縞馬は青い

縞馬は青い

映画とか、好きなもの

カルチャーをむさぼり食らう(2019年7月号)

f:id:bsk00kw20-kohei:20190804115143j:image気分が落ちているときに一番支えになるのは「お笑い」だ。映画を観て涙を流すでも、音楽を聴いて体を揺らすでもなく、理性を失いながら顔をぐちゃぐちゃに歪ませて笑う。カルチャーに順序をつけるのもおかしいことだけど、映画よりも音楽よりも、お笑いが自分にとって一番大事なものだということを最近噛みしめている。どれもないと生きていけないんだけど。笑いに執着して生きているのはアイデンティティの一つである関西弁を去勢された元関西人現シティーボーイのせめてもの抵抗なのかもしれない。バラエティや漫才がないと僕は生きていけない。ほんとうに生きていけないのだ。そもそも僕にとってカルチャーとは、「食」と同じくらい大事なもの。だから貪り食って、こうやって文章として排泄している(排泄が追いついてなくてこの日記が下痢みたいになってる)。吉本うんぬんにつなげるつもりはまったくなくお笑いについて書き出したんだけど、最近すごく思う。日々の出来事にただ笑い、泣き、ときに考えさせられながら、自分の心のうちを好きに書いていきたいなって。日々ツイッター上を流れる情報の狂ったスピード感と、物事に優先順位をつけないと取り残されてしまうその速さに辟易として、そんなふつうのことを忘れちゃってた。ということで今月も数多のカルチャーに救われました。

音のならない夜

いま一番笑わせてくれるのは千鳥。もっぱら『相席食堂』と『テレビ千鳥』に生かされている。相席食堂については以前ブログを書いたのだけど、やっぱりあの、誰も拾わなければ“醜態を晒している”ようにしか見えない芸能人たちが、ふたりのツッコミによって生命を得る姿にグッときてしまうのだ。まったく新しく、それでいて美しいいのちを。今月は蛭子さんの回がおもしろかったかな。そんで『テレビ千鳥』は7月29日放送の「海に飛び込みたいんじゃ‼︎」回が定期的に見たい最高の番組だった。「押すなよ」のくだりでそれを言ったノブではなく言われた大悟が迷いなく海に飛び込むという新しすぎる笑い*1を5、6年前に関西の番組(土曜の朝といえばな「せやねん」)ではじめて見たときにめっちゃ笑ったのを覚えてる。そんな千鳥×ロケの代名詞的な「海ダイブ」をロッチ中岡、三四郎小宮、プラマイ岩橋との競演のもとで繰り広げるロケ。元水泳部から見ても中岡の飛び込みはきれいすぎてそういうとこで爆笑してると笑いすぎて咳が止まらなくなった。最高だ。

tver.jp最近、やっと霜降り明星のよさがわかってきた*2。ていうかめっちゃ好き。オールナイトを聞くようになってオープニングがしっかりおもしろいことに惚れ惚れしてしまった。YouTube毎日投稿をはじめたときはやっぱり第7世代は違うぜ、と思ったけど今のところ毎日見るほどではないのでもう少しだけがんばってほしい気持ち。意外とYouTubeは一筋縄ではいかないんだよね〜。ひとつ気になるのは彼らが忙しすぎるところ。心配になってしまうのはあまりよくない。ーー最近は決まった音楽しか聴かなくなってしまい、それはほとんど中村佳穂のことを指している。フジロックYouTube中継ではじめて歌ってる映像をちゃんと見たけど、楽しそうすぎるし声が七色すぎるし、聴いてて楽しすぎない??「アイアム主人公」とか「SHE’S GONE」とか、サビを思わず口ずさんちゃう系が好き。

7月31日*3。カネコアヤノと峯田和伸の弾き語りツーマンへ行ってきた。熱心な音楽ファンではないので銀杏BOYSはほぼ存じ上げなかったのだけど(峯田さんは映画でよく見る人っていうイメージの方が強い)、とにかくカネコアヤノの弾き語りを求めに定時退社でLIQUIDROOMに急いだ。もう、、よすぎよ、、。夏らしいショートカットに涼やかなノースリーブワンピース姿で現れたかわいい女の子が魂を震わせながら歌う歌。バンドセットもいいけどこれを見たかったんだよな〜!!声を吹っ飛ばした後の狂った感じの顔が好き。優しいトーンのトークは癒しすぎる……。初披露の新曲「ひかりの方へ」もとてもよかったし、もう夏!!って感じで夏でした(語彙力)。そんでよ。峯田さんやばいっす。フジロックの映像も見たけど「生きたい」は心に直接流れ込んできたし、「SKOOL KILL」での奇行とかにぶっ飛び笑ったりした。高円寺に住む民として銀杏BOYSは聞いておきたいよね、たぶん。

