縞馬は青い

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映画とか、好きなもの

デフォルメされた青春の死/二宮健『チワワちゃん』

2019.1.19 新宿バルト9

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あまりにも鮮烈で、めまいがした。青春時代というのはこうも地獄のような禍々しい見た目をしていて、そこに棲む悪魔はこんなにも美しい鮮血を心に垂れ流し続けているのかと考えると、言いようもない感情に襲われ、ただただ何色でもない涙が目からあふれ出した。チワワちゃんというのは、その青春時代に攫われてしまった少女の名前。どう見繕っても僕が過ごしたあの時代とはイコールになり得ない、それこそ漫画のようにデフォルメされたこの映画の青春時代に自分を投影してしまうのはなぜだろうか? 青春はまったくエヴァーグリーンではなく、血と精子が混じり合ったような、あるいは度数の強すぎるカクテルのようなヴィヴィッドなピンク色で包まれていて、死と生が止めどなく混在していた。チワワちゃんとは、あるいはあの濃密で息の詰まる時間とは何だったのかと他人に聞いてまわるミキの姿は間抜けであるからこそ愛おしい。だって青春に生きる人々のほとんどは、600万円が徐々にすり減るのを目にしていたように、その儚さを自覚しているから。所詮その鮮やかなピンク色に憧れていただけのナガイや、真っ白なシャツに身を包んで勃たなくなったヨシダ、そして一番失われることに自覚的だったミキ。彼らが外から受けていた鮮やかな色を失ったあと、次に向かうのは何色の世界か。

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