映画
シシガシラが敗者復活から勝ち上がって令和ロマンが優勝するという数日前の出来事にまだホクホクしている年の瀬(に書き始めた)です。その2組とカナメストーン、忘れる。、サスペンダーズが出ていた「あんあん寄席」というライブの光景は確かに覚えておきた…
映画に「面白い」「感動した」「興奮した」以外の指標はあるのだろうか。中学生のころに大好きなハリーポッターシリーズが完結し、マーベルにいつしか興味をそそられなくなってから、思えばそういうことを無意識に考えながら映画に接してきたように思う。僕…
転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー (ちくま文庫『春原さんのリコーダー』より) この原作短歌だけを頼りに映画を観ていると、気づいたらこんなところまで来ていた。どういう道を辿ってここまで来たのか、果たして言語化できるだろうか。 …
映画の中に流れる時間が好きだ。それはだいたい、自分の場合ゆったりしすぎているか緊張感に溢れているかのどっちか。『サウンド・オブ・メタル』という映画で、ある日突然 耳の聴こえが悪くなってしまったドラマーの男が、聴覚障がいの少年と出会う。絶望の…
「あなたは誰?」「ほんとの姿はどっちなの?」とBelleが問うときの、奥に潜む哀しみの根源にあるものはなんなのか。といえばもちろん母の最後の行動の“理解できなさ”なのだろうけど、それを仮想世界で自由を得たBelle(鈴の仮の姿)が執拗に問い続けるとこ…
子どものころの夏休みというのは、お昼ごはんを食べたら無性にうとうとしてきて昼寝して、気づいたら夕方になっていた。起きたら夜ごはんが用意されていて、それを平らげてしまったらもう瞬く間に夜はふけ、昼寝と暑さのせいで眠くならないものの布団を被っ…
濱口竜介監督の最新作『偶然と想像』がベルリン国際映画祭で最高賞に次ぐ審査員大賞(銀熊賞)を受賞!おめでたい!『寝ても覚めても』がカンヌで絶賛されながらも賞を得ることがなかったから、ついにハマグチが世界に認められた!という感慨にふけっている。…
麦くんのことを「ファッションサブカル好き」と揶揄する人を見るとイラだちを感じてしまう一方で、実は自分もそうだと思っている。そして自分自身もそうなんじゃないかと恐怖する。彼には、生きていくうえで小説も映画もお笑いも演劇も実際には必要ではなか…
2018年1月16日。大学4回生の最後の冬だというのに僕はまだ就職活動をしていた。 それまでサボっていたというわけではなく、ただただ受けて落ちてを繰り返していた。深夜に梅田駅から高速バスで出発し、まだ空が薄明るい時間に東京駅八重洲口鍛冶橋駐車場に降…
今年観た映画。そう振り返ってみても、いまいちピンとこないのが正直なところだ。やっぱりどうしたって「これは2020年の作品たちだな」というまとまりがないというか。まだコロナがくる前、1月と2月、3月の前半くらいにとんでもなく傑作映画が集まっていたの…
数週間前からスニーカーの先っぽに穴が空いていることに気づいていた。しかも右足と左足の両方に。もっというと1年くらい前から空いていた気がするけど、黒い靴に空いた穴を黒い糸で塞いだりしてなんとかやりすごしていた。目立つようなあれじゃないので誰も…
昨日観て抱いた最大限の興奮を忘れないようにここに書いているだけなので、本作が気になっている人はこの後ろは読まずに公開を楽しみにしていただきたい。『勝手にふるえてろ』に続く綿矢りさ原作×大九明子監督の再タッグ作である本作は、刺さる人には刺さり…
南先生(岡田将生)の車で家まで送ってもらった夜、ちひろ(芦田愛菜)と親友のなべちゃん、その彼氏を含む同乗した4人はちひろの両親たちがしていた“ある光景”を目撃することになる。それを観て南先生は、「不審者が“2匹”いる」「完全に狂ってるな」と冷酷…
「感情に従順である人間を僕は恐怖の対象として見ていたが、そういう人間こそ尊いと思うようになった」 どうしてこういうことを直接声に出して言えなかったのだろう。そんな日常の連続で成り立っているのが、『劇場』という映画なのだろう。本作のモノローグ…
今泉力哉監督の最新作『街の上で』が公開されたタイミングで書こうと思っていたこと、来春以降に延期となってしまったので一旦この機会にまとめてみました。世紀の大傑作映画につながる、今泉映画論の序論的扱いです。それにしても『街の上で』のTシャツ(大…