今月のハロプロ情報。新グループのBEYOOOOONDS(ビヨーンズと言います)がもうすぐメジャーデビューする。そのトリプルA面シングルのMVが軒並み素晴らしく、激烈にハロプロ色をしていて最高なのだ*4。とりわけ見ていただきたいのは松岡茉優も唐突にTwitterで宣伝していた「ニッポンノD・N・A!」という曲。けっこう人数が多いグループだけどみんなが輝くMVに仕上がっている。冒頭のラップ(平井美葉さん)からどうしようもなく心掴まれてしまうんだよ。寸劇×歌をコンセプトにした変わったグループで彼女たちの楽曲には基本的に劇が組み込まれているのだけど、それって全然テレビサイズに対応できなさそうで、そういうのにも惹かれてしまうんだよなぁ(笑)。新時代の到来を信じたい。


BEYOOOOONDS『ニッポンノD・N・A!』(BEYOOOOONDS [The Japanese D・N・A!])(Promotion Edit)


【ハロ!ステ#300】Hello! Project 2019 SUMMER!BEYOOOOONDS、ハロー!キッチン、Juice=Juice特等席、こぶしファクトリーお知らせ MC:竹内朱莉&中西香菜

ずっと見たかったドラマ『デート〜恋とはどんなものかしら〜』をレンタルしてビンジウォッチした。今年ベストドラマに確定。4年も前のドラマだけど。長谷川博己のまくしたてる感じが生理的に大好きで、それは『鈴木先生』でも感じてたことなんだけど今回もよかったな〜。そしてそれ以上に杏ちゃんの声、立ち居振る舞い、奇天烈なアヒル口が最高だった。古沢脚本のドラマは無条件に楽しめる。今期のドラマは『だから私は推しました』くらいしかたぶん見ないと思う*5。ーー7月15日。そんなことあるのか、という話だが間違えてチケットを取ってしまい、平田オリザ作・演出の『その森の奥』を観劇してきた。こまばアゴラ劇場*6。ただ、大好物のディスコミュニケーションものの作品だったので普通によかった。日本人と韓国人とフランス人が10人以上出てきて、字幕とかもあってとにかく情報量が半端ない演劇。猿の研究に関わる人たちが会話のなかで人間の本質に迫っていくさまはカタルシスがすごかった。カオスな会話劇のなか、がんばっても受け取れるのはごくわずかだから、情報を取捨選択する必要性を感じたものだ。必要なものを必要なだけ摂取して、想像力を働かして生きていきましょう。

映画が耳元でささやいた

f:id:bsk00kw20-kohei:20190804115206j:image月の中ごろに『オルエットの方へ』というフランス映画を観た。これは飯田橋にある「アンスティチュ・フランセ東京」っていうフランス文化センターで行われた「バカンス映画特集」で観たやつ。他にもみたいものがいっぱいあったんだけど「バカンス映画特集やて!?」といきり立った頃にはもう特集期間は終盤で……。にしてもこの映画、最高だったな。先月から個人的に波がきてるフランス映画ブームに拍車をかける大傑作。社会人女性3人がただバカンスに出かけーーでもそのバカンスが3、4日とかじゃなく2週間強くらいでーー途中でその中のひとりを狙う男が介入してきたりして、基本的には彼女たちが遊んでる姿をただ眺めているだけっていう、それなのにめちゃくちゃ心を動かされてしまうバケモン映画だった。ヌーヴェルヴァーグを先導したうちのひとり、ジャック・ロジエ監督、覚えた。レンタル屋に置いてないからハマりきれないのが悲しみだよな〜。いやはやバカンス映画は至高。

