縞馬は青い

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映画とか、好きなもの

カルチャーをむさぼり食らう(2019年5月号)

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薄給サラリーマンにとってゴールデンウィークというのは本当に長い。時間がありあまっちゃうとかではなく。どうしようもなく浪費癖があるので、湯水のようにお金が消えていくのだ。映画をみて演劇をみて、ときどき酒をたらふく飲んで、おいしいごはんを求め、本を読みにカフェへ行く。GW明けにもろもろの引き落としもあったらしく、気づいたときにはびっくり困窮者になっていた。(本業もライターですが)副業のライター業でちまちまお小遣いを稼ぎながら、ちょっとずつ節約するという生活スタンスを求められているらしい。それに関してはそんなに苦ではないけど、視界が狭くなってしまいそうで心配。そんな5月。

 

5月1、2日は二宮健監督(『チワワちゃん』『疑惑とダンス』など)のコンプリートワークスと題した特集上映に2日連続で行っていた。LOFT 9 SHIBUYA にて。くだんの監督についてはそれこそ『チワワちゃん』を観る前までは認知すらしていなかったのだけど、その後、3月に公開された『疑惑とダンス』を観てからというものたちまち最注目監督になっていた。大阪芸大山下敦弘、熊切和嘉、石井裕也)の血を引くような絶妙なゆるさに加え、俳優との多大なる信頼関係によって生まれる奇跡的な演技=ショットがクセになる映画をつくる監督だ。2日で短編含めて10本くらい観ることになり、スタイリッシュな映像を志向しながらも本編の内容にはだいたい人間の醜い部分が映っていること、そしてそれを笑いに昇華しようとする試みに好感を持った。『セシルボーイズ』『デリバリーお姉さん』(『〜NEO』もよかったけどオリジナルもいい味出てた)がまぁまぁおもしろくて、あとは『MATSUMOTO TRIBE』の松本穂香が最高だった。制作費いっぱいあるほうがいい映画撮れる監督さんだと思うので、今後に期待っす。

5月3日。ほりぶんの舞台『飛鳥山』をみる。ナカゴーの作・演出も手がける鎌田順也さんのもうひとつのワーキングプレイス。ほりぶんは初めてみた。基本的にはナカゴーと同じで、血管破裂すんじゃねぇかってほど大げさな演技をする役者たちと、そのことも含めて途切れない「笑い」を生み出していく作劇スタイルが特徴。演者は女性しかいないというのも、その特異さを強調していると思う。第7回公演となる今回ははじめて男性出演者(黒田大輔)がひとり加わったのことで、それまでのを見てないからなんとも言えないけど。とにもかくにもおもしろい。ソフトクリームが懐中電灯へと変化してさまざまに人を往来していく様に悲哀を感じたり、いきなりガチもんのサンバダンサーが2人も現れて唖然としたり、圧倒された。あの規模の演劇でこれだけ心を動かされるのは間違いなくコスパいいと思う。

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5月5日。東京国際映画祭ですでに観ていた『あの日々の話』(玉田真也監督)を再見。前にみたときはめっちゃ笑ったんだけど、2回みても特に新たな発見があるタイプの映画ではないと思うので、細部が気になりだしてしまった。それにしても、マウントの取り合いで場の空気を転がしていく玉田さんのお話と役者たちの洗練された演技は何度見ても楽しい。似たタイプの映画である『疑惑とダンス』のほうがたぶん客入ってたから、(劇作家である玉田さんがあえて挑戦する)映画の独自性が出てくればもっとおもしろくなるんだと思う。なんて偉そうに言っちゃって。

5月6日。J:COMさまさま。映画チャンネルで録画していた『友だちのうちはどこ?』(アッバス・キアロスタミ)を観て、傑作すぎて打ちふるえたのだ。友だちが忘れたノートを少年が友だちのうちに届けようとするだけの映画なのに、なんでこんなおもしろいんだよ。あの一瞬だけ窓は開け放たれていて、僕たちはどこへだって出掛けることができたのかもしれないな。何度だってみたい映画がまたひとつ増えた。

友だちのうちはどこ?ニューマスター版 [DVD]

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5月7日。ポレポレで『沈没家族』をみる。「沈没ハウス」という稀有な家の中で育った加納土くんが、大学の卒業制作でこの映画を撮るまで。その過程を描写したドキュメンタリー。自分の過去をさらけ出すというのはとても度胸のいることだと思うし、たぶん賛否両論迫ってきた(この映画を批判することは加納土くんを批判することと同じになる)だろうけど、当の本人が案外自信満々でいい。それでも私とあなたの関係性(の名前)について考えるときに、相手側にその判断を委ねてしまうのがなんとも歯がゆいな。彼らの自信のなさと、それでも強固な事実関係に揺さぶられて、それはそのまま家族というものを表していると思った。手放しには肯定できない、実験的な新しい家族についての映画。複雑なまま、思考し続けることが大事なのだと思う。あとゴールデンウィークは『若葉のころ』『藍色夏恋』『愛情萬歳』と台湾映画をいっぱい観たけどぜんぶイマイチだったな…。ツァイ・ミンリャン『愛情萬歳』はもう一度見たいかも。半分くらいまでほとんどセリフないのがめっちゃいい。

