縞馬は青い

縞馬は青い

映画とか、好きなもの

平成最後の夏、あるいは青春時代の終わりに/枝優花×羊文学『放課後ソーダ日和』

bsk00kw20-kohei.hatenablog.com 映画『少女邂逅』のアナザーストーリーとしてYouTubeで公開されているドラマ『放課後ソーダ日和』が予想以上にグサグサと心に刺さりまくっている。映画が学生時代のリアルな闇の部分を描いていた作品であったから、光に焦点…

ナカゴー『まだ出会っていないだけ』@下北沢駅前劇場

もうたまらなく面白い。東京に来ていなかったらこういう作品にも出会えていなかったと思うとそれだけでぶるぶる震えてしまう。ナカゴーを見れる環境にいる人は、すぐさま見に行ってほしい。今話題の『カメラを止めるな!』なんて目じゃないほど、笑いと感動…

映画『未来のミライ』はファンタジーではなく、単なるくんちゃんの妄想物語だ

(短文レビュー) ああいう「おもしろい家」で暮らしてると、創造力というか、妄想が止まらないんだろうな。これはファンタジーというよりも、(単なる)「くんちゃん」の妄想物語なのではないか。 だから未来のミライちゃんが「いきなり」現れることに理由…

そうして暑い夏が始まって/枝優花『少女邂逅』

ときどきある。席を立って映画館から出ても、心だけをその場所に置いてけぼりにしてきてしまうことが。外のむわっとしたぬる~い風だけを肌に感じながら、遠い世界から吹いてくる息吹に持ち上げられ、ふわふわっと宙に浮いてしまうような。映画の息吹を感じ…

飛べないから飛ぶんだ/鄭義信『焼肉ドラゴン』

全面的に指示できる映画ではない。むしろあまり好きではないタイプの映画だったのかもしれない。それでもなにかグサリと刺さる、心がじんじんと火照ってしまう「熱」をつねに感じさせる作品であった。 ときは1969年、高度経済成長期の真っ只中。場所は関西の…

毒キノコはなぜ、かくも美しいのか/ポール・トーマス・アンダーソン『ファントム・スレッド』

彼に恋する事で人生は謎ではなくなるのよ 終盤でアルマが語る言葉。人生は謎ではなくなる。そう、この映画では恋愛や結婚といった人間関係の「からくり」が提示される。その内実は実に高貴で美しく、また滑稽で可笑しく、震えるほどに怖い。ただ、鑑賞中(特…

ビー玉に宇宙を透かしていた/是枝裕和『万引き家族』

なんとも釈然としない映画だ。いや、そんなことは観る前からわかってたことだけど、なんというか、打ちのめされた!って感じ。泣いていいのか怒っていいのか、はたまた笑っていいのかわからないこの感じ。どれもが正しい感情なんだろうけど。うん。カンヌを…

ストロベリーミルクシェイクを飲み干して/リン・ラムジー『ビューティフル・デイ』

映像と音楽が響きまくる特異な映画。リン・ラムジーの演出はあれこれと想像したくなる余白に満ち、ジョニー・グリーンウッドの劇伴はセリフよりも雄弁に状況を物語る。この狂気と愛が混じりあった映画、それが『ビューティフル・デイ』。 ジョー(ホアキン・…

それは幻想か、あるいは忘れてしまった現実か/ショーン・ベイカー『フロリダ・プロジェクト』

なんて美しい世界なんだ。「“夢の国”のすぐ隣には辛く苦しい現実があった」というドロドロに腐りきったこの世界を映しておきながら、どうしてこんなにも彩り豊かで鮮やかになるのだろう。どうしてこの世界はこんなにも美しく、またそれを覆ってしまうほどに…

「芸術のゴールデンウィーク!」と題してポップカルチャーを貪り喰らった一週間のこと

社会人になってはじめてのゴールデンウィークだ。この頃、どうやら自分は孤独が好きではないらしい、と気づきはじめたのだけれど、そうは言っても友だちがあまりいる方ではないし、実家に帰るのもお金がかかるのでこのゴールデンウィークは孤独に、なんの予…