今月も15本くらい映画を観ておきながら、先月の終わりに観た『ホットギミック』、というか山戸結希のことで頭がいっぱいだった。ユリイカの特集号は買ったものの内容量が多すぎてまだ読みきれてない。でも一番はじめの監督インタビューがかなりおもしろいことを語っていた気がする。山戸監督の映画はほんとうに届けたい人に届くようなシステムが形成されているのかという疑問がいつも浮かぶわけだけど、これを読んでやっぱりちゃんと考えてるんだなぁと感心した。山戸監督を先頭バッターとして、最近、「映画じゃなきゃダメなんだなこの人」と感じる監督をよく観る。そのひとりが石井達也という人で、テアトル新宿で観た『万歳!ここは愛の道』という映画にはすごいものが映っていてびっくり仰天した。フェイクドキュメンタリー的な物語の主人公は石井達也その人。2年付き合ってきた彼女がある日突然その2年分の記憶をなくし、石井監督はその様子をカメラに収めようとする。おもしろいのが、自身も映画監督であり石井達也の彼女である福田芽衣が「記憶を失った」のはまぎれもない事実だということだ。いや、そこすらも僕には怪しく見えたのだけど。どちらにしろ、今にも死んでしまいそうな2人が映画を用いることでそのなかで生き続け、そうして映画世界が現実に侵食していく。なかなか言葉に表しづらいな…。つまるところ、映画はいろんなものを救えるんだ!という希望が詰まった作品だと感じた。

7月、これは傑作だ、と思った新作映画は『トイストーリー4』と『よこがお』。トイストーリーはターミネーター4(字面似てるから引き合いに出してみた)みたいな変な方向性じゃなくてちゃんとトイストーリーでやる意義を感じる物語でよかった。深田晃司監督の『よこがお』は爆発的におもしろい。こんなにおもしろい映画、ほかにないだろとすら思った。どうあがいても、観ながら足元が沼に引きずり込まれてしまう。ずんずんずんずん、ゆるりゆるりと。前作『海を駆ける』を飛ばしてしまってたから久しぶりの感覚で、もはや爽快に沼に突っ込んでしまった。圧倒的に悪夢ではあれど、主演・筒井真理子のよこがおが美しいからかすべてが温かく肯定されている気がする。でも、気がするだけなんだよな。もう、頭の毛の1本まで見えなくなるほんのちょっと手前まできている。ーーそういえば月初めに今イチオシの劇団・贅沢貧乏の過去作上映があり、『フィクション・シティー』という作品を観た。

sheishere.jpこの世界はすべてフィクションでできている、という語りは意外と自分にとって新鮮で、そっか、じゃあ抜け出すこともできるんだなと感心してしまった。〜しなければいけない、〜であるべき、という変な設定がはびこる世界に私たちは生きているわけだけど、そんなものに従う必要は全くないのだ。フィクションはぶっ壊していい。フィクションに縛られて潰れてしまうのはごめんだ。しかし難しいのは、あるフィクションから抜け出しても、実はまださらに大きなフィクションに包まれていること。抗うことに意味はあるのか。9月に上演される新作も楽しみ。ーー8月の話題になってしまうけど今日観たので新鮮なうちに。8月3日、五反田団の『偉大なる生活の冒険』を観劇した。はつ五反田団。前田司郎が撮った『ジ、エクストリーム、スキヤキ』っていう映画が大好きだからいつか演劇を観たいと高校生くらいの時からずっと思っていて、やっと観れた。あるアパートの一室で繰り広げられるとても小さなお話だったけど、絶望と希望が詰まっていておもしろかったな〜。劇場がいやにむし暑く、それも含めたむさ苦しい夏の演劇って感じでこの時期にぴったりの。前田さんの演技が自然で柔らかく*7、マヨネーズを口元につけた内田慈さんがとんでもな愛らしさだった。妹役の新井郁さんも玉田さんも絶妙だったし、その彼女役の人も少ない時間で笑いをかっさらっていた。壁の奥には何も見えないけれど、じっと何かを見ているうちはまだ生きられるのかもしれないな。

■ほか、よかったコンテンツ・テキスト*8

shonenjumpplus.com

note.mu

www.cnn.co.jp

文芸オタクの私が教える バズる文章教室

文芸オタクの私が教える バズる文章教室

 

*1:どういうお笑い?

*2:M-1でさえピンときてなかったんだけど。

*3:今回は時系列バラバラです。

*4:アンジュルム改名時やこぶしファクトリーデビュー時もそうだったけど、ハロプロはデビューシングルから最高潮に熱が高く、デビューとは思えないクオリティに驚く。

*5:『偽装不倫』の杏ちゃんの感じは普通すぎてもったいないよな〜…。

*6:菱田屋を通り過ぎるという耐えられない屈辱……

*7:才能の塊かよ。

*8:「いつか怪物になるわたしへ」というnoteがとんでもない名文だったのに消した?消された?みたいです。なぜ……。200103追記https://note.com/okaki_tabetai/n/n347af9c82a47