縞馬は青い

縞馬は青い

映画とかドラマとか、好きなもの

ポップカルチャーをむさぼり食らう(2019年11月号)

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11月は、“人生でいちばん口内炎が痛い日”があった。これはその日に書いている。憎たらしいったらありゃしないそいつは、下の歯にちょうどあたる位置にできていて、しゃべるのはおろか、何もしてなくてもずっと全身を痛みが貫いてくる。こうやって事細かに描写して読んでる人にその痛みをお裾分けすることでしか心身を和らげられないのだけど、お陰さまで言うほどでもないかなという気分になってきました。ありがとうございます。今日は一日中取材をしててしゃべり倒しだったんでほんと死ぬかと思った。

けどなんとか生きて家路についたので、服を着替えて20時ごろに再び家を出てアップリンク吉祥寺に行き『若さと馬鹿さ』という映画を鑑賞。古アパートに同棲して暮らす30手前のダラダラカップルの日常が描かれた映画。粒子が粗く自然光をとらえた温かい映像がとてもよくて、一つひとつの生活描写もグッとくるものばかり。例えるならば『きみの鳥はうたえる』『愛がなんだ』のような自然さ。とことんダメなふたりだからこそ共感して無理なく寄り添える。締め方はちょっと気に食わなかったけど、それ以上に主演の松竹史桜さんの魅力が爆発していて、今年みたインディーズ映画のなかでもかなり印象に残る映画だった。『岬の兄妹』には俳優として出ていた中村祐太郎監督、こういう映画を撮り続けてほしいな。映画を観終わったあとは最寄りの銭湯で体を温め、心身のパワーをチャージした。仕事終わりでも映画観て銭湯に行ける。まるで休日みたい!と思ってめちゃくちゃ元気になりましたとさ。めでたしめでたし。

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いやでもね、まだ口内炎の話題はつづきますけどね。笑うのすら激痛だからしんどかったんだけど、Gyaoで見られるM-1 3回戦のみんなのレコメンドがTwitterでいっぱい回ってくるもんだからまぁ見ちゃうよね。シンクロニシティは爆笑しそうになったので思わず停止してしまい後で見ることに(それくらい最高)、蛙亭、ラランド、ミルクボーイ、シシガシラ、キュウ、Dr.ハインリッヒ、しんぼる あたりが最高だった。そのせいで口内炎ができてから4日くらい経った今も、一向に治る気配がなく酷くなってきています。しかしM-1楽しみっすね!(笑いたいけど笑えないという経験は、「笑ってはいけない」の擬似体験としてはおもしろかったけど、普段爆笑できることの幸せを強く噛み締めた。みんな笑えるんだから、たくさん笑って生きていこうね。)

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口内炎は治った。でも体調が悪いのでプラマイゼロ。と言いたいところだけど、やっぱりおいしいごはんと笑いという感情を取り戻した僕は最強だ。なんだってできちゃう。いやはや、テレビ千鳥の「高級レストランに行きたいんじゃ!」回のおもしろさったら……。友だち同士の悪ふざけ極まれり、な笑い。若年のシェフとスタッフさんがちょっと悲しそうな顔をしていたのは気になったけど、内心どう思ってたのか気になるな。アート映画をあんな風に笑いに変えられたら俺はぜんぜん笑っちゃうんだろうな。ーーAマッソを久しぶりにYouTubeで見かけたら、すごいおもしろくなくなっててショックだった。こんなことあるかと思って加納さんがちくまwebで連載しているコラムを読みにいったら、秀逸な文章で唸ってしまうという…。第19回「拳銃!」。何気ない日常の所作の積み重ねがドラマになり、最後にはサスペンス味を帯びだすというスペクタクルテキスト。第18回の森見登美彦風テキストもいい。やっぱりおもしろいんですよAマッソは。安堵。

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今月は後半の体調崩し期の前に『最初の晩餐』『マチネの終わりに』『わたしは光をにぎっている』と3つも感想エントリーを書けたので満足。『わたしは光を〜』では、言霊を信じて強く生きてやりたい、と踏ん張って意気込んだけど、そうするとしんどいときに取り返しがつかないことになるんだと最近気づいたので、もうちょっと適当にゆるく生きるのが性に合っていそうだ。こうやって、言葉を言葉で打ち消すのはとても大事。リアルサウンドに寄稿した「桜井ユキ評」が思ったよりよく書けて、彼女と彼女が演じるキャラクターたちのことがもっと好きになった。意志を強く持っているけれどそれゆえに生きづらく、時々迷いの表情が現れる女性たち。『真っ赤な星』の桜井ユキがその最たる例だと思う。三浦透子もいるしユマニテは強い。

