縞馬は青い

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映画とかドラマとか、好きなもの

カルチャーをむさぼり食らう(2019年3月号)

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ネイチャー豊かな世界(兵庫県の田舎)からカルチャーがそこかしこに息づく東京へきて1年が経った。そのタイミングで月単位のカルチャー日記的なものを書きはじめようと思いました。はじめようと思う理由はけっこうあるのだけど、ひとつには、文学や音楽についてのまとまった感想を書くのがすごく苦手で、でも放出できない想いが頭を渦巻いてしんどくて、短文でもいいから記しておきたいと思ったこと。書き始めれば意識的にもっと多種多様なカルチャーを摂取できるのではないかという希望なんかもあって。東京でカルチャーをあらかた貪り尽くしたら、ネイチャーの世界に帰ろうと思うのだけど先は長いかな。ブロガー・ヒコさんの「最近のこと」を読んで育ってきたので、「橋本愛のカルチャー日記。(©︎POPEYE)」の書き方ではなくぶつ切りみたいな感じでトントンいきます。(3月は休日がめっちゃ多かったのでコンテンツ含有量の多さは自負しています)

 

3月1日。映画好きにとっては特別な「映画の日」。基本的には気づかないまま過ぎ去ることが多いけどこの日は『岬の兄妹』を観ようと意気込んでいた。なんでもポン・ジュノに絶賛された映画(助監督も務めたことがあるみたい)ということで期待値は高かったのだけど、余裕でおもしろかった。描写やストーリーはそれこそポンジュノ作品のような韓国映画的でそれなりに過激なので、沢山の人に見てもらって否定派も含めた賛否両論を生む必要がある映画だと感じる。そうした質感でいうと『万引き家族』にとても近いかもしれない。(おもしろかった映画に関しては個別エントリーで詳述しています。)

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3月2日。待ちに待った『オードリーのオールナイトニッポン』の武道館公演へ。リトルトゥースと言えるほどの自信はないのだけれけど、この公演へ向けた番組本の制作に少し携わったりしていてその過程ですごく大好きになっていたので、3時間半くらいに及ぶ公演もめちゃくちゃ楽しかった。ラジオゾーンはオープニングから若林のフリートーク、春日のフリートークへと一定の空気感を纏いながらスムーズに進み、ショーパブゾーンを経て満を持して漫才へ。M-1で有名になりラジオがはじまって10年。超越したかっこよさに痺れまくった。1万2千人が内輪受けで爆笑に包まれるライブなんて最高すぎる。愛しかなかった。

オードリーとオールナイトニッポン 最高にトゥースな武道館編 (扶桑社ムック)

オードリーとオールナイトニッポン 最高にトゥースな武道館編 (扶桑社ムック)

 

 

3月3日。贅沢貧乏という劇団*1の『わかろうとはおもっているけど』という公演へ。ディスコミュニケーションに苦しみながらそれでも何とかわかろうと努力する人たちの物語。笑ったとか泣いたとかではないのだけど、ずっと心が豊かで頭もぐるぐる考えさせられていて、とても楽しかった。もしかしたら今まで見た演劇で一番おもしろかったかも。ロロの島田桃子さんも他の4人の演者もみんな愛らしくて愛らしくて。これから追いかけたい劇団だ。

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『翔んで埼玉』はとても退屈だった。コントだけで押し切ろうとする『銀魂』みたいな映画は好きではないけどこの映画はなんとなくいける気がしてた。でもコントにしては案の定長すぎて…。続けざまにユーロスペースで『疑惑とダンス』を。最高。この週末はジェットコースターのような感情の乱高下だ。途中微妙な映画を挟んでしまったもののたぶん人生ベスト級に豊かなカルチャーウィークエンドだったと思う。とにかく密室会話劇というのが好きで好きで仕方ない。誰かおすすめを教えてほしいものですが、先にこちらからおすすめしておくと今月公開『あの日々の話』*2は最高です。

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飛んで3月9日。イーストウッド『運び屋』を観た。人生失敗してしまったおじいちゃんに人生訓を教えられる映画。最近映画館で泣くことはほとんどないのだけれど、これはけっこうちゃんと泣いてしまった。近くにいる人を大事にしなさい、というありふれた教えが主題にあるのだけど、90歳近いイーストウッドの切実な願いとして表出されるからこそ強く胸を打った。


3月10日。『スパイダーマン:スパイダーバース』の映像の革新性には度肝を抜いた。年々、アメコミ映画にワクワクできないようにはなっているのだけど、これはもう視覚的な刺激が常軌を逸してる。太陽を見た後に他のところを見たら残像が残るじゃないですか。あんな感じで映画館を出た後も数分間、アニメーションの残像が目の前を飛び交っていた。夜に『疑惑とダンス』のおかわり。5~60分でサクッと楽しくて1000円ぐらいで観れるこういう作品が量産されると世界は平和になると思う。アマゾンプライムでドラマ『鈴木先生』と劇場版をビンジウォッチ。久しぶりに夢中になってドラマを見ていた。『3年A組』とかは途中で見るのやめたからわからないけど、やはり説教ではなく「対話」で建設される教師と生徒の関係は美しいと言うほかない。古沢良太脚本だと『デート』がまだ見れていないので早急にどうにかしてみたい。


