縞馬は青い

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映画とか、好きなもの

金城一紀「奥様は、取り扱い注意/2話」

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ドラマのレビューも頑張って書いていこう、ということで書きたいことが見つかった「奥様は、取り扱い注意」の第2話について。
水曜10時と言えば、TBSの「水曜日のダウンタウン」と日テレの水10ドラマのどちらを見るか、という問題が発生しますよね。同時間帯に見たい番組が2つ以上あるというのは10年前なら当たり前だったでしょうが、今の時代には嬉しい悲鳴でしょう。

さて、そんな状況の中で取り立てた理由もなく「奥様は、取り扱い注意」の方を2週連続で見ているわけですが、このドラマは安定した面白さを見せてくれています。初回の放送では、主人公である奥様・伊佐山菜美(綾瀬はるか)が、過去にある国家のスパイとして働いていたということが明かされ、近所の奥様方が抱える問題をその正義感の強さと拳の強さで解決していく様が描かれていきました。この様子はアントワーン・フークア監督の映画「イコライザー」とも酷似していて、悪をその手で裁いていく菜美の姿は同作での主人公・マッコール(デンゼル・ワシントン)を見ているようでした。

イコライザー (字幕版)
 

このように、ヴィジランテ映画のような爽快感を与えてくれる一方でキャラクターは極めて綾瀬はるか的、すなわちフニャっとした親しみ易さを感じさせてくれるので、コメディとしても見やすく、その目新しい映像体験に惹きつけられてしまうのです。

第2話で描かれたのは「付きまとう過去は消し去ってしまえ!」という希望的なテーマだったでしょうか。第1話では「料理教室」に通っていた筈の奥様3人組が、第2話では「着付け教室」に通っている、そのつっこむ隙させ与えさせない華麗なる転換には思わず「四畳半神話体系」を思い出させました。

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

 

もちろん今作はパラレルワールドものでもタイムリープものでもないでしょうが、第1話という「過去」さえも無かったかのように展開されていく第2話には「今を生きることの重要性」のような同一のテーマが浮かび上がってくるように感じます。そもそも「夫の胃袋を掴んで職場からまっすぐ家へと帰宅させるため」に始めた料理教室を、上達する前に辞めてしまっている(?)ことに驚きます。その上「肉が食べたいな」と言う夫・勇輝(西島秀俊)に対して「玄米と野菜中心の食事にする」とまで言ってしまう始末。「料理」が夫婦を親密にさせると信じた第1話との明らかな矛盾に少し困惑してしまいますが、「過去なんてクソくらえ!」と訴える第2話の空気感を考えるとなるほど納得してしまいます。

第1話と第2話、そしてこれからのお話において倒し続けるであろう悪。そういった悪討伐の物語もやがて消し去りたい過去のことになるでしょう。その時、過去が現在に襲いかかってくる中でこの物語はどうゆう結論を出すのか、そこが気になるところです。

このドラマで特に好きなのは綾瀬はるか西島秀俊の夫婦関係です。夏クールの「ハロー張りネズミ」第8話において森田剛國村隼という映画的で濃い俳優が涙を誘ったのとはまるで逆位置にあるようなこの2人。そこには共感に包まれるような親和性や応援したくなるような愛らしさが充満しているように見えます。中でも食事のシーンが最高でした。褒められておどける綾瀬はるかと困惑気味に満面の笑みで応答する西島秀俊、という愛おしい構図をニヤニヤして眺めてしまったのは私だけでしょうか。ともかくこの2人が醸し出す「優しさのオーラ」がこのドラマを左右していくことに間違いはなさそうです。