2019.08.26 資料映像

ものものしいタイトルとは裏腹なほっこりする親子コント。息子が母親に好き勝手怒鳴り散らかしている場面は胸がきゅーっと縮こまり、その熱意と同等のものを母親がぶつけた瞬間に想いが広く開放される。パイの実で気を紛らわせようとするキュートなお母さんはいつもエプロンが似合う。


『終電』


かが屋『終電』コント 2019.06 資料映像

終電を逃すか逃さないかという時間帯に居酒屋で、付き合うか付き合わないかの微妙なラインの男女が一つひとつ確かめるように言葉を重ねる。鼻血が出るというある種のわかりやすさを提示することで、その奥に複雑な想いをうまく隠しているように見える。ほんとうにかが屋は、どこにでもいそうな“普通の人”を体現するのが巧い。


『下ネタ』


かが屋『下ネタ』コント 2019.08.26 資料映像

「下ネタは言うなら夜にして」と言う賀屋と、昼下がりのカラオケで下ネタを連発する加賀。「夜は新聞配達してるから…」というマイノリティの意見が表に出ていく気持ちよさもさることながら、「わかってくれるだけでいいから」という、あらゆる多様性に目を向けたコミュニケーションの話になっていく展開が興味深い。すべてを理解するのは不可能だから、ただわかってさえもらえればいい。


『大事な話って?』


かが屋『大事な話って?』コント 2019.05 資料映像

大事な話があると賀屋に呼び出された加賀。しかし賀屋の電話が鳴り止まず、なかなか話を切り出せない。これはファーストボケが強いタイプのコント。そこまでの長いフリがすばらしく、加賀くんはずっとかわいそう。ただそのかわいそうに対する対価が思い切っていてちょっとゲスいのと、それを軽く受け入れられてしまうパラドックスが奇妙で面白い。


『かわいい』


かが屋『かわいい』コント 2019.08.26 資料映像

居酒屋で飲む先輩(賀屋)と後輩(加賀)。彼女がいるのに他の女の子をみて「かわいい」と漏らす加賀に、信じられないほど熱いテンションで怒りだす賀屋の人間味が愛おしいコント。熱い人なんだなと思っていたら次第に、「付き合うこと」への美しい幻想を持つ人だと明らかになっていく過程。この人のために誠実でいようと思わせてしまう賀屋のキャラクターがかわいい。


『洗濯機』


かが屋『洗濯機』コント 2019.08.26 資料映像

『かわいい』に続いて、イノセントな賀屋先輩のフィーチャー作品。新品のドラム式洗濯機を肴に酒を飲もうとする先輩と、戸惑いながらも迎合していく加賀。わかりあえなさを貫く洗濯機の作動音が切ない。


『合コンの話』


かが屋『合コンの話』コント 2019.03 資料映像

前2本に続く「イノセント賀屋3部作」でした。合コンの話をしていた数人の男のところに友だちの賀屋がやってくるものの、なぜか「無人島にひとつだけ物を持っていくとしたら?」の話題にすり替えようとする加賀以外の仲間たち。周到に避けていた「本音」が明らかになったときが哀しいけれど、賀屋の何も知らなさに救われもする。


『兄弟』


かが屋『兄弟』コント 2019.08.26 資料映像

パントマイムを覚えた小学生くらいの弟(加賀)が高校生くらいのお兄ちゃん(賀屋)を呼び出してその腕前を披露しようとするコント。いつもならばお兄ちゃんじゃなくて母親が出てきてもおかしくないのだけど、ここではその兄弟独自の関係性を見せようとしている。親よりもお兄ちゃんとかに褒められるほうが確かにちょっとうれしいよな、という実感がこもっていて好き。『親友』とかもそうだけど、かが屋はこの“関係性”に迫るコントがとてもいいのです。

 

僭越ながら、クイックジャパンウェブではじまったこちらの記事の取材・テキストを担当しています。めっちゃ面白いし加賀さんらしい感じになっています。

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