3月14日。有給をとっていたので高円寺で古着屋巡りをした。1年住んでるけどまだ全然開拓できていなかったんだなと思い知らされてびっくり。パル商店街を一本、中に入ったところにある「CORD」という最高のお店を見つけた。

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「お久しぶりです」「はじめてですよ…?」「あ、すみません。常連さんに似てて…」という店員さんとのいびつな会話から最後にはいい感じの仲になれたのでうれしかった。服で一番重要視している“手ざわり”がこの店は全部よくて「見つけてしまったー!」とこれまたうれしさでいっぱいだった。昼に試写でティモシー・シャラメ主演の『ビューティフル・ボーイ』を観る。ドラッグに溺れる青年を描いた暗く悲しい物語だけど、とにかくティモシー・シャラメが美しい。日本人の映画好きを増やすには彼の活躍が不可欠なので、どんどん公開されてほしい。大地に落とす大粒の涙すら輝いている。


3月16日。Tverで『平成物語』を見ていた。岡山天音松本穂香が出ていた昨年のやつ。ふたりとも今大好きな役者なのだけど、特に松本さんはもうどタイプすぎてやばい。


3月17日。ナカゴー特別劇場『駿足』を観劇。相変わらず嘘みたいに笑えるけど、前2作に比べると中盤少し中だるみしていて、締め方もクールじゃなかったように思う。ただ、足の速い人がたくさん出てきて小さい劇場を躍動する姿は非常にナカゴー的で楽しかった。下高井戸シネマで開催されていた「濱口竜介監督特集」で『PASSION』を観る。『ハッピーアワー』の次に好きな濱口映画で、2度目だけど駆け込んだ。密室会話劇となる中盤の「本音ゲーム」はもとより、あらゆる場面が映像の豊かさで満ちていて飽きない。濱口作品のミューズ的な存在である河井青葉さんもこの映画の彼女が一番素敵だと思う。

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3月18日。有給をとって『バイス』と『アメリカン・アニマルズ』を試写で鑑賞。子ブッシュ時代の副大統領・チェイニーを描いた『バイス』(4/5公開)は、100%社会風刺な映画だけどところどころユーモアがあっておもしろい。ブッシュがバカだったなんて知らないバカだったけどこの映画はそんな僕に親切で辛辣だった。


犯罪映画を参考に作戦を練った大学生、まさかの実話/映画『アメリカン・アニマルズ』予告編

予告編を見ると『ベイビー・ドライバー』の再来かと思わせるようなスタイリッシュな見た目をした『アメリカン・アニマルズ』(5/17公開)は、観れば誰もが“思ったよりスタイリッシュじゃない”と驚くと思う。このギャップがどう転ぶのか、劇場で確認してほしい。同じファントムフィルム配給の『ビューティフル・ボーイ』とはよく似ている部分がある。『グッドワイフ』の最終話を録画で見て、完璧なドラマだなと打ち震えた。終盤に向けての女性たちの連帯がなんとも美しい。

 

3月19日。『青春ゾンビ』の「最近のこと」が1年ぶりくらいに更新された。

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彼の文章がこの世で一番おもしろいと思っているほどのファンなので、『&Premium』の「脚本家が台詞に込めるもの。」という特集記事も楽しく読んだし、「最近のこと」もいちいち感激しながら読みきった。


3月21日。よく晴れた気持ちのいい祝日。昼に友だちと映画を観て、夜にまた違う友だちと映画を観た。故郷から遠く離れた地で、休日にバスに乗って友だちの住んでる場所に近い映画館に行って映画を観るなんて、これ以上に楽しいことはありますでしょうか。みた『君は月夜に光り輝く』はなんとも言えない映画だったけど*3、友だちと観たことでいい思い出として記憶に残った。夜に観たのは『キャプテン・マーベル』。今月公開『アベンジャーズ』を楽しむには必須だというのでしょうがねぇなぁと思いながら観たけどなかなか楽しめた。あらゆる抑圧から解放されるかっちょいい女性を描いた映画でテーマが現代的。次のアベンジャーズもしっかり楽しめそう。


