コロナ感染拡大下のオリンピック開催、蹂躙される文化とスポーツ、ワイドショー的SNS、双方向ディスコミュニケーション、排除したい人々と、ここにある一人ひとりの生活、剥き出しの刃、底知れぬ恐怖、世界から隔絶された部屋、部屋から隔絶された世界。
日々苦しんで怒っていることは確かなのにその理由は明白なときとよくわからないときがある。
何が好きで、何を面白いと感じるか。自分はそれを言語化する方法でしかこの世界と付き合っていけない。それは一面ではとても悲しいことであり、悔しいことである。怒りや苦しみをうまく言語化して叫んだり人に話して共感を求めたりできないのは端的に言って辛い。それをするにはいくぶん言葉の使い方を知らなさすぎる。感情を捉えられない。知識がない。言葉が汚されている。叫べないことは本当に悔しい。涙が出るほどに。臭いものに蓋をして忘れるわけではない。そっと置いておく。叫べるようになったときのために、記憶に留めておく。記憶の片隅ではなく、わりかし中心のほうに置いておいたほうがいいかもしれない。だから今日も健康的に怒り苦しみながら、好きなものに囲まれて生きていく。
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宇野さんと柴さんのトークライブを配信で観た。オリンピック開会式翌日に収録されたもの。それゆえかおふたりとも感情のたががはずれ思わず感極まる場面もあった。話題は自然と小山田さんの話になる。途中乱入したタナソーのエクスキューズが印象的だった。このSNS社会にあって、被害者のいる事象に加害者意識のないまま(SNSでも)発言することはあってはならない。加害者を糾弾するのも何様だよって感じだし、たとえ意図と違うくてもどの発言が再び被害者を苦しめることになるかわからない。
『芸人雑誌』編集長と先輩が猛プッシュしていたのでコントユニット「ダウ90000」の配信ライブを観た。今年の初めに行われた第一回本公演『フローリングならでは』がまだVimeoで観れるのだ(1000円)。玉田企画をややマイルドにしてより女性キャラに重点を置いたような、若者の恋と友情とディスコミュニケーションに関する80分の会話劇。最初から人数が多すぎ、セリフの間を詰めすぎ、等々入り込めない要因は明らかだったけど、どう考えても好みだった。コントライブを観ることに決めた。YouTubeで最初にみた「女ミルクボーイ」がもうすでに面白かった。
ケリー・ライカート『ウェンディ&ルーシー』と『オールド・ジョイ』を何日か空けて観て、特集上映の4作品はコンプリート。どちらもめちゃくちゃよかった。ていうかライカートとの相性めっちゃよかった。みんなそうだから騒いでたんだろうけど。『ウェンディ&ルーシー』は貧困女性が職を求めてアラスカに車で行く道中で、愛犬ルーシーを見失ってしまったり、車が故障してしまったりして足止めを食らう話。すんごい切ない。「ずっと犬を探す話」といっても過言ではないストーリーの淡白さだけれど、ミシェル・ウィリアムズからはひとときだって目を離せないし、ルーシーはかわいいし、ジェンダーと貧富の捉え方がとってもリアルで鋭利。冒頭の長回しからただならぬ空気を放っている。『オールド・ジョイ』もなぁ…哀しかったなぁ。中年男のふたり旅(一方は結婚済・子供産まれる直前、もう一方は独身)はそりゃあ切なさを帯びる。この旅と川の映画を観た次の日に川へ行ったのだけど、感慨がすごくてあんまり楽しみきれなかったかもしれない。ライカートは映画好きだけでなくもっと広くポップカルチャー界隈に認知されるべき監督だと思う。
ニッポンの社長の単独ライブ『お金がない!』を配信で。ケツの顔を見るだけで笑ってしまう「弱点・ケツ」な自分でも、今回はあんまり笑えなかった。ちょっと喋りすぎでは?とか思った。「ほっこり」のネタと「俺は坂本。生きている。」のカオス舞台バージョンはよかった。
『愛の昼下がり』をみてロメール特集全6作品もコンプした。今年は新作映画をそんなに観れている手応えがないけど、旧作の特集上映にはいい感じで足を運べている。Filmarksの便利機能で、1年半でロメールの映画を短編含め26本も観ていることを知る。今回の初期作品集は個人的にすべて微妙で、それはなんでだろうと考えると、「男だなぁ…」って話ばっかだったからだと思う。女性登場人物の個性がぜんぜん出てこない。『飛行士の妻』『緑の光線』『レネットとミラベル』が変わらずロメールベストです。ちょっと前にDVDBoxをメルカリで買って観た『恋の秋』も熟され気味でよかったな。
試写で9月17日公開『由宇子の天秤』を鑑賞。ここにも旬の河合優実さん。主人公の心の揺れを左右する重要な役どころだった。正義感と行動が乖離した、二重規範を描いたようなすごく真に迫る映画ではあったのだけど、ストーリーテリングのなかでの何かが途中で捻れてしまっている気がして、主題がスッと入ってこなかったのは確か。加害者意識を持たざる正義感の危うさを表出していて、じっくり考えたい主題ではあった。150分の映画がこれだけ張り詰めているとちょっとしんどいんだけどしょうがないか。
ダウ90000蓮見翔が作・演出、玉田真也とテニスコート神谷さんが企画のコントライブ『夜衝』を観にユーロライブへ、と思っていたところ当日にコロナ関係で急遽中止になってしまって生では観れず。でも悔しいので配信で観ました。何しろラブレターズ溜口さん、ロロ森本華さん、伊藤修子さんという謎の最強メンツだったので。僕はとにかく神谷さんが好きなのだ。8本か9本くらいだろうか、コントがいくつか繰り広げられるのだけどこれは驚きの面白さだった。この会話劇の生々しさと笑いの純度。会話劇だけじゃなくてごはんを食べるところのあのギミック笑かしも凄まじい。冒頭のコントの「オフのLiLiCoが観た映画って言われたら、急に観たくなんない?」から心掴まれてました。客演ありライブ今後もやってほしい。蓮見さんのツッコミはシンクロニシティの男の人に似てる。そういえばシンクロニシティは現在ボケのよしおかさんが体調不良で活動休止中とのこと。長い目で応援したい。こういうときのAマッソの優しさ。
オードリーが司会、コンビ大喜利『AUN』のテレビ版を。イベント版のメインはコンビ大喜利よりも入場時のフリーお笑い総合格闘技だったから、それはもちろん損なわれてしまったものの、2連覇の真空ジェシカとAマッソの安定感がテレビクオリティを担保していたし、三四郎とかがまさかの面白さを見せていてよかった。テレビってでも、どこまでいっても窮屈ですね。
『1Q84』が佳境。ほぼこれを読み進めるだけで休みが終わった。