(短文レビュー)
おもしろい。よくできてる。39分という上映時間からは想像できないほどに、鑑賞後は余韻で胸がいっぱいになる。
ある一つのクラスで唐突に行われた「LGBTについての授業」。その授業を契機に、「俺らのクラスだけこの授業してるってことは、もしかしてこの中にいるんじゃね?」とからかい男子の詮索が始まり、クラスにも波紋が広がっていく。
高校の、ある夏の日の、月曜~金曜日までの5日間を切りとり生徒たちの様子を半ば群像劇のような形で描き出した作品。「クラス内のLGBT探し」という“事件”が物語をドライブさせていく質感や*1、吹奏楽の演奏、更衣室でのふたりの女子など、どことなく『桐島、部活やめるってよ』を彷彿とさせる、社会的でありながらエンタメ性も兼ね備えた内容に仕上がっている。
こうゆう作品の場合、物語が進むにつれ、どうやって物語を締めるのだろうという期待が高まっていくものだ。その大きな問題に「逃げずに」立ち向かうのか、そこが気になるところ。本作の結末は観るもの各々の感想に委ねたいのだけど、個人的には、逃げているように見えて実は逃げていない、あの傍観者を真正面から描こうとしている作品だと感じた。
そして、ミニシアター邦画界でひとつのジャンルを確立しつつある「ガール・ミーツ・ガール」が本作でも重要な骨組みになっている。男子はからかうことしかできず(彼の存在は余韻の塊。素晴らしい)、女子は愛ある無下な肯定で相手を傷つけてしまう(保健の先生の思惑も悪い方向へ。難しい…)。「自転車に二人乗り」という物理的な距離感と精神的な距離感が反比例していく様子がなんとももの悲しい。カランコエの花言葉には劇中には出てこない「おおらかな心」という意味も込められている。「私たちは違うようでいてみんな同じなんだ」と再確認するために『放課後ソーダ日和』をみましょう。
最後にネタバレで少し。「桜がつきちゃんに恋してること」と「桜は教室にいない」という事実だけが残るラスト。あれがなんとも…胸がいっぱいになる…。この「あとは各々で考えてね」っていう終わり方も、この映画は随所で伏線が張ってあるからもしかしたらからかい男子にも深い事情があったのかもしれないと想像することができるし、更衣室での彼女の不自然な動きもいろいろな意味を持ちうる。この最後に残る“事実”の強度が、この映画の強さだと思う。