縞馬は青い

縞馬は青い

映画とかドラマとか、好きなもの

風に乗って、どこまでも/カネコアヤノ『恋文』

 

好きな人へ手紙を書いた。「あなたのことが好きです。」というストレートなラブレター。

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土曜日。

朝起きて、3度ほど郵便受けを開け閉めする。ない。今日は夕方から大阪で姉の結婚式があるから、昼前には家を出なくちゃならない。帰ってくるのは月曜日の朝、夜行バスで10時間かけて。つまるところ、月曜日の朝までは郵便受けを確認できないことになる。はじめて結婚式に行くし、姉の結婚式だし、今ごろちょっと緊張してきたけれど、あんまりそれどころではないのだ。ただのんびりはしていられず、急いで身支度して家を出た。中央線に乗っていると、今から英語のスピーチコンテストに行くのか、ずっと母親に向かってときどき詰まりながら英語を話している女の子がいた。ぜんぜん聞き取れなかったけど、とても愛らしかった。新幹線で大阪へ向かう。途中、名古屋駅手前あたりで運動会をしている小学校が見えた。もうそんな季節か。しかしめちゃくちゃ暑いな今日は。熱中症にならないように、でも好きな子にとびきりいいところを見せつけてやれよ。


金曜日。

ビールを2Lくらい飲む。炭酸が苦手だからいつもはウイスキーでキメるのだけど、なんだか今日はビールが飲みたい日だ。まぁ普通に暑いからね。外で2杯飲んでから、家に帰ってきて郵便受けを開ける。冷静に無いことを確認しつつも、今日はありそうだったからちょっと落胆。無性に銭湯へ行きたくなり、小杉湯へ行く。ずっと行きたかったけど、1年住んでて初めて来た。しかし人がぱんぱんで驚いてしまった。こんなに人気なんかい。靴箱がギリ3つくらい空いていたのでなんとか入りこみ、ほろ酔いの身体を熱湯と水風呂で交互にいじめる。上がったときには誰かと身体が入れ替わったみたいにめちゃくちゃスッキリしていた。銭湯の中で、クドカンっぽい人をずっと横目で見てた。たぶんというか間違いなくクドカンっぽかっただけ。帰りに金麦500m缶とアサヒスーパードライ350m缶を買い、『愛がなんだ』をマネたくなって飲みながら家路につく。とんだ贅沢だぜ。明日はお姉ちゃんの結婚式だし、今日は早めに寝よう。


木曜日。

毎日してるLINEが昨日途切れたものの、今日の20時過ぎに突然返ってきた。取り留めのない、今までのLINEの続き。もしかしたら昨日かおとといの夜に手紙を読んで、今日手紙を出したりしたのだろうか。いや、わかんねぇぞ。前に手紙出したときはその2週間後に「届きました」とか言ってたから、ぜんぜん届いてないか、届いてても読んでないのかもしれない。でもここで「届いた?」と聞いてしまうのはめちゃくちゃ野暮。ラブレターを書いた意味がなくなる。手紙の返事を待つことしか、今の僕にはできないのだ。仕事後に試写会へ行ったりレンタルしてた『カナリア』を見ていたら、だんだん夜が更けていく。今日はお酒を飲まずにやり過ごせた。


水曜日。

昨日めちゃくちゃ飲んだから、少し頭が重い。仕事はそんなに忙しくないからいいのだけど、それだとかえっていろいろ考えてしまう。考えて考えて、いや考えても無駄だよとつっこんで、時間が経つとまた考えている。頭がクラクラする。塩田明彦監督の『映画術  その演出はなぜ心をつかむのか』とこだまさんの『夫のちんぽが入らない』を読みふけりながら、時間が過ぎるのをただただ待っている感じ。どっちもおもしろい本だから、時間はしっかり忘れられる。ふと考えた。都市生活者となってからめくるめくスピード感に圧倒されながら、今、その時流に抗うように赤いポストへ一通の手紙を吸い込ませている。その時から時間が止まったかに思えてとてつもなく苦しいのだけど、体はとても軽いんだ。これは、今ならなんでもできる!とかともちょっと違くて、文字どうり、軽すぎて浮遊してる感じ。いったいいつまで飛び続ければいいのだろう?もう届いてるよね?


火曜日。

通常だと投函日の翌日に届くということを調べて知っていたから、人生最大級にそわそわしていた。仕事終わり、ひとりで家にいるのはなんだか耐えられなかったので、たまに行くバーでお話を聞いてもらう。今どき手紙で告白するなんて珍しいからだろう、みんな興味を持って同情してくれた。ああつらい。でも少しだけ楽しみ。大学時代から何度か手紙のやりとりをしたことがあるものの、3年間友達をやってきた人からラブレターの返事がくることを想像したら、ちょっとだけわくわくする。君はこの3年間、僕のことをどう思っていたんだろう。正直どっちでもおもしろいのよ。返事が来ない未来だけは絶対イヤなだけで。


月曜日。

明日、武蔵小金井で仕事があるからと言って、そこに近い僕の家に友だちが泊まりにきた。すごいタイミングで来てしまったね君ってやつは。ありがとう。家への入場料として、この土日に起こったことを全部聞いてもらおう。君は熱いヤツだから、たぶん親身になって聞いてくれるんだろう。ありがとう。


日曜日。

昨日、強い決心があったわけではないのだけどもう我慢ができない心境だったから、タイミングがよければ告白しようと思っていた。でも結局できなかったんだ。めっちゃダセぇ。共通の知り合いと3人で飲んだ帰り、何度もふたりになる機会を作ろうかと逡巡し、無理だあああとなった。昨日は昼からおいしいとんかつ食べて、パンケーキ食べて、街を歩いた。それはふたりで。タイミングはあったよね、考えてみれば。でもむずいでしょ、平然と3年間めっちゃ仲良くしていた人に、何の前触れもなく告白するなんて。めっちゃ仲は良かったけど、どこまでも友だちでいたんだから。いや、何言ってんだよむずくないでしょ。家に帰ってそんなことを布団のなかで考えながら、そのときにはもう決めていた。明日手紙を書こうと。手紙なら、いろんなことを順を追って伝えることができるんじゃないかなって。そういうわけで日曜日の夜に手紙を書き終えた僕はセブイレで82円切手とスティックのりを買い、くっつけて貼りつけて、ポストへ入れた。自分にもこういうことができるんだなってちょっと感心してしまってる。好き。かわいい。似合ってるよ。そういったことを恥ずかしがらずに面と向かって言いたくて、僕はあの子に告白した。答えがどんなでも、その望みは叶う気がする。

秋の落ち葉を踏んで
冬の雪解けの道
その時には目を見て
愛してると