スイートな“恋の始まり”と束縛からの解放/ダニエル・ヒベイロ『彼の見つめる先に』

2010年代になってアカデミー賞ほか世界の映画祭で大きなテーマとして掲げられてきた「多様性」についての一連の考察は、本作において一つの重大な回答を示したのではないだろうか。そう思えるほどに優れた映画であると感じたし、なによりも、すんごくおもし…

伝染する空虚と届かぬ愛/エドワード・ヤン『恐怖分子』

惚れ惚れする印象的な画を並べるためだけのエントリーです。 本作『恐怖分子』における均整の取れた美しい画の根底にあるのは、ビルやマンションの窓、写真、鏡などの四角形。これはおそらく、この映画における4人の主要人物を表している。妻と暮らす現状の…

呪い祝われ、わたしたちはここに立つ/キコ qui-co.『鉄とリボン』

座・高円寺2で催された演劇グループ キコ/qui-co.の第10回公演『鉄とリボン』を観劇してきました。東京へ移り住み、前々から興味のあった演劇についに触手が伸びた。演劇を観るということ自体ほとんど初めてに近かったのだけれど、これでよかった、と心底思…

彼は彼女に魅了され/岩切一空『聖なるもの』

『聖なるもの』本予告編 - YouTube 「新時代の到来」と噂される岩切一空監督の長編最新作『聖なるもの』を観た。初日の舞台挨拶付きで。これがすっごく変な映画で、頭にこびりついて離れないシーンとかしょうもないセリフとか、ガンガン鳴り響く音楽とか可愛…

エロティックな三浦さん/冨永昌敬『素敵なダイナマイトスキャンダル』

『素敵なダイナマイトスキャンダル』本予告映像 - YouTube (短文レビュー) 幼い頃に実の母親が隣の家の息子とダイナマイトで心中をした、という驚きの体験をもつ雑誌編集者・末井昭氏の同名自伝を原作として映画化されたのがこの作品。 「ある一人の人物の…

最近おもしろかったもの(2018年3月1日~)

はじめに 最近おもしろかったもの十選 【音楽】Rejjie Snow『Dear Annie』 【音楽】Nulbarich『H.O.T』 【音楽】androp『cocoon』 【ドラマ】Amazonプライム『さまぁ~ずハウス』 【ドラマ】TBS『アンナチュラル/9話「敵の姿」』 【ドラマ】フジテレビ『隣…

孤独の先にある孤独/今泉力哉『パンとバスと2度目のハツコイ』

自分はこうゆう性格だからと決めつけたものの、やっぱりそうじゃないと思ったり実は無意識に正反対のことを強く求めていたり、人間って色んな感情を抱えながら模索して生きている。抽象的な導入になってしまったけど、本作、元乃木坂と三代目が主演のアイド…

出るものが出る/吉田恵輔『犬猿』

吉田恵輔監督による4年ぶりのオリジナル脚本映画。これがめちゃ面白かった。久しぶりに映画館で泣いた。これは兄弟を持つ人よりもこうゆう兄弟をそばで見てきた人の方が心に刺さるかもしれない。僕はこの映画を観て、子供の頃毎日遊んでた近所の兄弟を思い出…

人と人は分かりあえるのか/吉田大八『羊の木』考察・感想

『桐島、部活やめるってよ』において吉田大八監督は、カメラを向け合うことによって通じ合う2つの心を描き出した。ラストの屋上のシーン、前田が将来を語り、宏樹が涙するあの場面である。決して交わることのなかったあの2人の邂逅。住む世界が違っても、考…

浜辺美波が教えてくれる この世界の美しさ/月川翔『君の膵臓を食べたい』

君の膵臓をたべたい Blu-ray 通常版 出版社/メーカー: 東宝 発売日: 2018/01/17 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る 〈A面:君と僕 私と彼〉 私が一年前に塾講師のアルバイトをしていたとき、大学受験を控えた高校3年生の生徒が「生きることがつ…

