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エンターテイメントの観客として

三島有紀子「幼な子われらに生まれ」

"わたし"から"われら"へ

郊外のニュータウン。マンションが立ち並ぶ中、1つ1つの窓からは部屋の光が漏れ出る。その中の1つ、浅野忠信演じる男性・信が帰っていく家には妻と妻の連れ子である2人の娘が。一方で自身にも別れた妻との間に血の繋がった娘を持ち、年に4回ある面会の日には一緒になって子供のようにはしゃぎまくる。やがて反抗期を迎えた娘が血の繋がりに敏感になり父に反発、何も知らない下の娘は無邪気で、妻は新しい命を授かり…。3人の父親と2人の母親、そして3人の子供たちが登場し生まれたドラマは、家族の存在意義を真正面から問い質していく。

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とにかく三島有紀子監督のポテンシャルに驚かされた。『しあわせのパン』というどこか幻想的でほんわかした映画を作っておきながら、こんなにも真に迫った映画を撮ってしまうのだから。しかしまぁこの映画の予習として見た『硝子の葦』(WOWOWのドラマ、Amazonプライムで視聴可)も、扱う問題の厳しさと内容の暗さに驚いたけれど今作に至る片鱗は見せていたかもしれない。これらの作品に「家族」というテーマをひっそりと忍ばせていた三島監督が遂に正真正銘「家族」を題材にした映画を撮ったんだな。

この映画を見ると家族はとてつもなく面倒臭い存在だと認識させられる。子供も親も自分の思う通りには動かず、みんながみんな重い問題を抱えているけれど共有することはできない。何のために血の繋がらない他人と家族になっているのか分からなくなってしまう主人公もまた状況が変わるのを待つしかない。しかしいくら待っても互いに傷つくばかり。閉塞感、どうしようもなさが充満する。そんな中、血の繋がりのない「他人同士が家族になる瞬間」を垣間見た主人公と私たちは、ついに打開策を見つけるのだ。

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親子の関係に血の繋がりは必要か。もちろん無いよりはある方が安心感がある。血の繋がりがないというのはそれだけで不安定だ。けれど心の中の「何か」を変えるだけで互いの心を繋ぐことができるかもしれない。1人が2人になると、やがて3人目が生まれる。わたしが"われら"になるだけでこんなにも心強いのだから家族は捨てたもんじゃない。