「でも、生きてたでしょ?」と何度も問う松本まりかが印象的だ。今はもういないけど、たしかにあのとき生きていて、生きることと死ぬことが肯定でも否定でもなくすべて等価に見つめられている感覚。生と死、双子、福島と東京のふたつの顔、同性愛やバイセク…
YouTuberのモーニングルーティン動画ばりに長尺でみせる〈私〉(バカリズム)の朝の日常風景。例えば、洗面所の蛇口をひねってからトイレに行くという決まりきった日々の動線(用を足している間に水がお湯になっているという算段)に現れているように、どんな…
(※物語の展開・ラストにがっつり触れるレビューなのでどうか観賞後にお読みください) 「計画を立てると必ず、人生そのとおりにいかなくなる。絶対失敗しない計画は、“無計画”であることだ」 本作においてさまざまな人物から発せられた「計画はあるの?」と…
言葉はいとも簡単に過去を改変してしまう。ときに痛々しく、またあるときには優しく包み込むように。そうした「言葉の鋭敏さ」をひしひしと痛感させられるのが、『マリッジ・ストーリー』という映画がもつ魅力(、あるいは恐ろしさ)のひとつだと思う。 ◆言…
兵庫に里帰りしてもわざわざ京都(みなみ会館)まで行って『象は静かに座っている』(4時間弱の超大作)を観にいったり、実家では今年見逃した作品をストリーミング配信でカバーしたり、2019年は最後の最後まで映画を観切った。鑑賞数はだいたい110本くらい…
確信的な 朝を何度も迎えにゆくために/これからもずっと どうにかしなくちゃ/君をおどろかせていたい/確信的だ 今日は必ずいいことあるはずだ/追いかけたバスが待っていてくれた/かっこいいまま ここでさよなら ーー「Home Alone」 恋しい日々を抱きし…
10月13日(日)に開催された下北沢映画祭にて、今泉力哉監督の長編映画最新作『街の上で』がワールドプレミア上映を迎えた。台風によって開催も危ぶまれたなか、一本の映画は堂々と産声を上げながら誕生し、会場に響き渡っていた笑い声や感嘆の声から察すれ…
「音楽になったね」 耳をすましてみると、外でポチャンと音がした。なんだか雨が降ってきたみたい。その音に合わせて鍵盤を一音、また一音とはじいてみる。すると心地のいいリズムが、私とお母さんの心が高鳴り出す瞬間を捉える。 いつしか一音は連続して音…
おもちゃだって生きる場所を選んでもいい。与えられた居場所に居続けるのもひとつの生き方だし、新しい居場所を求めるのもまたひとつの道。何よりも重要なのは、そこがほんとうの自分の居場所なのかどうか、心のうちがハッキリとしていることではないか。「…
いつになく感情的なレビューになります。好きすぎて好きすぎて、どうにかなっちゃうんじゃないかってくらい好きな映画だ。この作品を構成するすべての要素が好きだから、この感想だけですべてを補えそうにはない。特に好きだった、「ファンタジーがもたらす…
「一緒に音楽やらない?」 そういきなり声をかけるハルと、彼女がつくったカレーを食べて涙を流すレオ。あるいは楽屋の椅子を蹴っ飛ばすシマまで。本作が特異的なのは、常に「行動」が先立っていることだ。彼女たち3人の性格や人物背景、生い立ちを知らせる…
「山田さん、うちくる?」 マモちゃんはそうキラーワードを放って颯爽とタクシーに乗り込み、「世田谷代田まで」と運転手に告げる。そして窓越しにおいでおいでのサインを受けたテルコは、エサに飛びつく犬のようにタクシーへと吸い込まれていく。 呼び出さ…
2019.4.30 テアトル新宿 三角形の上を動く点Pは定理にしたがってずっと点Qを追いかけているけれど、どこまで行っても同じになることができない。速度を変えたり先回りして待っていても、そこに彼の姿はない。山田テルコは一生、田中守にはなれない。 幕開け…
2019.3.31 ユーロスペース 『きみの鳥はうたえる』の三宅唱監督の最新作は、芸術とテクノロジーを用いた新しい表現を探究する山口情報芸術センター(YCAM)のプロジェクトによって生まれた作品。ティーンエイジャーたちの冒険と恋愛模様を描いたみずみずしい…
2019.3.26 下高井戸シネマ わからない。暗すぎて何も見えない。果たしてあなたはこちらが見えているのだろうか。それさえも、何もわからない。出会ったときはあんなにはっきりと、少年が手を離した風船をちょっぴりジャンプして取ってあげるあなたの姿が見え…