3月23日。アップリンク吉祥寺で『放課後ソーダ日和』を観た。枝優花監督『少女邂逅』のスピンオフとして制作されたもとはYouTubeのドラマが、映画館で公開されるというのはなかなかすごいのではないだろうか。YouTube用だったとは言ってもクオリティは担保されているので、映画館で観ても違和感のない物語の強度を味わった。ほんとうに好きな作品。リアルサウンド映画部で毎週レビューを書いていた『イノセンス』が最終話を迎えた。ドラマの形式はすごく二番煎じ感があったけど、王道だからこそ光る物語のわかりやすさとメッセージ性があったと思う。若い人たちが活躍する弁護士ものというのは新鮮で、とても楽しく毎週原稿を書くことができました。

realsound.jp


3月24日は原美術館で開催されていた『ソフィ カル─限局性激痛』へ。人生最悪な1日の記憶を人の不幸話で相殺させていくという痛々しい展示だったけど、ソフィ・カルという女性による写真と文章を使った感情の放出方法と、弱くて強い生き様に感銘を受けた。『世界ウルルン滞在記』の松本穂香に惚れる。世界で一番寒い場所へ旅に出ていたのだけど、雪を被った彼女のまつ毛になれないものかと必死に考えた。無理だった。テレビ東京の深夜ドラマ『デザイナー 渋井直人の休日』が半端なくおもしろい。最初は周りにいるデザイナーもこんな感じの生活をしてるのかなとか想像を膨らませながら見ていたけど、だんだんこれは自分の物語だと気づきはじめた。どこまでも通じ合わない心と渋井直人の大きな愛。4月に突入してもまだ終わる気配がないのだけど、一生やってくれるってこと?


3月26日。再び「濱口竜介監督特集」で『THE DEPTHS』を鑑賞。これまた最高におもしろい。『PASSION』や『ハッピーアワー』とは映像手法やストーリーがちょっと違うように感じたけど、やっぱりどの場面もバチバチに決まりまくっていてかっこいい。『恐怖分子』や『ヤンヤン 夏の思い出』といったエドワード・ヤンの諸作品を感じたりした。

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3月28日。『あいのりAsianJourney 』のSeason2がついに終わってしまった。最初から最後まででっぱりんのためのシーズンという感じだったけど、結果的に彼女によって見出されることになるトムやAI、じゅんきといった男性陣がみんな魅力的で、ただかき回していただけではないということがわかる。「本音で話したい」と怒り狂う彼女は濱口映画にでも出てきそうなある種フィクショナルな存在だけれど、彼女がいなければここまでおもしろくなってなかっただろうな。


3月29日。ほんとうにたまたま有給を取っていて(有給消化に奔走した月)、坂元裕二著『初恋と不倫』を用いた朗読劇『詠む読む』を観に行くことができた。

往復書簡 初恋と不倫

往復書簡 初恋と不倫

 

観たのは満島ひかりさんとのんさんの回。大好きな女優の声であの物語を聞くことができるなんて、どんだけ幸せなんだ。靴箱を侵犯する手紙に始まってショッピンモール屋上での手繋ぎ、海を渡る描写など、境界を「飛び越えていく」ことが主題にある作品だと思うので、女性と女性によって再構成された今回の「female/female」という形式も違和感なく、むしろ当然の展開のように思えた。朗読劇だからこそ味わえる彼女たちの言葉の“間”の裁量も完璧でドキドキしました。終わったあと少しトークがあったのだけど、満島さんものんさんも挙動がめっちゃかわいかった。家に帰宅したあとすぐ文通をしている友だちに手紙を書いた。充実。

 

3月30日。余韻に浸る間も無く、この日は『ひなフェス』のチケットを取っていたので幕張メッセへ。ダブルユー鞘師里保が復活すると聞いて衝動的に申し込んだ公演。ハロプロは去年の7月くらいにファンクラブに申し込んで何度かライブに行ってるのだけど、いつも思ったより楽しめていない気がしていて(というよりYouTubeやニコ動で動画を漁ってるほうが楽しくて)今回も心配だったのだけど、油断してたわ。どちゃくそに心持ってかれた。今もまだ魂抜けてるくらいの感覚だ。モーニング娘といえば姉と一緒に見てたテレ東の番組の辻ちゃん加護ちゃん、あるいはミニモニだったし、大学生でハマったときには絶対的なエースとして鞘師里保がいたので、僕にとってのモーニング娘のすべてがあの場所にあったような感じ。加えて他のハロプログループもレジェンドたちの輝きに照らされていつも以上によかったのではないだろうかと思ってる。つばきファクトリー小野瑞歩さんと雨ノ森川海の岡村美波さんが特にかっこよかった。あれ以来、本当に魂が抜けたような感覚…。


3月31日。ユーロスペースで昨年『きみの鳥はうたえる』で注目を集めた三宅唱監督の最新作『ワイルドツアー』を鑑賞。愛らしい青春恋愛映画。60分台のサクッと映画がちょうどよく心に沁みた。

bsk00kw20-kohei.hatenablog.com

 

結局、文学も音楽もあまり摂取できていない。AppleMusicからSportfyに移行したのだけど、絶妙に使いこなせてないんだよな。ミツメの新譜は最高ですね。

 

以下、Webで読めるおもしろかった文章。

ecrito.fever.jp

p-dress.jp

www.kansou-blog.jp

drifter-2181.hateblo.jp

 
今月のベスト緑茶割りは「和楽多酒場 新宿店」のやつ。ただ緑茶割り以外の料理とかは極めて普通です。

 

*1:主催は山田由梨さん。

*2:玉田企画による同名演劇の映画化。監督も玉田真也。

*3:『君の膵臓をたべたい』『響』など月川翔監督とは相性がよかったのでなおさら何とも言えなかった。