縞馬は青い

縞馬は青い

映画とか、好きなもの

ポン・ジュノ「オクジャ/okja」

f:id:bsk00kw20-kohei:20170630230959j:plain

ポン・ジュノ大監督のNetflix配信限定映画。

今作『オクジャ/okja』は、青春友情映画から始まり、スパイアクション、クライムアクションを経て家族映画へと向かう、全編にコメディとラブストーリーが充満した最強の多ジャンルスーパーエンタメ映画。約30分ごとに作品の雰囲気が変わっていくので飽きない、とにかく面白い。

そして驚いた。「オクジャ」という巨大な生物(豚)と一人の少女「ミジャ」が森の中で独自のコミュニケーションを交わしながら暮らしている。ポンジュノらしからぬ完全にファンタジーの世界のお話で、ハートフル且つめちゃくちゃ笑える作品だと肩の荷を下ろして見ていたら、実のところは凄まじい社会風刺が繰り広げられているのである。笑えるのに笑えない、心温まるけど怖い、というごちゃまぜの感想を生み出してしまうところが堪らない作品だ。

 

好きな点を挙げていくとキリがないので1つだけに絞る。「ミジャが英語を喋る」シーン。そのシーンは2つあり、1つ目はニューヨークで綺麗な服に着せ替えられようと服を触られた時に発した「Don't touch!」、2つ目はオクジャが殺されようとしている工場でナンシーへ訴えかけた「Why you want to kill Okja?」と「I wanna go home with Okja.」である。この発話がなんとも可愛らしいのはさておき、つまるところ、私たちを放っておいて!!とわざわざ英語を習得してまで懇願しているのである。(「バカでも話せる英会話」を読ませミジャ=子供=バカを肯定していく点も良い。)

f:id:bsk00kw20-kohei:20170630231046p:plain

この悲痛な訴えが通じたわけではなかったが、オクジャとミジャ(と子豚)はホームへと帰ることが許される。金の豚との交換によってミジャとオクジャは結ばれ、2人の母親と子は家族として独自の世界を生きていく。ラストシーン、オクジャがミジャの耳元で囁いた言葉。僕はなんとなく「サランヘヨ」に聞こえました。

 

余談

森へと回帰したラストシーン、ミジャが白い服を着て寝ているというのが少し怖いですね。こういった、現代では狂気的とも見なされる家族はこの世では生きていけないのかもしれません。