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李相日『怒り』における田中(森山未來)について

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昨年の個人的ベストムービーがこの作品でした。映画館に2度足を運んだことで見えた森山未來が演じた「田中について」、映画レビューアプリfilmarksに記したものから抜粋したいと思います。

 

田中(森山未來)はみんなが思ってるより悪い奴じゃないんじゃないだろうか。そういった疑問から生まれた考えです。

⚠︎犯罪心理学を学んだ訳でもないので以下妄想(笑)。

 

 

見た人の間でも口々に言われているのが「田中の犯行動機が分からない」ということ。もちろん殺人というような"常軌を逸した行動"を普通の人間が理解できるはずもないのだけど、それでもこの映画では、殺人犯の犯行動機を一般人でも分かるように比較的やさしく教えてくれていたように思う。

 

一言で言うとそれは"怒りの蓄積"である。この映画では、主要人物の内のほぼみんなが語る言葉があるのだが、それは

【叫んだって伝わらない。本気の感情であっても、分かろうとしない人に言ってもその人には伝わらない】というような言葉である。妻夫木とマツケン以外はみんなこのような言葉を要所で発していた。

そしてこの言葉を体現したのが田中の行動であった。具体的に田中の怒りの原因は語られないので分からないが、これらの言葉を聞いた後では、誰かに言っても伝わらないような"怒り"が積み重なり、些細なことが引き金になって犯行に及んでしまったということが想像できる。時間軸としては後だが、その"怒り"の例として出てくるのが沖縄基地問題や泉ちゃん(広瀬すず)の事件である。

 

あの事件のシーンをしっかりと見ていると、「ポリース!ポリース!!」と叫んでいた声の主が森山未來だという事ははっきり分かったし、パンフレット等のインタビューを見ても、「助けようとした」方の発言が真の感情であって、最後に語られる嘲りの含まれた発言は偽物の感情だったということは明らかである。真の発言をしている時には涙も流れており(嘘なら涙まで流す必要はない)、あの事件のせいでまたもや怒りを溜めてしまったことだろう。

 

では、なぜ彼は最後に偽の発言をしたのか。これは憶測でしかないが、田中は辰哉くんに真の理解者(信用してくれる人)となる事を望んでいたが、田中自身が辰哉くんを信用することが出来なかった。だから嘘をついて引き離そうとした、あるいは、嘘をついてもなお信用してくれる事を望んだのかもしれない。

この映画で1番人を信用したのが辰哉くんで、

1番人を信用出来なかったのが田中だった。

田中の行動次第では最後に分かり合うこともできたが皮肉にもすれ違ってしまった。そうゆう切ない話だったのかもしれない。

 

結局ここまで書いてみても、殺人犯の気持ちは分からないし、この映画が伝えたいことも真には分からない。でも大事なのは「分かろうとすること」ではないか。分かろうとしない者には何も伝わってこないし、人を傷つける要因となる。「分かろうと努力したい」、そう思った。

 

 

森山未來は演技がうますぎるが故に最後は観客にサイコパスだと思われ、嫌われたまま死んでいきます。でも僕には少し分かりました。彼は寂しい人間だったのだと。他の登場人物以上にこの役は森山未來にしかなし得ないものだったと思います。素晴らしい映画に素晴らしい役者陣。文句なしの傑作です。