Netflixで12/15配信、11/29に劇場先行公開の映画『マリッジ・ストーリー』がとてもとてもすばらしい。『フランシス・ハ』『マイヤーウィッツ家の人々』の大好きなノア・バームバック監督。東京国際映画祭でひと足早く見たとき、劇場がまるで『フルハウス』に差し込まれた笑い声みたいに数秒ごとにどんどん受けていて、なんか映画を観ているよりお笑いを観ているみたいな、それくらい異様なお笑い家族映画だった。だけど内容は、幸福だった家族が離婚を決め、血みどろの裁判に突入していく様が描かれているので『ブルーバレンタイン』のように極めて地獄。甘辛の塩梅がえげつないほどうまいから、笑えるし、本気で苦しくなるし、泣いてしまう。スカーレット・ヨハンソンアダム・ドライバーは、間違いなくベストアクトだし、あの体格差は妙に愛らしかった。配信されたら数日は冒頭シーンを繰り返し観ると思う。『最高の離婚』が好きなひと、絶対観るべし。

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乗り物をうまく活用している作品はなんかめちゃくちゃ心を惹かれてしまう。『このサイテーな世界の終わり』シーズン2もすばらしかった。アリッサとジェームズはS1から「横に並ぶ」というだけで特別な意味づけをされているから、車で“彼らの間にいるボニー”という表象の仕方や、最後のほうの展開は鳥肌モノだった。もっとみていたい。ーーここにきて高畑勲にハマる。『おもひでぽろぽろ』も純然たる乗り物映画。寝台列車でひとり過去を回顧し、田舎で同乗した青年に心を許して、最後の電車での決断に至るまで。『WOOD JOB!』とか最後の流れほぼ一緒やん!とか思ったし(大好き)、『四月の永い夢』とも通じる部分が多々ある。主人公のタエ子にはめちゃくちゃ共感できてしまうタイプの人間です。ーー続けてみた『かぐや姫の物語』も半端なかったなぁ。照射されるのは現代人が抱えるフラストレーションと同じもので、その生きづらさに真っ向から立ち向かいながら、この彩りに満ちた世界の美しさを垣間見せる。「生きるために生まれてきたのに」と嘆くかぐや姫の儚さたるや。数少ないアニメ映画鑑賞数のなかでは一番好きな作品だ。

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シャムキャッツのEP『はなたば』がめちゃいい。なかでも「はなたば 〜セールスマンの失恋〜」をリピートして聴いてる。三部構成みたいな音楽のなかに、かわいい日常と異世界感と切なさの刹那が盛り込まれていて、なんだかクセになって繰り返し聴いてしまうんだよな。〈くたびれたコンビニの前で缶ビールを開けたときにふと思った〉〈プールサイドで涼しい風にちょっと当たっていたかったね〉とかまずフレーズが最高だし、言葉が音のなかに最大限に詰め込まれてて耳心地もいい。

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ある事情からYouTubeにめちゃくちゃ刺激を受けたひと月だったのだけどその折に見た『みんなのかが屋』がとてもおもしろかった。かが屋のふたりが展開するYouTubeチャンネル*1。漫画『バクマン』で亜城木夢叶のライバルとして登場する七峰透が編み出した漫画制作の手法ーーインターネットで募ったモニター50人から物語のアイデアを得て、それを組み合わせて漫画を作るーーに感銘を受けた加賀くんが、「悪いモンがやったからダメになったけど、(俺たち)良いモンがやったらうまくいくんじゃないか」との発想でうまれた企画とのこと。生配信で行われる『みんなのかが屋』は“15分”の制限時間のなかで視聴者からアイデアを募り、ひとつのコントを作り上げていく。これがまぁ想像以上に毎回よくできていて、ハプニング的なものも含めてぜんぶおもしろいのよ。1回目放送のひとつ目の『トイストーリー』を題材にしたコントからもう2人の魅力が爆発してて最高なのでぜひご覧あれ。


みんなのかが屋 15分でコント1本つくる生配信 概要

今月最後のビッグトピックといえばアンタッチャブルの復活ですね。ネットでバズってるのを確認してから後追いで見ることになったけど、わかっててみてもめっちゃおもしろいし、今世紀最大のグッとくる〜案件だったわ。『M-1 2004』のときのネタを見返したり、TLでまわってきた柴田さんがネタ中に爆笑しちゃうやつ見たり、単純に幸せでした。また見れる、と思いながら振り返れることの喜び。

来月は12月なんで演劇とかYouTubeとかの年間振り返りorベスト(映画は個別エントリーで)を書きまっす。いや〜忙しい忙しい。インフルエンザにだけは注意したい。

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*1:作家として『Aマッソのゲラニチョビ』『しもふりチューブ』等の白武ときお氏が参画。