飛ばして5月13日。試写会で白石和彌監督の新作『凪待ち』をみた。すんごいおもしろい。月間ベスト級の映画ではあった。

香取くんの多面的表情ももちろんいいのだけど、恒松祐里がハンパないのよ。どれだけ彼女のよさを連ねてもその演技の前には無為と化してしまうだろうからひとつだけ挙げると、スポーン!と心に突き刺さる透き通った声が最高。今年これから5本も出演作が公開されるらしい。そして5本ともおもしろそうで目をつけてた映画。いやぁたのしみな女優さん。


映画『凪待ち』予告(30秒)

5月14日。先月ハマり散らかしていたテラスハウスの新シーズンがはじまった。舞台は再び東京へ。軽井沢ののんびり感とノスタルジー、自然風景が大好きだったから“街”を映すことが少ない東京にはわくわく感が減少するものの、前の東京編にもなかった「スピード感」という特徴が早速現れてきて楽しい。この家には遠慮を知らずずんずん壁を破る2人の男女と知らぬ間に相手の心に入り込むのがうまい2人の男女と、落ち着いた2人の男女が住んでいて、そのことが物事を加速させていると感じる。そうは言ってもある程度のところで一旦停止しそうですが。テラスハウスについて書く機会が与えられそうなので詳しくはそこで。

5月19日。『僕たちは希望という名の列車に乗った』という映画に打ちのめされた。冷戦下の東ドイツで教師と国に反抗した学生たちの話。政治性を多分に含みながらも青春ドラマとしてのできがとてもよくて、不勉強な自分でも心を掴まれてしまった。男2、女1+男1の主要4人の役者がとにかく巧い。自分を見つめるために「境界を超える」。逃げのない映画。悪いとこが見当たらないわ。今さらですが、『腐女子、うっかりゲイに告る』がとてもいいです。ロロの三浦さんが脚本を手がけるドラマ。セリフ一つひとつに配慮と愛と優しさがある。『カランコエの花』のつづきみたいな物語がテレビドラマとして放送されている尊さを称えないといけない。切実に、全人類に見てほしいです。

5月23日。『ウィーアーリトルゾンビーズ』を試写で。この映画に興味をもったなら、まずは監督の前作『そうして私たちはプールに金魚を、』をご覧ください(以下公式)。20数分のさくっと短編です。おもしろすぎてゲロ吐くんじゃないかな。最新作はその短編を長編映画にしましたって感じで正直微妙だ。セリフも短編のほうがよっぽど「生きてる」。「ゲーム映画」としてみると近作の『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』の数百倍好きだけど。vimeo.com

Juice=Juiceとモー娘の新譜を続けざまに聞いて、よすぎて耳が溶けた。とりわけ『「ひとりで生きられそう」ってそれってねえ、褒めているの?』というヤバいタイトルのJuice=Juice新譜にやられた。ジュースもつばきもモーニングもアンジュもちょっとずつ気になってるからソロコンに行って存分に楽しむ自信はないのだよなぁ。兵庫においてきたハロー好きの親友が東京に来てくれるのを待つか。


Juice=Juice『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』(Promotion Edit)


モーニング娘。'19『青春Night』(Morning Musume。'19 [The Youthful Night])(Promotion Edit)

『映画術 その演出はなぜ心をつかむのか』という本を図書館で借りて読んでいて、視界がひらけすぎて楽しい。映画監督の塩田明彦氏が、映画にある「動線」や「顔」「視線と表情」といった演出にスポットを当て、そういった「ストーリーの裏に存在する映画的技法によって生み出される映画の“豊かさ”」を説いていく本。こんな本に出会うのをずっと待ち望んでいたのだよ。映画ってのはやっぱりめちゃくちゃおもしろくて奥が深く、より多層的な視座を手に入れたような気持ちになってうれしい。この本をもとにして塩田監督の最新作『さよならくちびる』(これについては6月のカルチャー日記に持ち越しますが、傑作です!!)の評を書きました。塩田先生の授業を受けたあとにレポート書きましたって感じでおもしろかった。

 

お金がないから本を読む月間にしようと意気込んだものの読んだのは『桐島、部活やめるってよ』『愛がなんだ』『映画術〜』『夫のちんぽが入らない』の4冊だけ。3年前くらいからオールタイムベストに掲げている『桐島〜』の小説版をまだ読んでなかったことに今さら気づき驚いたけど、やっぱりおもしろかった。スクールカースト上位の人は自分を上だと誇示しない!と友だちは言い張っていたけど、そんなの人それぞれだし、菊池みたいなやつは絶対いると思う。ていうか朝井リョウが菊池なのか。風助と前田くんと菊池にちょうど3分の1ずつくらい共感した。映画の感想もそろそろちゃんと書いてみたいな。

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

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夫のちんぽが入らない (講談社文庫)

夫のちんぽが入らない (講談社文庫)

 
愛がなんだ (角川文庫)

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