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成島出「八日目の蝉」

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地上に出てくるとたった七日で死んでしまう蝉。でももしも八日目を迎えた蝉がいたら…。仲間がみんな居なくなった世界で一人苦しみ、一日多く生きたことを悲しむのか。それともその一日で何か素晴らしいものを見つけて幸福を掴むのか。

物語は幼児の誘拐やカルト教団などが絡み、かなり特殊な状況を描き続ける。けれど、「八日目の蝉」というタイトルが示しているのはもっと普遍的なことではないだろうか。「人とは違うこと」に悲哀の感情を抱き続けるのか、それでもその状況に希望を見出すのか。この映画には「人とは違う」ことに悩む人たちを優しく抱きしめてくれる母性のようなものを感じる。

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この映画が描くのは誘拐によって生まれた擬似親子関係。この関係を肯定することは倫理的にあってはならない。それなのに、完全に「母と娘」であるこの2人を見ていると、こちらにまで幸福感が及んでくるのである。何とも困った映画で、感情が揺さぶられては理性が邪魔をする。釈然としない。

しかしこの物語が発する「愛」という単純なキーワードに目を向けると、その異様なまでの愛の発露に理性なんて複雑なものは吹き飛んでしまう。思えば希和子(永作博美)の転落は、恋人との愛のこじれと子供への歪んだ愛に起因していた。そして事件から21年が経った恵里奈(井上真央)を救うのもまた、母の大きな愛だったのだ。愛を知らなかった女性が、かつて愛を受けて育っていたことを思い出し、それは自分の産む子供へと受け継がれていく。これほどまでに愛を肯定したこの物語を悲劇だけで語ることはできない。

そして愛は伝染し、物語は続いていくのだろう。それが分かったのだから、八日目の蝉で良かったんだ。