縞馬は青い

縞馬は青い

映画とか、好きなもの

木下惠介「永遠の人」

雄大な阿蘇山麓で繰り広げられる
男と女の愛憎の叙情詩

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これは面白すぎてどうにかなりそうでした。欲にまみれた人間関係や観るものを激情に駆る大仰な演技など随所にこの時代の邦画らしい側面を感じるものの、一方で今まで観てきた邦画とは似ても似つかない唯一無二の存在感と娯楽的な面白さがある。中でも特筆すべきは、この物語が5つの章で構成されていることです。その1つ1つがとにかく素晴らしいということは言うまでもなく、山場が5つも(つまり各章ごとに)訪れるのでその満足感と言ったら半端じゃない。また、様々な「音」の使い方には衝撃を受けました。

この映画が具体的にどうゆう物語なのかと聞かれると色々ありすぎて困ってしまうけれど、物語の軸として、運命と呼ぶにはあまりにも「非情な現実」に逆らい続けた女性の〈29年間〉の記録がしっかりと刻まれています。周りの人物達の心理描写も繊細に作り込まれていて、圧倒的に悪いことをしているサイテー男も利己心に乏しい優男も、その背景を考えると一定の共感を許してしまう。登場人物たちを簡単に善悪で判断できないところがこの物語の難しさであり、突出した面白さを作り出している要因の1つでした。

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「この時代に日本にもこんな素晴らしい映画が…!」という言葉はあまりにも短絡的なので使いたくないですが、明らかに現在の邦画では再現不可能な最高峰のエンターテイメントがここに存在していますし、まだまだこういった名作が昔の邦画にも隠れていると思うと楽しみが尽きません。
映画館で観たいクオリティー!

 

木下惠介生誕100年「永遠の人」 [DVD]

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