焦らずゆっくりと私たちの家族を作ろう/中谷まゆみ『隣の家族は青く見える/第1話』

無知こそが要らぬ偏見や差別を生むんですよ これは、松山ケンイチ演じる五十嵐大器が、後輩社員の矢野朋也(須賀健太)に説教されるシーンで発せられる台詞である*1。本作が伝えようとしているのはまさにこのことではないだろうか。偏見や差別は無知から生ま…

"サイコーな君"のとなりで、/Netflix『このサイテーな世界の終わり』

The End of the F***ing World | Netflix Official Site Netflixで1月5日に公開された『このサイテーな世界の終わり』が最高に面白かった。同じ公開日の『Devilman』が予想どおりヘヴィーな作品だったので、その箸休めとして本作を観たはずだったのですが、…

君はここから出られないのだ、夏!/長久允『そうして私たちはプールに金魚を、』

見てくださいよ、この少女たちの煌めきを。かっこよすぎるでしょ…。 本作『そうして私たちはプールに金魚を、』は、第33回サンダンス映画祭の短編部門でグランプリを受賞した作品。この映画祭もその栄冠もどれくらい凄いのか判断しかねるんですが、なんでも…

2017年ベスト映画&ドラマのお話

はい。(いつも通り)映画漬けの一年でした。せっかくブログというものを始めたので大々的に記録しておきたいと思います。今年映画館で観た新作映画の数は67本。加えてNetflixで限定公開された映画を2本、見逃した映画をレンタルで2本観たので、合計71本(邦…

一歩を踏み出す勇気/大九明子『勝手にふるえてろ』

女性版『モテキ』、あるいは日本版『スウィート17モンスター』の様相でした。松岡茉優演じる24歳のこじらせ女子によるぐるぐるネジネジエンターテイメント、これがまぁ面白い。突然挿入されるミュージカル調や多彩な服装が表すカラフルな映像、松岡茉優の一…

暇つぶしこそ至高/ドラマ『セトウツミ/最終話』

「もう少しだけ続けばいいのに」と思える時間ってありますよね。 好きな子と喋っている時間、趣味に打ち込んでいる瞬間、美味しいものを食べている時間。そして、河川敷で駄弁る「あいつ」との時間。 最終話。両親と姉を殺害する秘密の計画を立て、遂に実行…

2017年ベストミュージックのお話。

順不同。今年を彩った20タイトルです。 Nulbarich / Long Long Time Ago 今年知り、すぐさま私の音楽シーンに入り込んできたアーティスト。中でも「In Your Pocket」を聞いたときの衝撃ったら。色んなものが融解されていく音楽。 欅坂46 / 真っ白なものは汚…

怒らない国ミャンマーで怒りが爆発した彼女/Netflix『あいのり Asian Jorney/Season1-6』

NETFLIXとフジテレビが共同で製作した『あいのり』の新シーズン。地上波放送からは実に8年ぶり(CS版を含めると5年ぶり)の復活ということで、その頃少年だった筆者にとっては少しの懐かしさもありつつ、この番組を見れるほど大人になったことに喜びを感じて…

おしゃれな田舎ムービー/森ガキ侑大『おじいちゃん、死んじゃったって。』

今年も、血の繋がらない家族が描かれた『幼な子われらに生まれ』や『彼らが本気で編むときは、』、家族に危機が訪れるSFちっくな『サバイバルファミリー』、『美しい星』などが公開され、《家族》を題材にするとそのバリエーションに事欠かない日本映画です…

奴らと彼はいつもそばにいて/トム・フォード『ノクターナル・アニマルズ』

やられた───。面白すぎた。今作は「スリラー映画」の部類に属すると思うのだけど、それを形作っている「ミステリー」と「ホラー」の両側面がパーフェクトな割合で調合されている。オープニングから強烈な今作ですが、その謎解きと驚嘆の演出に興じつつ、美麗…